高浜3、4号機の再稼働を容認 大阪高裁 関電の異議を認める(こちら原発取材班) - 中日新聞(2017年3月28日)

http://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/491
http://megalodon.jp/2017-0329-1029-48/genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/491

「新基準に適合すれば、それで十分」との判断
阪高裁が28日に出した決定要旨をまとめる次のようになります。

  • 基準地震動が過小とはいえない
  • 基準地震動に関する新基準の定めが合理性欠くとはいえない
  • 関電は地震津波に対する安全対策を十分説明した
  • 新基準により、炉心の著しい損傷防止の確実性は高度に
  • 避難計画を審査対象外としたのは不合理とはいえない
  • 避難計画は適切
  • 新基準は福島事故の教訓を踏まえていない不合理なものとはいえない

これらを、もっとまとめると…
「新基準はきちんとした基準。関電は新基準を満たしていると説明できたわけだから、それで十分。避難計画も十分」
いたってシンプルな論理構成です。「国と関電の主張を丸のみ」(弁護団)ともいえます。
※決定要旨、決定(405ページ)の原文は、脱原発弁護団のHPにあります
こちら

高浜再稼働認める 3、4号機の仮処分取り消し 司法判断1年で覆る - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017032902000119.html
http://archive.is/2017.03.29-001505/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017032902000119.html


関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた昨年三月の大津地裁の仮処分について、大阪高裁は二十八日、関電の抗告を認めて取り消す決定をした。二基が法的に再び運転可能となり、稼働中の原発を止めた全国初の司法判断は約一年で覆った。
関電の岩根茂樹社長は同日の記者会見で、二基の再稼働の時期は未定と説明したが、地元の了解を経て、早ければ四月下旬にも運転を再開する見通し。
高裁の山下郁夫裁判長は決定理由で、東京電力福島第一原発事故後に策定された原子力規制委員会の新規制基準を「事故から得られた教訓を踏まえ、最新の科学・技術的知見に基づき策定された」と指摘。原発が新規制基準に適合した場合、危険性の立証責任は住民側にあるとした。
地裁決定で「危惧すべき点がある」と指摘された過酷事故対策や基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の想定も、新規制基準に沿って適切に考慮され「事故時に炉心の著しい損傷を防ぐ確実性は高度なものになっている」と判断した。
抗告審では地裁決定後に発生した熊本地震も争点となり、住民側が新たに「大きな揺れが連続して起きると想定していない」と主張。決定は「高浜原発で基準地震動規模の揺れが連続するとはほぼ考えられず、起きたとしても安全性は確保されている」と退けた。
住民側は今後、特別抗告などの手続きで最高裁の判断を仰ぐことができるが、憲法違反などの要件が定められ、退けられた場合に全国の同種裁判へ与える影響も考慮して慎重に対応を検討する。

◆高裁 住民目線ほど遠く
関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を認めた二十八日の大阪高裁の決定は、原子力規制委員会の策定した新規制基準に全く疑いを挟まなかった。その姿勢に住民目線は感じられない。
東京電力福島第一原発事故は、社会から要求される原発の安全水準を格段に高めたはずだ。一年前、稼働中だった原発を初めて止めた大津地裁の仮処分決定は、事故が起きれば長期にわたって暮らしを奪われる地元住民に寄り添い、新規制基準が納得できるものかどうかを厳しく問うた。
福島の事故前、原発訴訟の判断を方向付けてきたのは、行政の設置許可を尊重した一九九二年の四国電力伊方原発訴訟の最高裁判決だった。昨年の大津地裁や同じく差し止めを認めた二〇一五年の福井地裁は、新規制基準の妥当性まで踏み込み、原発事故後の新しい司法のアプローチを示した。
しかし今回の大阪高裁は規制委が自らつくった解説資料に依拠し、「新規制基準は合理的」と認定。専門家の意見に追随する事故前の枠組みに戻った。
原発停止を求める大勢の人々が全国で訴えを起こしているのは、国も電力会社も再稼働に前のめりになる中、新基準をチェックする最後のとりでとしての役割を司法に求めるからだ。
今回の決定後も原発訴訟はやまないだろう。事故の教訓を置き去りにするのか。司法の役割が問われている。 (角雄記)

「高浜」高裁決定 あと戻りしてないか - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017032902000138.html
http://archive.is/2017.03.29-001645/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017032902000138.html

「画期的な司法判断」は、またもすっかり覆された。関西電力高浜原発3、4号機を止めておく法の鎖は解き放たれた。3・11以前へのあと戻りを懸念する多くの住民の不安と不信を募らせて。
「国民の命を守る司法からの重いメッセージ」
 昨年三月、稼働中の原発を初めて止めた大津地裁の決定を、私たちはそう評価した。
基準地震動(耐震設計の目安となる最大の揺れ)の策定方法に問題があり、起こり得る地震の大きさの評価が過小、津波対策や避難計画についても疑問が残る。従って、住民の人格権が侵害される恐れが強い−。3・11後の新たな原発新規制基準の在り方に疑問を呈し、原発の再稼働に関して同意権を持たない立地県以外の住民感情にも、配慮のある判断だった。
そんな住民の“ひと安心”は、一年で覆された。高裁の壁はいまだ高かった。
阪高裁は「規制により、炉心の損傷等を防止する確実性は高度なものとなっている」と、新規制基準を評価。「これら(既存の計算式など)の手法に基づいて策定した基準地震動が過小であるとはいえない」「避難計画等の具体的内容は適切なもの」とした。そして「新規制基準が福島第一原子力発電事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとはいえない」と断じた。地裁判断はおおかた覆された。
だが、現実はどうだろう。
原子力規制委員会内部には現在、地震動の専門家がおらず、十分な評価ができる立場にない。
新規制基準における揺れの強さの評価手法に関しては、昨年四月の熊本地震、つまり“最新の知見”を踏まえた上で、専門家から疑問の声が上がっている。
三十キロ圏内の自治体は避難計画の策定を義務付けられたが、道路の渋滞や避難の“足”の確保が不安視されたままである。
関電は大津地裁の決定を「科学的、専門的知見を踏まえた客観的な判断がなされていない」と批判した。大阪高裁の判断は、十分に科学的、専門的だと言えるのか。3・11の教訓や住民の不安に配慮したものと言えるのか。
福島第一原発の事故処理は難航を極め、事故から六年を経て、原発再稼働に反対する人は増えているという世論調査の結果もある。
今、時計を逆回りさせてもいいものか。電力会社と政府にも、よく考えてもらいたい。

「高浜」再稼働を逆転容認 「万が一」に応えていない - 毎日新聞(2017年3月29日)

http://mainichi.jp/articles/20170329/ddm/005/070/040000c
http://archive.is/2017.03.28-200726/http://mainichi.jp/articles/20170329/ddm/005/070/040000c

過酷な事故が起きた際の避難計画が不十分なままで、なし崩し的に原発を再稼働させていいのか。こうした国民の不安に応えたのかに疑問の残る判断である。
福井県関西電力高浜原発3、4号機について大阪高裁は、運転差し止めを命じた昨年3月の大津地裁の仮処分決定を取り消し、関電の抗告を認める決定を出した。関電は再稼働に向けた準備に入る。
焦点となったのは原子力規制委員会が策定した新規制基準の評価だ。
阪高裁は、新基準は東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえており、それに適合した関電の対策は安全を確保していると結論付けた。新基準に合格しただけでは安全性は保証されない、と指摘した大津地裁とは対照的な判断である。
事故に備えた住民の避難計画についても、大阪高裁は訓練によって改善が検討され、計画の内容も適切と評価し、2基の再稼働を認めた。
私たちは原発再稼働をすべて否定しているわけではない。
だが、原発事故が起きれば被害は広範囲に及ぶ。住民は府県境を越えて広域避難する必要があるのに、避難計画は安全審査の対象ではない。県外避難訓練では天候不順でヘリや船が使えない課題も判明した。
津地裁は国主導での避難計画の策定を求め、大阪高裁も「改善の余地がある」とは認めている。国は自治体まかせにせず、計画の実効性を高める必要があるはずだ。
福島の事故で原発安全神話は崩れ、原因究明も十分とは言えない。高裁は「各調査委員会の調査結果で基本的事象は明らかにされた」と述べ、新基準について「最新の科学的、技術的知見に基づいており、不合理とはいえない」とした。
行政の判断をほぼ受け入れる姿勢は「福島以前」に戻ったかのようだ。「万が一」の事故に備える意識が乏しいのではないか。
原発再稼働をめぐり裁判所は九州電力川内原発1、2号機の再稼働を容認した。一方で関電大飯原発3、4号機を巡る訴訟は福井地裁が運転差し止めを命じている。
福島の事故から6年が過ぎても、再稼働に慎重な声は国民に根強い。政府と電力会社は丁寧な説明を積み重ねる必要がある。

高浜原発決定 あまりに甘い安全判断 - 朝日新聞(2017年3月29日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12865028.html?ref=editorial_backnumber
http://archive.is/2017.03.29-001904/http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_shasetsu_01

原子力規制委員会の新規制基準や電力会社の安全対策に理解を示し、合理的だと結論づける。安全に対する意識が、福島第一原発の事故前に戻ったような司法判断だ。
関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定について、大阪高裁は関電側の訴えを認め、決定を取り消した。
焦点の一つは事故後にできた新規制基準への考え方だ。
津地裁は、福島事故の原因究明が「道半ば」で基準が作られたとし、安全の根拠とすることを疑問視。新基準を満たしただけでは不十分とした。
きのうの高裁決定は福島事故の基本的な原因は各事故調査委員会の調べで明らかにされているとし、新基準についても「原因究明や教訓を踏まえたもの」と評価、「不合理とはいえない」と正反対の判断を示した。
さらに耐震安全性のための補強工事についても、高裁は「規制委が規制基準に適合していると確認した」とし、「相当の根拠にもとづいている」と評価した。関電が耐震設計の基本とした基準地震動に疑問を呈した地裁の決定とは全く逆だ。
あまりに電力会社の言い分に沿っていないか。規制基準は正しく、それに適合さえしていれば安全だと言わんばかりだ。
技術面で素人である住民や一般の人が不安に感じるなら、納得が得られるよう安全性を追い求める。そうした姿勢の大切さが、事故の示した教訓だったはずだ。
住民の避難計画についての判断もそうだ。今の計画について「様々な点でいまだ改善の余地がある」と指摘しながら、対策が検討されていることを理由に追認した。複合災害や渋滞などで避難できないのではないかという住民の不安を、正面から見据えたものとは到底いえない。
行政手続きさえ整っていればよく、安全は専門家の判断にゆだねよというなら、司法の役割は何なのか。
福島事故から6年。甚大な被害を国民が目の当たりにした今、裁判所として原発にどう向き合うか。大阪高裁はどこまで突き詰めて考えたのだろう。
決定を受け、関電は高浜3、4号機の再稼働に向けた準備に入る。だが関電も国も「これで安全性にお墨付きが得られた」ととらえるべきではない。福井県に多くの原発が集まる集中立地のリスクや、使用済み燃料の処分など、議論は不十分だ。
山積する問題を残したまま、再稼働に突き進むことは許されない。

東芝米原発が破産法申請へ 損失1兆円規模、財務再建 - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032901000812.html
http://megalodon.jp/2017-0329-0953-31/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032901000812.html

経営再建中の東芝米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)は現地時間の28日(日本時間29日)、米連邦破産法11条の適用を申請する方針を決める。即日申請し、経営破綻する見通しだ。日本の民事再生法に相当する再建型の破綻処理で、東芝は1兆円規模に上るとみられる損失額を確定する。WHを連結対象から切り離し、海外の原発事業からも撤退、財務基盤を立て直す。
破産法適用で当初見込んでいた7千億円強の損失は大きく縮小されるが、WHの親会社として約8千億円の債務保証があり、追加損失も発生する可能性がある。東芝は穴埋めのために半導体事業の売却を急ぐ。(共同)

(本音のコラム) 斎藤美奈子さん パンと道徳 - 東京新聞(2017年3月29日)

2018年度から使用される道徳教科書。「パン屋」が「和菓子屋」変更された?
......

(検定基準の22項目に)人権についての規定はなし。個人の権利は教えない。差別問題にもふれない。全体に従順で主張しない子を求めている印象だ。
教科書だけではなく、これを基準に子どもたちの道徳観に点数をつけるのだ。パンの代わりが和菓子なら教科化された道徳は教育勅語のリニューアル版?アンパンマンが怒るよ。

関連記事)
パン屋「郷土愛不足」で和菓子屋に 道徳の教科書検定 - 朝日新聞(2017年3月24日)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20170325#p1

安保法施行1年 戦闘に巻き込まれる恐れを認めないまま - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000118.html
http://archive.is/2017.03.29-002100/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000118.html

自衛隊の海外活動を拡大する安全保障関連法の施行から二十九日で一年となった。この間、陸上自衛隊南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊を派遣する首都ジュバでは、昨年七月に大規模衝突が発生。先月、一部黒塗りで公表された当時の部隊の日報は、現地情勢について「戦闘への巻き込まれに注意が必要」と記していた。「巻き込まれ」の懸念は、国会論戦や本紙報道でも再三指摘されたが、政府は認めようとしなかった。 =柳沢さんウオッチ<2>面
稲田朋美防衛相は二十八日の記者会見で「駆け付け警護の新任務付与など、具体的な取り組みが進んでいることは安保法の目的を実現する上で極めて重要」と評価した。現地の治安については「極めて厳しい。派遣部隊の撤収が無事に終わり、帰国するまで緊張感を持って進めたい」と述べた。
現地情勢が厳しいのは今に始まったことではない。ジュバで大規模衝突が起きた昨年七月十日の日報は、市内で「戦闘が生起」と明記。十二日の日報まで「戦闘への巻き込まれ」の懸念を連日報告した。
昨年秋の臨時国会では、現地の治安が懸念される中でPKO部隊の派遣期間を延長し、隊員の武器の使用範囲を拡大する駆け付け警護を付与することの是非が論戦の焦点となった。
民進党大串博志政調会長は、昨年九月末の衆院本会議で「紛争に巻き込まれる可能性をどう認識しているのか」と追及。安倍晋三首相は安全を確保できる範囲内で駆け付け警護を実施するとし、「巻き込まれ」の危険性を否定した。
当初は陸自が廃棄したと説明した日報を、防衛省が今年二月に公表すると、政府は姿勢を一転させた。今月、南スーダンから五月末までに撤収する方針を発表した。 (新開浩)

残業月100時間 これでは働かせ改革だ - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017032902000137.html
http://archive.is/2017.03.29-002246/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017032902000137.html

パートなど非正社員の待遇改善につながりそうな内容も盛り込まれたが、長時間労働の抑制については甚だ不十分だ。過労死ラインの長時間残業を合法化するものであるという批判は免れない。
「何かをやりたいと願っても画一的な労働制度、保育と介護との両立困難など壁が立ちはだかる。こうした壁を取り除く」。政府の会議が取りまとめた働き方改革実行計画はうたい上げるが、具体的な内容はこれに遠く及ばない。
正社員と非正社員の不合理な差をなくす「同一労働同一賃金」の実現は、一定程度評価できる。全労働者に占める非正社員の割合は四割近くに達し、正社員に対する非正社員の賃金水準は六割弱にとどまる。
通勤手当や時間外労働手当、慶弔休暇などでは待遇差を認めず、同一の支払い、処遇をすることを求めた。基本給、賞与も経験や能力、実績などが「同じなら同一の支給をする」との基準を示した。関連法を改正し均等・均衡待遇を盛り込む、またはより強化する。
待遇格差の是正に向け改善が見込めそうだ。企業側が正社員の処遇を引き下げて対応することのないよう、政府には経済界への働き掛けをしてほしい。
問題なのは残業時間の上限規制だ。労使は年間七百二十時間の枠内で特例として「一カ月百時間未満」「二〜六カ月平均八十時間」の上限を設けることで合意した。しかし、その後、年間の上限に休日が含まれていないという「抜け穴」が発覚。年九百六十時間まで働かせられることが分かった。命を守るルールに、そこまでの特例が認められていいのだろうか。 
しかも、研究開発部門で働く人は対象外とするほか、運輸業や建設業、医師は最低五年間は適用を猶予する。厚生労働省によると脳・心臓疾患の労災認定件数二百五十件余(二〇一五年度)のうち、建設・運輸が五割を占める。人手不足が背景にあるというが、だとしても命を落とすような働き方を容認していいはずがない。
さらに、働いた時間ではなく成果に応じ賃金を払う「残業代ゼロ」制度とみなし労働時間に賃金を支払う裁量労働制を拡大することを盛り込んだ法案を、早期に成立させることも強調した。両制度は事実上、残業規制の枠外だ。過労死を減らすどころか増やしかねない。再考を求める。
子育て、介護など家庭と仕事の両立を容易にするという働き方改革の原点に立ち戻ってほしい。

「残業月100時間未満」「同一賃金」 政府が計画決定 - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000116.html
http://archive.is/2017.03.29-002427/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000116.html


政府は二十八日、働き方改革実現会議を首相官邸で開き、罰則付きの長時間労働規制や非正規労働者の待遇改善などの具体策を盛り込んだ改革の実行計画をまとめた。残業の上限を「月百時間未満」と明記した。現行では残業規制の対象外になっている運輸業や建設業は、改正法施行から五年間規制を見送る。正社員と非正規労働者の賃金に差をつける場合は企業に説明責任を課す。厚生労働省審議会の審査を経て秋の臨時国会にも関連法案を提出、二〇一九年度施行を目指す。
残業時間の上限規制は、月四十五時間、年間三百六十時間の基本的な規制を法定化。年間上限を七百二十時間(月平均六十時間)と決めた。月四十五時間超の残業は半年間まで認め、年間七百二十時間以内ならば、繁忙期などは「月百時間未満」や、「二〜六カ月の月平均八十時間以内」の残業も特例として認める。
トラック、バス、タクシーなど運輸業と建設業は、この上限規制を五年間猶予する。運輸業は猶予後、年間九百六十時間(月平均八十時間)に上限を緩めて適用する。将来的には他業種と同じ年間七百二十時間まで規制を強めることを目指す。建設業は猶予後、年間七百二十時間の上限を適用するが、災害など復旧・復興事業に関しては、上限の特例は適用しない。

働き方改革は途上
政府の働き方改革実現会議が二十八日、実行計画をまとめた。過労死を防ぎ、子育て・介護と両立しながら女性や高齢者も働ける環境整備に一定の「処方せん」を示した。少子高齢化が進む中、政府は働き方改革を経済再生に向けた「最大の挑戦」に位置付けるが、実現には課題も多い。 (鈴木穣、中根政人)



安倍晋三首相は会議の席上「日本の働き方改革にとって歴史的な一歩だ」と自賛した。残業規制に実質的な上限規制を設けるのは一九四七年の労働基準法労基法)制定以降初めて。しかし、取り残された業種がある。現在は残業時間規制の対象外になっている運輸、建設業の適用は改正法施行から五年間猶予する。
インターネット通販などの急増で、宅配便最大手のヤマト運輸をはじめ運輸業長時間労働が問題になる中、政府が企業の労働環境改善の取り組みを十分に後押しできない恐れがある。建設業に関しても、政府は二〇二〇年東京五輪パラリンピックの需要増を優先させた形だ。
計画には、働く時間ではなく成果に賃金を支払う「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を含む労基法改正案の早期成立が盛り込まれた。今回、研究開発は規制の適用除外のままとなったが、業務によっては同制度の対象となり過重労働の懸念も残る。
残業の上限規制の甘さに対しても、過労死遺族や労組から反発が相次いだ。特に特例の「月百時間」の上限に対しては、連合の神津里季生会長も「到底ありえない」と批判したが結局、経団連に押し切られた。
さらに残業規制には、休日労働は含まれていない。制度上は年間上限七百二十時間の残業に加え、休日労働も可能となる。日本労働弁護団常任幹事の菅俊治弁護士は「残業は『例外』のはずだが、年七百二十時間の規制も緩いのにさらに休日もとなると労働時間の削減からはほど遠い」と話す。
ヤマト運輸では残業代未払いも表面化した。規制強化で残業の「過少申告」などサービス残業が横行する恐れがある。現場の取り締まりが重要だが、労働基準監督官は約三千二百人。労働者数に占める監督官数は欧州各国より少ない。政府の規制改革推進会議は、社会保険労務士の活用に向け検討を始めたばかりだ。

核禁止条約交渉に不参加 被爆国が発信しないのか - 毎日新聞(2017年3月29日)

 
http://mainichi.jp/articles/20170329/ddm/005/070/037000c
http://archive.is/2017.03.28-200217/http://mainichi.jp/articles/20170329/ddm/005/070/037000c

国連本部で始まった核兵器禁止条約の制定交渉に、日本政府が不参加を表明した。唯一の戦争被爆国として、核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を自任してきた日本だが、その機会を自ら放棄したに等しい。
岸田文雄外相は、不参加の理由について、米露英仏中の5核保有国が参加していないことを指摘し「核兵器国と非核兵器国の対立を一層深めるという意味で逆効果にもなりかねない」と説明した。
日本政府は昨年10月、禁止条約の制定交渉開始を求める国連決議に反対投票をした。ただこの時、岸田氏は3月から始まる交渉には積極的に参加する考えを示していた。
保有国と非核保有国をめぐる対立状況は変わっていない。それなのに、日本が参加して橋渡しをすると言っていたのが、今回、両者の対立を深めるという理由で不参加を決めたのは筋が通らない。
外相が参加の意向を明言しながら、それを翻した判断は、日本外交への信頼を損なうものだ。
日本の不参加決定には、昨秋以降の国際情勢の変化が影響している。
米国では昨年11月の大統領選でトランプ氏が勝利した。トランプ政権は核戦力の増強に積極姿勢を示している。北朝鮮の核・ミサイル開発が差し迫った課題となっているとき、核兵器禁止条約を制定するのは、安全保障上、現実的ではないというのが、米国など核保有国の論理だ。
米国は、日本が交渉に参加しないよう働きかけたと言われる。
日本政府内には「交渉に参加しても日本は反対論を主張するしかなく、消極姿勢を印象づけるだけで、意味がない」といった議論もある。あまりに受け身の発想だ。
橋渡し役として交渉に参加するには、志を同じくする国々の輪を広げるなど環境整備が必要だった。日本政府は、そのための努力をした形跡がない。
交渉会議は6〜7月にもう一度、開かれる予定で、そこで条約案がまとまる可能性がある。
保有国が参加しないため条約は実効性が乏しいと言われるが、長期的には核兵器禁止の国際世論形成に大きな役割を果たす可能性がある。そのプロセスに日本が関わらず、被爆国として発信しないのは残念だ。

核禁止条約 被爆国の責任放棄だ - 朝日新聞(2017年3月29日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12865029.html?ref=editorial_backnumber
http://archive.is/2017.03.29-002657/http://www.asahi.com/paper/editorial2.html?iref=comtop_shasetsu_02

もはや日本政府が「被爆国として、核兵器廃絶に向けて世界をリードする」と言っても説得力はなくなった。広島、長崎の被爆者はもちろん、多くの国民の思いを裏切る行為だ。
核兵器禁止条約の制定に向け、国連本部で開幕した最初の交渉会議で、日本の政府代表は不参加を表明した。
100以上の非核保有国が参加する一方、米国、ロシア、中国などの核保有国や北朝鮮はボイコットした。
核兵器を「非人道的」とし、使用や保有を法的に禁じるのが交渉の目的だ。岸田文雄外相は不参加の理由について「核保有国と非核保有国の対立を深め、逆効果になりかねない」と述べたが、理解に苦しむ。
被爆国であり、米国の核の傘の下にある日本は、非核保有国と核保有国の「橋渡し役」を自任してきた。対立が深まっている今こそ溝を埋める役割は重要だ。核保有国と足並みをそろえる形で不参加を表明するとは、責任放棄もはなはだしい。
保有国は、核の抑止力に頼る安全保障政策が脅かされるとして、禁止条約に強く反対してきた。米国の大使は、会議場のすぐ外で約20カ国の代表とともに抗議会見を開いた。この反発ぶりは、禁止条約の必要性を逆に示したようにも思える。
核兵器の非人道性を、核保有国の指導者はまず理解すべきだ。どの核保有国も状況次第で核を使う可能性を否定していない。条約ができれば、核の使用は国際犯罪になる。
トランプ米大統領は「他国が核を持つなら、我々はトップになる」と発言し、核戦力の増強に意欲的だ。北朝鮮は核・ミサイル開発で挑発を繰り返す。「核を使ってはならない」と条約で明示すれば、こうした動きへの強い歯止めにもなろう。
岸田外相は、日本周辺の安全保障環境の厳しさも不参加の理由に挙げた。北朝鮮の脅威に加え、中国も軍拡路線をひた走るなか、禁止条約は米国の核の傘を損ね、望ましくないとの考えは、政府内に強い。
確かに核軍縮は、地域の安定を崩さないよう注意深く進める必要がある。だからこそ日本は交渉に加わり、核の傘からの脱却は後回しにすることを認めるなど、より多くの国が賛同できる条約をめざして意見を述べるべきではなかったか。
オーストリアやメキシコなどの非核保有国は、7月までに、条約案をまとめる意向だ。
今ならまだ間に合う。日本政府は交渉の場にただちに参加すべきだ。

日本、核禁止交渉に不参加 米トランプ政権に配慮か - 東京新聞(2017年3月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201703/CK2017032902000115.html
http://archive.is/2017.03.29-002935/http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201703/CK2017032902000115.html

【ニューヨーク=東條仁史】日本政府は二十七日、米ニューヨークの国連本部で始まった核兵器の開発などを法的に禁止する核兵器禁止条約の制定交渉に「建設的、誠実に参加することは困難」(高見沢将林(のぶしげ)軍縮大使)と不参加を表明した。米国の「核の傘」に頼る日本は、条約自体には反対だが、交渉への参加は模索してきた。被爆者を落胆させた判断には、核戦力の拡大を目指すトランプ米政権の誕生が影響している。
同条約は昨年末の国連総会本会議で、制定交渉開始の決議案は賛成多数で採択された。日本は反対したものの、岸田文雄外相は「被爆国として主張すべきことは主張したい」と交渉参加の意向を示していた。
だが、トランプ政権は「北朝鮮が条約に同意すると誰が信じるのか」(ヘイリー国連大使)と条約に強硬に反対。北朝鮮による弾道ミサイル発射も相次ぎ日本政府は方針転換した。
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲(あきら)国際運営委員は「日本政府が核軍拡を進めようとするトランプ政権に配慮したのは間違いなく、残念だ」と不満を表明した。

被爆者、日本の不参加批判 核禁止条約で「裏切り」 - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032901000825.html
http://archive.is/2017.03.29-003111/http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032901000825.html

【ニューヨーク共同】核兵器の非合法化と廃絶を目指す「核兵器禁止条約」制定に向け、ニューヨークの国連本部で開催中の会議で28日、カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(85)が演説した。被爆者は日本政府による交渉への不参加表明で「自分の国に裏切られ、見捨てられた」と感じたと厳しく批判した。
声を震わせて被爆体験を語りながら条約制定を訴えたサーローさんに、会場から大きな拍手が起こり、しばらく鳴りやまなかった。条約推進派の国々や「核兵器なき世界」を訴えてきた被爆者と、不参加を決めた日本政府の間に大きな隔たりがあることが、改めて印象付けられた。

川崎市子ども会議が課題指摘 市長「市政に反映頑張る」:神奈川 - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201703/CK2017032902000172.html
http://archive.is/2017.03.29-001358/http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201703/CK2017032902000172.html

川崎市子ども会議で二〇一六年度の委員を務めた子どもたちが二十八日、市役所を訪れ、福田紀彦市長に活動報告を行った。 (小形佳奈)
会議は、市子どもの権利に関する条例に基づき開かれており、十五期目となる本年度の委員は小学四年から高校二年の十三人。子どもたちは「たばこの分煙についての研究」「エコキャップの回収活動」「行政区子ども会議との連携」の三テーマで活動をしてきた。
テーマに据えて四年目となるたばこに関しては、夏休み中に川崎、武蔵小杉、武蔵溝ノ口、登戸、新百合ケ丘の各駅前にある喫煙所の利用者と、付近を通る歩行者合わせて五百五十人にアンケートをした。
高校二年井原沙羅さん(17)が、アンケートをまとめた表を示しながら「登戸駅は吸う人にとっても吸わない人にとっても臭いがなく、きれいな喫煙所だが、武蔵溝ノ口駅はどちらにとっても臭いがあり汚い喫煙所だということが分かった」と発表。登戸駅の特長を生かして、他の喫煙所を改善してほしいと提言した。
また、同亀井絵梨香さん(17)は、次年度の活動テーマを、「たばこ−」に替えて「川崎市を知る」にすると報告。「旅先で川崎から来たと言うと、『あの工業の』と言われる」と明かし、「川崎の強みを知り、広報したい」と語った。
報告を受けた福田市長は「いい形で皆さんの声が市政に反映できるよう頑張る」と答えた。