ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

マレー語聖書の問題が一件落着

昨日、サバ州発行の『デイリー・エクスプレス』紙を読んでいたら、なんと当日付でマレー語訳聖書の問題が、一応の解決をみた、と記事が出ていました。しかも、スシロ先生のインタビューまで。
早速、英語版ブログに掲載しました(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20120622)。そして、スシロ先生にも「いいニュースですね」とメールを。
すると、二往復のメールのやり取りがあり、添付資料もついてきました。さすがは、このマレー語訳聖書問題の一連について、陰になり日向となり、マレーシアのキリスト教共同体の聖書翻訳の指導者として中心になってこられた方だけあります。

こうしてみると、本当に久しぶりにブリズベン在住のスシロ先生のご登場ですね!
これまでに書き綴ってきたスシロ先生の記事の一覧表は....
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070707)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070710)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070712)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070713)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070714)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070715)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070726)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070801)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070822)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070825)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070901)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070904)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070928)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071214)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071225)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080106)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080213)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080219)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080314)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080318)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080320)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080323)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080428)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080809)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080911)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080912)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20081210)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091106)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091230)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100118)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110120)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110223)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110424)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110605)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110930)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111224

しかし、実に久方ぶりのスシロ先生と交信することになって、ふと気づいた感触。
西洋で博士号を二つ授与され、インドネシアの大学の理事もされていたスシロ先生は、聖書翻訳や聖書学に関する多くの論文を執筆され、著作もあり、海外を飛び回って、華人の血の混じる西洋化したジャワ系インドネシア人として、連絡も早く、信頼の置ける方ですが、ここ5ヶ月ほどのダニエル・パイプス先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120620)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120622)やお仲間研究者さん達とのやり取りから、大きな相違もあるということに気づかされたのです。
恐らく、仕事とされているテーマの問題意識として、スシロ先生とパイプス先生の間には共有できる面が双方にあり、勤勉に熱心に働く点でも似ていらっしゃるのですが、表現の仕方が異なる、と...。それは、出身国のインドネシアと米国の世界的な位置づけの違いからくるものでもあるでしょうし、文化背景の違いもありましょう。
そうは言っても、今回のこのマレー語訳聖書事件の発端と経過は、そもそも、歴史的にも、言語的にも、憲法規定上の条件からしても、宗教的な観点からも、問題をわざわざ起こしていたのは、どう見てもマレー当局側。それなのに、半島部はともかくとして、ボルネオ島に関しては、一応の解決を見た暁に、「感謝いたします」と、うやうやしく政府側に頭を下げているのは、なんとキリスト教側なのです。被害者なのに....(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071018)。
で、この場合、(この件についても、少しだけ過去に言及されていた)パイプス先生ならば、遠慮せずにマレー当局を皮肉を込めてズバズバと批判し、論拠を挙げ、論理的に正当性を述べ立て、今回の結論に際しても、自分達の勝利のように、高々と宣言されるでしょうねぇ...と感じたわけです。
「闘い返す以外に、どんな方法があるか?」と、私と知り合った直後に書き送ってこられたぐらいですから(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120120)。
つまり、同じような経験と知見があっても、反応の仕方が違う、という...。
どこから来る相違なのかをちょっと考えてみたのですが、まずはユダヤ教の教えの一つというのか、ユダヤ系移民の活力と自己主張の特性があるかと思います。
今日も、イスラエル在住のある日本人女性のブログを見ていたら、娘さんが高校卒業だったそうで、その時の訓示が次のようなものだったと書かれていました。
1.道から外れることを恐れるな
2.ブレイクスルーは道を外れた人からしか来ない
3.小さい人の集まりが世界を変える
4.意見が対立したら互いに敬意を持って議論を尽くせ
これなんか見てると、まさにパイピシュ先生の生き方そのものじゃありませんか。ある人々から非難されると、さすがに「もう忘れてしまいたいけど」「まだ私を苦しめ続けている」なんて繰り言をブチブチ書いている割には、「でも、かえって世間の注目を浴びることになって、自分にとっては誇りに思う」みたいに開き直っているぐらいですから。一方、スシロ先生あたりなら、問題が起こっても、まずは波風を極力立てないように、腰を低くして穏健で柔和なやり方をとり、かえってそれが「あの人は謙虚だ」と褒め称えられる結果となっています。そのような文化規範であり、そのまま継承し実践されているのでしょう。
実は私、どちらもわかるのです。いいとこ取りというのか、中間に位置しているというのか。日本がちょうど、アジアで初の「西洋的側面の吸収」ないしは、いわゆる「近代化」を達成した国ということに、一応はなっているので、まさにその具現化なのかもしれませんが。
しかし、このマレー語訳聖書の問題がここまで長引いてしまったのも、そもそも、対立を回避し、妥協できるところは折り合って、譲り合って、という奥ゆかしさや柔軟性のため、と言えなくもありません。クリスチャンの及び腰や優しすぎる態度のためもありましょうか(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080620)。
一方、パイピシュ先生など、根は内向的で控えめではにかみ屋の性格なのに、仕事の件では「勝つまであきらめない」と強気の姿勢で、孤立しようが敵を作ろうが非難されようが、いったん目標を固めたら、あとは結果を出すまで頑張り続けるという方針のようです。とにかく負けず嫌いで、ちょっとやそっとのことではミスを謝ってこないし(ついでに私にも、「謝らなくてもいいんだよ」と‘説教’までされます!)しっかりしているようでも細かいことは気にしないで(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120606)、行け行けどんどんタイプ。
う〜ん、どちらも甲乙つけがたい、といったところでしょうか。
いろいろ誤解されているようですが、ユダヤ系の皆が超裕福でもなさそうなことは、ちょっと観察すればわかることです。ただ、教育に重きを置き、個性を伸ばして、実力をつけるという生き方の奨励は、大抵のユダヤ系に共通しているようです。生きていくためには、既成の組織にうまく入り込むことを目指すというよりは、むしろ、世の中のニッチを探して、そこで頑張って個人の才覚でトップを目指す。あえて例えるならば、日本の中小企業の社長さんのように、なりふり構わず、とにかく頑張る、といった感じ。それは、歴史的に、70年にローマ軍に追われて国から離散して、土地なき民として生きて行かざるを得なかったユダヤの人々の知恵(ホクマー)なのでしょう。日本列島に安穏と暮らしてきたお茶漬け民族の私には、ちょっとやそっとでは真似のできない芸当でもありますが、大変よい刺激にもなります。

そうは言っても、私、パイピシュ先生と知り合ってからというもの、あまりの仕事の速さと量産および中東情勢の重苦しさに、一時は頭がいっぱいになったり疲れたりもしましたが、さすがにパターンがつかめてくると、(あ、今は原稿執筆のためにメールは中断。カーテンを閉めて一生懸命、書いていらっしゃる頃だろうな)とわかってきますし、前向きで積極的な気の張り方が伝わってきて、かえって爽快。文字通りの真似はできませんが、いい影響を受けていることは確かです。
先程、気付いたのは、レヴィ君(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120525)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120531)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120604)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120616)が気を利かせて新しいプログラムを作ったようで、ちゃんと日本語も、他の言語のように、ただ言語別の訳文全体が表形式で出るのみならず、訳文の種目別(論考・ブログなど)に分かれた一覧表が出るようになっていました。これだって、世界の言語一覧表を機械的に写しているのではなく、訳された言語のみが、それぞれに上がるという仕組みです。さすがですね!
小さいシンクタンクだと、パイピシュ先生みずからおっしゃっているので、気心の知れた者同士、小回りがきくため、自分の提案が通りやすいということもあるのでしょうね。ただし、イニシアティブこそが大事。受け身で黙って指示待ち人間だったら、簡単に切られそう...。それに、ヘリテージ財団の記事からわかるように(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120528)、だからこそ、ぴたっと考えが合うことはめったにない以上、小さな組織であったとしても、人間関係を大事にされているのだろうとも想像します。
パイピシュ先生が「僕の同僚だよ」とおっしゃった(実は、昨年あたりから、「会長」に昇格されたパイプス先生に代り、中東フォーラム所長も兼任されることになった)ハイファ出身のロンドン大学教授エフライム・カルシュ先生の本が届きました。

https://twitter.com/#!/ituna4011

Lily2‏@ituna4011
"Palestine Betrayed" by Efraim Karsh (http://www.amazon.com/dp/0300172346/ref=cm_sw_r_tw_dp_q-p5pb12AV7N2 via @amazon) arrived here yesterday.

実は、カルシュ先生の著書は、これで二冊目の入手。

4 Jan 2012
“Islamic Imperialism: A History” by Efraim Karsh, 2007 (http://www.amazon.com/dp/0300122632/ref=cm_sw_r_tw_dp_JH.apb0BBWB3P via @amazon) arrived today. The first book I obtained in 2012 !

いずれも説得力に満ちた、たくさんの公文書を渉猟しての力作のようです。パイピシュ先生も、上記本に推薦の言葉を書かれていますし、書評も書いていらっしゃいます。本当は、歴史家と名乗る以上、パイピシュ先生にも、これぐらいの本を書いていただきたいところですが、生活の糧のことや、組織維持のことなど、いろいろな事情もあって、今のようにコラムニストのようなことをなさっているのでしょうねぇ。立ち上げと軌道に乗せるまでが、とにかく非常に大変だったようですから、パイピシュ先生のご苦労は、並々ならぬものです。だからこそ、ただ見解が一致するのみならず、その辺りにも共感できる人達こそが集まり、残っていらっしゃるのではないかと遠くから想像しています。
気持ちの張りのようなプラスの刺激は、こういうところから与えられていると思います。