2014衆院選:子育て支援・子ども虐待予防公約まとめ

2013年参院選のときのまとめはこちら

今回も衆院選の各党公約から、子育て支援・虐待予防に関する部分をピックアップしました。関連政策すべては網羅しきれないため、一部抜粋となっている点はご容赦ください。

どうしてもいつも長くなるので、今回は貧困と虐待関連のところだけ表をつくってみました。


以下、詳細です。

自民党
http://jimin.ncss.nifty.com/2014/political_promise/sen_shu47_important.pdf

<すべての女性が輝く社会の実現を>
● 女性研究者・技術者が出産・子育て・介護等と仕事の両立ができるような働きやすい環境づくりを進めるとともに、研究機関等における女性研究者等の採用・登用等の活躍を促進します。
● 地域の実情に応じた、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を推進するため、自治体による取組みを応援します。
● 結婚や子育てを後押しするための新たな経済的支援制度を創設します。
● 特定不妊治療に要する費用の助成、周産期医療情報ネットワークの整備・充実、産科医・小児科医の負担軽減策の充実等出産環境の整備を図ります。
● 安心して子育てに取り組めるよう、自治体によるワンストップの子育て支援拠点(日本版ネウボラ)の導入を支援します。
● 子育て家庭、働く母親の負担軽減のため、ベビーシッター費用や家事費用の支援策の導入を図ります。
● 子育て負担の軽減を図るため、財源確保とあわせて、子供3人以上の多子世帯に対する子育て負担軽減策を検討します。
● 「待機児童解消加速プラン」を展開し、保育需要のピークを迎える平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童解消を目指します。
● 全ての子育て家庭を支援する「子ども・子育て支援新制度」は、必要な予算を確保した上で、来年4月から着実かつ円滑に実施します。
● 1兆円超程度の財源を確保し、「子ども・子育て支援新制度」に基づく子育て支援の量的拡充(待機児童解消に向けた受け皿の拡充等)及び質の改善(職員配置や職員給与の改善等)を図ります。
● 就学後の子供の預け先が見つからず、離職を余儀なくされる「小1の壁」打破のための「放課後子ども総合プラン」(平成31年度末までに約30万人分の受け皿拡大等)を着実に実施します。
● 高齢者世代が若い世代の子育て支援を行うための環境整備に向け、イクジイ・イクバア支援を行うとともに、三世代同居世帯への支援策を講じます。
● 仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組む企業に対し、育児休業者の代替要員確保のための助成等のインセンティブを与え、企業風土の改革を目指します。

<持続可能な社会保障制度の確立を>
● 消費税財源は、その全てを確実に社会保障に使い、平成29年4月までの間も、着実に子ども・子育て支援、医療、介護等の充実を図ります。

<出産・子育てを応援する社会を>
● 新たに策定する「少子化社会対策大綱」において、自己決定権に十分配慮し個人にプレッシャーを与えないようにしつつ、少子化対策にかかる目標を設定し、PDCAサイクルを回すことにより、人口減少社会に歯止めをかけること
を目指します。
● 子供が健やかに育つよう、また、若い世代が孤立しないで安心して妊娠・出産・子育てができるように、切れ目のない支援を行います。
● 「子ども・子育て支援新制度」について来年4月に施行し、保育所・放課後児童クラブの待機児童の解消や保育等の質の改善に取り組みます。
● 虐待を受けた子供など保護を必要とする子供の早期発見や増加への対応、家庭的な環境で養育できる体制づくりを進めます。

教育再生の実行とスポーツの振興を>
● 教育投資の充実を図り、家庭の経済状況や発達の状況等にかかわらず、子供等が質の高い教育を受けることができる社会の実現を目指します。
● 希望する全ての子供に幼児教育の機会を保障するため、財源を確保しつつ、幼児教育の無償化に取り組みます。

まず一見して、この分野の記述が厚くなった印象を持ちます。
これまでの批判を受けてか、子どもを産むのが当たり前という姿勢ではなく、「自己決定権に十分に配慮し」という但し書きが加わりました。
ただし、女性の両立支援、祖父母世代の活用まで触れながら、男性の育児参加には一切言及しないあたりは注目に値します。

一方虐待については、これまでの「母親の孤立を防ぐ」という文言がなくなり、保護や家庭的養育への言及が加わりました。


民主党
http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2014.pdf

<経済>
子育て支援、雇用の安定、老後の安心など、「生活の不安を希望に変える人への投資」により可処分所得を増やします。
子育て支援策の抜本的拡充、若い世代に対する結婚・出産支援策の強化により、「希望する人が安心して結婚、出産できる社会」をつくります。

社会保障
生活困窮者などの自立支援
●子どもの貧困対策法に基づき、「貧困の世代間連鎖」を断ち切ります。
妊娠、出産
●結婚、出産後の就業の継続・復帰を支援します。妊婦健診の公的助成を含め、出産費用を助成し、自己負担がほぼないようにします。不妊治療支援を拡充します。
保育・幼児教育
●子ども・子育て支援の予算を増額し、新児童手当等により子育てを直接支援するとともに、待機児童の解消、仕事と育児の両立支援の充実のため、保育所認定こども園・放課後児童クラブなどを拡充します。
●質の高い幼児教育・保育等を実現するため、保護者や地域の実情に応じて計画を立て、保育所定員の増員、放課後児童クラブなどの整備、職員の処遇や配置基準の改善等を進めます。病後・病児保育など多様な保育の提供に取り組みます。

<教育>
いじめ、体罰、虐待防止
●子ども虐待防止のため、さらなる支援を検討します。

<女性・共生>
女性 
ひとり親家庭への支援、仕事と育児・介護の両立支援、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)が実現できる環境整備を行います。女性の健康向上の支援、男性の育児参加の促進を図ります。

昨年の公約とほぼ同じです。自民党と比べると男性の育児参加促進に言及していたり、ひとり親家庭への支援などよい視点を含んでいるのですが、やはり具体性に欠けます。
虐待予防についても昨年同様の「検討します」の表記で、一向に検討している様子がみえません。


◆維新の党
https://ishinnotoh.jp/election/shugiin/201412/pdf/manifest.pdf

「脱・公共事業バラマキ」の経済対策
●教育バウチャーの低所得世帯への支給で貧困と学力低下の連鎖を断つ。
●結婚資金や子育て資金を対象とした贈与税の非課税制度の創設で、結婚や出産を後押しする。
●保育、介護等の福祉分野の低賃金対策として、雇用増の場合の処遇改善交付金を期間限定で予算措置する。

「稼げる国」へ、徹底した競争政策
●子育てサービスの成長産業化
(1)利用者が子育てサービスを選び、競い合いによる量と質のレベルアップが実現するよう、保育バウチャーを導入する。
(2)小規模・家庭的保育を含めた多様なサービスの新規参入と規制改革を進め、それにより待機児童を解消する。
(3)保育園への株式会社の参入を促進する。自治体、社会福祉法人の保育園とのイコールフッティングを確保する。
(4)ワークライフバランスの社会基盤を作る。子育てと両立できる在宅ワークを推進する。

女性の力を引き出す
●地域の権限で多様な子育て支援サービスが提供できるよう規制改革を進め、女性が職場で働き続けられる環境と制度を構築する。
●子育てしながら働けるよう、駅ナカや駅チカで保育所とオフィスを複合した「準・在宅ワーク」の拠点を整備する。

規制緩和と競争原理の導入という基本スタンスに加え、在宅ワークを推しています。
福祉分野の低賃金対策の予算が期間限定というのは…あとは利益を出して賄えということでしょうか。


公明党
http://www.komei.or.jp/campaign/shuin2014/manifesto/manifesto2014.pdf
http://www.komeito.com/kodomomanifesto2014/wp-content/uploads/2014/11/kodomoM2014_print.pdf

重点政策1 地方創生で、力強く伸びる日本経済へ
5.女性、若者の活躍支援
(1)女性の活躍支援
"…2015年4月より子ども子育て支援新制度や放課後子ども総合プラン等を着実に実施し、妊娠期から切れ目のない子育て支援を実施します。"

重点政策2 一人を大切にする社会へ、社会保障と教育の充実を
1.子育て支援の充実
(1)待機児童の解消
2015年4月から予定されている「子ども・子育て支援新制度」を確実に実施し、仕事と子育ての両立を支援します。そのため、「待機児童解消加速化プラン」を踏まえ、約40万人分の保育の受け皿を確保し、可能な限り早く待機児童を解消します。
幼稚園と保育園の良さを併せ持つ「認定こども園」の普及とともに、子どもを一時的に預かってもらう場(一時預かり)や放課後児童クラブの充実に取り組みます。あわせて、保育士・幼稚園教諭の処遇改善を図り、働き続けられる環境整備に取り組みます。
(2)幼児教育の無償化を推進
すべての子どもに質の高い幼児教育を保障するため、就学前3年間の幼稚園、保育園、認定こども園の幼児教育の無償化を着実に推進します。その一環として、幼稚園に子どもを通わせる負担軽減のために支給されている「幼稚園就園奨励費補助制度」が2014年度から拡充され、生活保護世帯の負担が無償になり、多子世帯(子どもが3人以上いる世帯)の負担が軽減されました。その上で、さらに無償化を進めるために、まず「5歳児」の無償化に取り組みます。

4.障がい者福祉の拡充とセーフティネット機能の強化
(2)生活困窮者など支援が必要な方への取り組み
"…また、生活困窮世帯等の子どもや児童養護施設等へ入所している子ども、ひとり親家庭の子どもへの学習支援を強化します。"

・赤ちゃんを産んだあとの体の悩みや子育ての不安など、体や心について相談できる体制や、お母さんがゆっくり休めるよう子育てを一時的にみてくれる場所をつくるなど、お産のあと安心して過ごせるようにしていきます。
児童虐待の対策として児童相談所や市町村に専門家を増やし、子育てなどのアドバイスをしていきます。
・役所、警察、学校、会社、住民など「社会全体で子どもを守る」という活動を広げ、虐待、非行、いじめ、性犯罪などを防いでいきます。

待機児童解消と幼児教育無償化という主要政策は変わらず。
前回は「子どもの貧困対策を総合的に推進」と書かれていましたが、今回はなぜか「学習支援」に限定されました。

公約に虐待予防に関する記述はありませんが、なぜか子ども向けの「子ども・子育てマニフェスト」には細かく書かれていたので一応載せておきます。


◆次世代の党
http://www.jisedai.jp/download/pdf/jisedai_manifest.pdf

世代間格差を是正する社会保障制度の抜本改革、徹底的な少子化対策
・扶養する子供の数が多いほど所得課税が少なくなるフランス型の世帯所得課税制度の導入、税制・年金制度において非婚化・晩婚化対策を実施、3人目以降の子供に特化した子育て支援制度
・近居や二世帯・三世帯住宅の建設に対する支援制度

正しい国家観と歴史観を持つ「賢く強い日本人」を育てる教育
・バウチャー制度(供給サイドから需要サイドへ税を投入)による子育て・教育政策の拡充により、親の経済格差によらず子供の教育を受ける機会を保証

多子推奨なのでしょうか。非婚化・晩婚化を税制や年金制度によるインセンティブで解決しようという点に党のカラーが表れている気がします。


共産党
http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2014-sousenkyo.html

<28、子ども・子育て>
1、子どもを安心して育てられる働き方、社会的条件をつくります
長時間労働の改善、正社員化など子育てしやすい働き方のルールをつくります
育児休業制度を改善し、非正規雇用労働者、男性の取得促進などをすすめます

2、新制度による公的保育の後退を許さず、安心して預けられる保育・学童保育を保障します
●国・自治体の責任で保育要求にこたえた認可保育所を増設、保育条件の改善をすすめます
学童保育の拡充、環境整備と指導員の待遇改善をすすめます

3、子育ての経済的負担を軽減します
●就学前の子どもの医療費無料化を国の制度にします
●児童手当の拡充をはかります
●高すぎる幼稚園授業料を引き下げます
●中学校給食をすすめ、学校給食の無償化をめざします
●高校、大学などの教育費負担を軽減します
●安心して妊娠・出産できるように経済的支援をつよめます

4、子どもの貧困の改善に力をつくします
●子どもの貧困削減の数値目標をもちます
ひとり親家庭への支援をつよめます
生活保護制度の改善・強化、就学援助制度の拡充をすすめます

5、子どもの命と健康を守り、子育ての不安にこたえます
放射能から子どもを守ります
●小児科、救急医療体制の確立をはかります
●子育ての不安にこたえる体制をつくります
 初めての出産による不安や、貧困などさまざまな問題を抱えた家族に対し、きめ細かな相談体制、個別の訪問活動などの支援を拡充します。保育所への入所や一時保育、子育て支援事業など、子育て不安を軽減する取り組みを地域全体ですすめます。児童虐待や子育ての困難の背景には、若い世代の雇用破壊と貧困の広がりがあります。安心して子育てできるように、安定した雇用、人間らしい働き方、教育・福祉・社会保障の充実と子育てへの経済的支援など総合的な施策をつよめます。
児童虐待の防止対策を強化します
 格差と貧困のひろがりを背景に、2013年度に全国207か所の児童相談所児童虐待相談として対応した件数は73,765件(速報値)で、過去最高を更新しています。児童虐待の防止、早期発見、子どもと親への専門的な支援などの独自の施策をつよめます。早期発見で子どもを守るために、保育所や学校、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター児童養護施設など、子どもにかかわる専門機関の連携をはかるとともに、職員の専門的な研修をつよめます。相談支援体制を充実させるために、児童相談所の増設、職員の抜本的な増員と専門性向上のための研修の充実、一時保護施設や児童福祉施設の整備増設、設備や職員配置の改善をはかります。虐待を受けた子どもへの専門的なケア、親にたいする経済的、心理・医療的、福祉的な支援をつよめます。
児童養護施設、里親制度などの整備・拡充すすめます
 経済的、社会的事情をもった親が子育てできない状況におちいったり、予期せぬ妊娠に悩んだ時に、身近に相談できる体制を整備します。
 児童福祉行政の中核的役割を担う児童相談所は全国で207カ所、乳児院は130カ所しかありません。児童相談所児童福祉施設、小児病院や保健所、子育て支援センターなどが連携して、親が育てられるための支援をつよめるとともに、困難な場合の受け入れ施設の拡充をすすめます。
 児童養護施設などの国の最低基準を旧民主党政権が廃止し、自治体まかせにしてしまいました。国の責任で職員配置や施設整備の改善、小規模化、家庭的養護の推進を急ぎます。施設に暮らす子どもたちの教育、進学への支援をつよめます。里親制度は子どもたちを家庭的環境で育てるために重要な制度です。いっそうの拡充をはかり、里親への支援や研修の充実、制度の周知をすすめます。
●子どもの豊かな成長を保障する地域づくりをすすめます

6、子どもの権利条約の立場を政治と社会につらぬきます

虐待関連以外の項目は見出しだけですが、それでもこの量。
受益者から見ればぜひやってほしいことが書いてありますが、そこまで大盤振る舞いできる余裕が果たしてあるのかどうか。


◆生活の党
http://www.seikatsu1.jp/wp-content/uploads/0c4778a35f0cfe0a34fd3085e210a5c4.pdf

家計収入の増大こそ最優先課題
・子育て応援券、高校無償化、最低保障年金を推進し、可処分所得を増やします。
格差をなくして国民が助け合う仕組みにする
・貧困により困窮する家庭における子どもを乳幼児期・児童期から重点的に支援し、貧困の連鎖を断ち切るための対策を強化します。

手当の金額設定はなくなりました。子どもの貧困対策については毎回記述がありますが、虐待についての言及はありません。


社民党
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2014/commitment2014.pdf

[貧困の防止]
○「健康で文化的な最低限度の生活」の底上げ、社会的セーフティネットの構築、ひとり親家庭への支援を強化し、貧困の連鎖を防止します。

[子ども・若者]
保育所認定こども園・幼稚園の質の向上と量の拡大を実現。国有地や空き教室などの活用で保育所を大幅に増設し、待機児童対策を推進。
・地域に子どもの相談・救済など、子どもの人権擁護の仕組みを。「子どもの権利基本法」を制定。
・虐待による子どもの死亡、居所不明児童・乳幼児の問題なとの深刻化に対応するため、早急に児童相談所の職員配置を拡充し機能強化。
・いじめを許さず、共に学び共に生きる、ゆとりある学校を実現。教育予算のGDP5%水準を実現。子どもの貧困の実態を調査し包括的な取り組みを計画的に強化。さまざまな困難を抱える家庭に対する支援体制を整備。自立支援ホームに対する公的支援を強化。就学援助の保障、給付型奨学金を創設。

公約全体の分量が減り、子育て支援政策の扱いも縮小された感があります。多岐にわたった具体的施策は影を潜めました。
ただ、虐待予防の項目で、今年注目を浴びた居所不明児童の問題に触れている点はさすがと思います。


いかがだったでしょうか。一分野をざっと書き出しただけではありますが、投票の参考にしていただければ幸いです。