J・M・クッツェー/J.M.クッツェー(J.M.Coetzee)。作家。
1940年南アフリカ共和国生まれ。
主な作品に『石の女』(ISBN:4883190358)や『恥辱』(ISBN:4152083158)などがある。 1999年『恥辱』で自身二度目のブッカー賞受賞 (一度目は83年の『マイケル・K』) 2003年ノーベル文学賞受賞。 名前の読み方は「クツィア」が正しいようである。斎藤兆史・野崎歓『英語のたくらみ、フランス語のたわむれ』41ページ参照のこと。
本日はモンブランの日ということになります。もちろん我が家だけがそのよう に言っているのでありまして、どのカレンダーを見ても、そのようには記してお りませんです。 亡父が健在であったときから父の誕生日には、モンブランを食するということを やっておりまして、亡くなってもう17年になりますが、モンブランは続いているの です。 本日にいただいたのは、次のもの。 本日は シャトレーゼの和栗のモンブラン 近所のスーパーに併設されているシャトレーゼで和栗のモンブランというのを 見つけて、シャトレーゼかとちょっと馬鹿にしながらも、値段がそこそこ高いの で、これは食べてみようかと思って試したのですが、すっかり気…
J・M・クッツェー『恥辱』ハヤカワ文庫 (2007) つづきを読み終えた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 感想 自分は読み終えてひとつ分かったことがあった。 哲学者と芸術家は相容れない。両立するものではないということを。 しかしながら自分は前者の理性を、後者の情熱を愛している。これはどういうことなのか。 プラトンが詩人を毛嫌いしたのは国家の秩序を乱すからであった。 そして芸術家は秩序を破壊するベクトルを持っている。 理性の力によってのみ幸福を得ることをプラトンは構想し、詩人は、つまりこの主人…
読んだ本 J・M・クッツェー『恥辱』ハヤカワ文庫 (2007) シュテファン・ミュラー=ドーム『アドルノ伝』作品社 (2007) つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 『人生と運命』を勢いで200ページ読んだが、読みにくさがネックとなり停止してしまった。とりあえずクッツェーに移行したが、クッツェーは読みやすい。小説は美的要素が重要であるかもしれないが、読みやすさも必要だと染々思う。 『恥辱』は52歳の文系学部教授が離婚後の孤独や欲望に抗えず、様々な女子学生に手を出して転落…
読んだ本 J・M・クッツェー『世界文学論集』みすず書房 (2015) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 今日は睡眠があまりとれなかったので小説は読まないことにした。 小説を読んでいるうちに寝てしまうと、小説の内容が頭からほとんど吹き飛んでしまう。 1時間ほど仮眠をとってこちらの本を読んでみた。 最初は「古典とは何か?」という講演の内容から始まる。 もしかすれば、なかには偉大な作品が暴力によって歴史から完全に消されてしまったものもあるかもしれない。 生物の場合は化石によってその爪跡を残すことができるが、書物の場合は口承されない限り記憶に残り続ける…
読んだ本 ポール・オースター, J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』岩波書店 (2014) 小林秀雄『人生の鍛練 小林秀雄の言葉』新潮社 (2007) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ クッツェー「愛や政治は見かけ通りであったためしがない」 ポール・オースター「現実世界でもフィクションに似たようなことが起こるということだ。そしてもしフィクションが現実になるのなら、僕らは現実の定義を考え直す必要があるのかもしれない」 小林秀雄「僕は不幸にして抜群の資質などというものを持って生まれなかったら、学ばずして得るという天…
読んだ本 J・M・クッツェー『マイケル・K』岩波文庫 (2015) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 無性にクッツェーが読みたくなった。 5,6時間ほどかけて200ページまで読んだ。 人生と自由について考えさせられる本だ。 物語が中盤に入ると、ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』のような生活に突入する。 マイケルは生活の安定と引き換えに、キャンプで労働させられる日々に耐えきれず逃亡の末、完全に孤立して自給自足の生活を始める。 しかしデフォーの小説と違うのは、明らかに自給自足になっていない点である。いつ死んでもおかしくない日々が続く。これ…
★★★☆☆ あらすじ 移民としてやってきた男と、彼と行動を共にする母親を探す男の子。 感想 移民として一緒にとある街にやってきた初老の男と母親を探す男の子の物語だ。その冒頭からどこかふわふわしていて、いかにも寓話的だ。以前に何があったのか、主人公である老人は何をしていたのか、何も明かされない。 二人がやってきた街は、一応は良さそうな街だ。難民のために住む所も用意してくれるし、仕事も紹介してくれる。バスもタダだし、仕事の補償もしっかりとしていて、生活のサポートは十分に満足できる。ただ、どこかおかしい。 // そして、そこに住む人々も善人だがどこか変だ。主人公たちが最初に出会った移民センターの受付…
イエスの学校時代 作者:クッツェー,J.M. 早川書房 Amazon ★★★ もうじき7歳になるダビードは、シモンとイネスに連れられてエストレージャという田舎町に逃れてきた。シモンとイネスは農園で働き、ダビードは地元のダンスアカデミーに入る。そのアカデミーは独自の思想からダンスに数学を取り入れていた。ダビードはアカデミーの寄宿生になるも、まもなくそこで殺人事件が起きる。 「いつまでも人の親切心に頼って生きるわけにはいかないんだ」シモンはつづける。「人はなにかをもらったら、同じぐらい与えないといけない。そうでないと、不公平になる。公正を欠く。きみはどっちの側の人間になりたい? 与える側か、もらう…
鉄の時代 (河出文庫) 作者:クッツェー,J.M. 河出書房新社 Amazon ★★★★ アパルトヘイト時代末期のケープタウン。老女の「わたし」はガンが骨まで転移していた。彼女はひょんなことから付近にいたホームレスの男を居候させることになる。さらには、使用人の子供の友達まで受け入れることになった。その友達は、警官によって重傷を負わされる。 鉄の子どもたちか。フローレンス自身も、鉄と似ていなくもない。鉄の時代。そのあとから、青銅の時代がやってくる。どれほどの時間が、周期的に柔和な時代がもどってくるまでに、いったいどれほどの時間がかかるのだろう――粘土の時代が、土の時代がもどってくるまでに。(p.…
イエスの幼子時代 作者:J・M・クッツェー 早川書房 Amazon ★★★ 初老の男シモンと5歳の少年ダビードは、移民船で知り合い行動を共にしていた。シモンはダビードの母親を探すために奔走する。移民受け入れセンターで住居と仕事をもらったシモンは、たまたま出会った見知らぬ女にダビードの母になってくれるよう頼み込む。 「なるほど、善意か。じつを言うと、ここではそれに始終出くわす。みんなわれわれの無事を願ってくれるし、進んで手助けもしてくれる。わたしもあの子も、間違いなく数多の善意に支えられて生きている。とはいえ、善意の中身はいまだに漠然としているんだ。はたして善意だけで人間は満足できるんだろうか?…
J・M・クッツェー『続・世界文学論』みすず書房(2019) モーテン・H・クリスチャンセン『言語はこうして生まれる: 「即興する脳」とジェスチャーゲーム』新潮社(2022) 新・読書日記191(読書日記1531) – ラボ読書梟 関連図書 nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com nainaiteiyan.hatenablog.com
9月。少しずつ暑さも和らいできて秋。読書の秋と世間一般にはいうところなのであろうが、年ガラ年中本を読んでいる身としては特に意識を変えることはない。秋だからたくさん読まねば、ということでもないし。そもそも読書は量(ばかり)を追っても仕方ない、ということに近年ようやく気づいたのではあるまいか自分。 そういうわけで、いつもとあまりペースは変わらず。 1.江國香織『雨はコーラがのめない』新潮社(新潮文庫) www.shinchosha.co.jp タイトルだけ見て、この本が小説家とその愛犬のことを記したエッセイであるとわかる人はどのくらいいるだろう。私はそうとわからなかった側の人間だ。しかし、一読して…
毎週日曜日は、この一週間に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 (9/9~9/15 全98冊) *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 9/22・9/29 号 2 冊アインシュタインの旅行日記 日本・パレスチナ・スペイン アルバート・アインシュタイン 草思社 2,420裏庭のまぼろし 家族と戦争をめぐる旅 石井美保、イシイ アツコ 亜紀書房 1,980 ③ ◆女性自身「今週のあなたを開く本」…
【あ】アーモンドの樹(ウォルター・デ・ラ・メア)アイオワ野球連盟(W・P・キンセラ)愛しているといってくれ(マージョリー・ケロッグ)愛の果ての物語(ルイザ・メイ・オルコット)青い花(レーモン・クノー)赤い高粱(莫言)赤毛のサウスポー(ポール・R・ロスワイラー)悪魔なんかこわくない(マンリー・ウェイド・ウェルマン)悪魔に食われろ青尾蠅(ジョン・フランクリン・バーディン)悪魔の収穫祭(トマス・トライオン)悪魔のベッド(ジャン・レイ)悪魔はぼくのペット(ゼナ・ヘンダースン)悪夢の化身アシスタント(バーナード・マラマッド)明日に別れの接吻を(ホレス・マッコイ)熱い太陽、深海魚(ミシェル・ジュリ)あっぱ…
行きたかったイベントは海沿いなので中止となった。南海トラフ巨大地震が全て悪い。 連休中ということでバイパスも国道も混雑している。自宅では集中できないからとパソコンや資料を持ってファミレスに向かうも、やはり混んでいる。 これはもう駄目だあ、と嫌になって、スーパーマーケットにだけ立ち寄って帰路についた。車に乗って家を出て、隣の町まで行ってUターンして、最後に近所のスーパーで買い物をしただけ。 ヤマケイ文庫 小屋番三六五日 山と渓谷社 Amazon そんなぱっとしない振替休日を過ごしていた。スーパーマーケットでは、東北産の野菜が入荷未定となっていた。全て台風が悪い。 そして米の棚が、ほとんど空だった…
(8/2)ひとまず100点選書。第一弾の選書なので推薦本には頼らず。蔵書とアマゾンのブックリスト、これまでの読書経験と知識を駆使して、読みたい本を直感で選んだ。 今のところ順番はランダムだ。3500の選書リストが完成するまでには適切な分類法を見つけようと思う。その際、選書やリスト作成におけるルールも付記する(表紙画像は載せない、アマゾンや出版社ページへのリンクは貼らない等)。 (8/3)200点選書。 (8/4)300点選書。 (8/5)400点選書。そろそろ分類しないとね。日本十進分類法を参考にする予定。 (8/9)500点選書。 (8/10)600点選書。 (8/11)700点選書。 (8…
クッツェーの『鉄の時代』を読みました。 複数の「鉄」が示唆するものが辛すぎて、いろんな感情が込み上げてきました。 悲惨なのに、なぜか温かみのある読みごたえは、他の作品にも共通しますが、これまで読んだ中で一番好きな作品になりそうです。ところどころ印象的な文章があり何度も読み直しています。 鉄の時代 (河出文庫)作者:J・M・クッツェー河出書房新社Amazon原タイトル (Age of Iron ,1990)Age of Iron作者:Coetzee, J. M.Penguin UKAmazon 舞台は南アフリカのケープタウン。長らく続いたアパルトヘイトが崩壊へと向かっていた1986~89年のお話…
今は亡きポール・オースターと、J.M.クッツェーの往復書簡『ヒア・アンド・ナウ』を読みました。ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008-2011作者:ポール・オースター,J.M.クッツェー岩波書店Amazon原タイトル Here and Now: Letters, 2008-2011, 2013サミュエル・ベケットの研究を通して知り合い、意気投合したというお二人。 7歳年上のジョンの提案で文通がはじまったそうだ。時は2008年~2011年の3年間。 ニューヨークに住むポールは手紙で、オーストラリアのジョンはファックスで、というスタイルが意外だった。ポールは作家活動もタイプライターを用いる人で、Eメ…
怒涛のクッツェー祭りです。短編集『モラルの話』(くぼたのぞみ訳 人文書院, 2018)を読みました。 モラルの話作者:J・M・クッツェー人文書院Amazon それぞれ独立したお話ですが、 順を追って読んでいくことをオススメします。動物、人間、夫婦、親子の日常と、 老いと死にまつわる7つの物語。前半はコミカル、徐々に哲学的深みを増し、 最後には奈落の底へと突き落とされるといった感じ。「これは死について考えるためのレッスン」 だと、訳者くぼたのぞみさんは述べられています。翻訳も素晴らしく、読み返すたびに価値をみいだせる作品です。 <目次> 犬 物語 虚栄 ひとりの女が歳をとること 老女と猫たち 嘘…
7/03 海堂尊「プラチナハーケン1980」講談社/ISBN: 9784065358115*1 7/03 ハリソン・クエリ&マット・クエリ「幽囚の地」ハヤカワ・ミステリ/ISBN: 9784150020057*2 7/03 マーティン・エドワーズ「モルグ館の客人」ハヤカワ・ミステリ文庫/ISBN: 9784151856525*3 7/08 大森兄弟「めでたし、めでたし」中央公論新社/ISBN: 9784120058028*4 7/10 竹吉優輔「たったひとつの冴えない復讐」講談社/ISBN: 9784065359365*5 7/10 坂崎かおる「海岸通り」文藝春秋/ISBN: 97841639…
クッツェーの短編集を読みました。他人の趣味や行動が気に入らず、ぶつくさ文句を言っていた人が、気づいたら自分がハマっていた。みたいなことって、ありますよね。第一話「スペインの家」はそんなお話です。 スペインの家:三つの物語 (白水Uブックス)作者:J.M.クッツェー白水社Amazon『スペインの家:三つの物語』 原タイトル Three Stories (2014) 50歳になった主人公の男が、ずっと憧れだったセカンドハウスを、異国のスペインで購入した。年に2回ほど滞在するつもりが、溺愛しすぎて、住み着いてしまった。「家に恋する」なんてありえないぞ、と否定しつつも、かいがいしく家の修理や庭の手入れ…
朝起きてすぐに洗濯をまわし、バナナをミキサーにかけ、出来上がったバナナシェイクを飲みながら床に寝転んで洗濯が終わるのを待っていた。 〔ぴたぴたのバナナシェイク〕 こういう時間に触るスマホは危なくて、ほとんど何も考えずに柴田元幸さん編集「MONKEY」の2年間定期購読をポチっていた。vol.32の特集かなりいいし、どうせ買うだろうし、それなら定期購読の方が結果的にお得だし、と自分の中で色々と言い訳をしていたが、色々考えても定期的に家に大好きな本が届くのは素敵だからいい気がする。 洗濯が終わり、外に干していく。この時期の風は気持ちよくて、お天気の日に窓を開けるだけで嬉しくなる。干す作業はめんどくさ…
エリザベス・コステロ 作者:J.M. クッツェー 早川書房 Amazon この本の原著の出版は、今から21年前の2003年。この邦訳書は19年前の2005年となっている。だが、今年書かれたものだと言われても違和感がない内容だ。自分の生きる時代を見とおす作者の力量に、あらためて驚かされる。 主人公は高齢の女性作家である。クッツエーの小説で女性を主人公にしたものとしては、僕が読んだことがあるものにはリアリズム手法の力作『鉄の時代』がある。 そちらのヒロインは、アパルトヘイト政権末期の南アフリカで内戦の混乱の中に投げ出される末期癌の高齢独居白人女性という何ともハードな設定だったが、本作の主人公エリザ…