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2016-08-31

TVアニメ・マイベストエピソード10選

お盆休みあたりに「物理的領域の因果的閉包性」のぎけんさんがマイベストエピソード企画(マイベストエピソード企画はじめました - 物理的領域の因果的閉包性)をされていてこれはいち早くやろうかなとか考えていたんですが、コンセプト縛りにするか〜とか、オールタイムベスト的なものをあげようかな〜とか色々と考えているうちに駆け込み気味に…(笑)結局、コンセプトも何も考えず取りあえず今取り上げたいものをあげようかなということで気づけばベタになっていた(笑)順不同です。

◆ マイベストエピソードのルール
・ 劇場版を除くすべてのアニメ作品の中から選出(配信系・OVA・18禁など)
・ 選ぶ話数は5〜10個(最低5個、上限10個)
・ 1作品につき1話だけ
・ 順位はつけない


 監督:伊藤達文 絵コンテ伊藤達文 演出:室谷靖 作画監督いとうまりこ光田史亮 総作画監督小池智史藤本さとる

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『シンフォギア』はテン年代(2010年代)を考えてもベストクラスに好きなアニメ。特にこの初回は本当に面白過ぎてびっくりした。まずテンポがめちゅちゃいい。高山みなみ水樹奈々と素晴らしい歌声を持つツヴァイウィングの圧倒的ライヴで「俺多分ここでサイリウム振っているわ!」感を感じながら(手元でUOを折)ノイズが発生、奏の絶唱へつながっていく。彼女の覚悟の背中、そして頬をつたう涙の美しさよ。何よりこの場面は瀕死になりながらも響が目撃していることが重要。奏から響へのバトンタッチが精巧に描かれている。そしてそんなドラマティックなオープニングから響の体内に眠る「ガングニール」覚醒まで一秒たりとも間延びせず一気に駆け巡る。ラストシーンで水樹奈々の『Synchrogazer』のイントロが流れはじめエンディングへ。このエンディングの流れは2010年代屈指のかっこよさではないか。無印は本当にどの話をとっても面白かった。2期・3期進むにつれて無印の持つ何か特別なものが抜け落ちてしまったような気がして残念であるが、今後も続くらしいのでぜひに無印を超えてほしいと思う。ツヴァイウィングは死なない!

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 監督:桜美かつし 脚本:浦畑達彦 絵コンテ大畑清隆 演出:雄谷将仁 作画監督:川田剛、大木良一 総作画監督長谷川眞也

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あさっての方向。』はゼロ年代屈指の傑作だと思う。ほんわかとしたなんともない作品にも見えるかもしれないが、非常に丁寧に作りこまれている。特に台所で料理を作るからだの後姿。8話以前から何度も同ポジで積み重ねられた演出は8話で爆発を見せる。彼女が誰の背中を見て料理を始めたか。そんなことを思いながら2人並んだ背中を見て涙する。からだが何を思って家出したのか、兄はどんな気持ちでからだを探したのか。からだの回想を見ると心が締め付けられる思いだ。すれ違いをきわめて繊細な演出で積み重ねていく素晴らしい作品です。

「あさっての方向。」 | バンダイチャンネル

  • ルパン三世(TV第1stシリーズ)』(1971) 第7話「狼は狼を呼ぶ」

 監督:大隅正秋 絵コンテ:斉九洋 演出:Aプロ演出グループ 脚本:大和屋竺 

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ルパンから五ヱ門とルパンが通じ合う仲間になる話を。五ヱ門の初登場で「殺しのライセンスNo.1」を競うような第5話「十三代五ヱ門登場」も素晴らしい作品ですが、7話の魅力は2人は戦いながらもお互いを認め合って最後に笑い合って終わるところでしょう。冒頭の入門試験会場も面白いし、そこからルパンと示刀流の総帥との決闘。単純な戦闘力では頭を使って見事に斬鉄剣の秘密を勝ち取る。そして、ルパンと五ヱ門の多幸感たっぷりなシーンへ。30分に満たない本編ながら、印象的なシーンがこれだけある。それだけ充実した話数なんですね。旧ルパンであれば『複製人間』っぽいカルトっぽさのある第2話『魔術師と呼ばれた男』も素晴らしい。それとルパンはどのエピソードから見ても面白いのでいいですよね。

「ルパン三世 1st series」 | バンダイチャンネル

 監督:柳沢テツヤ 脚本:植竹須美男 絵コンテ:南康宏 演出:西山明樹彦 作画監督:石橋有希子 メカ作画監督:西井正典

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これぞオールタイムベストの傑作『神無月の巫女』から5話。さてさて本来であれば姫子と千歌音のすれ違いによって千歌音の秘めた感情が描かれる6話やそれが決定的になる7話だったり(というか6話以降どれもいい)を選びたかったところだったが、再見してたら涙が止まらなくなり1つに絞れるか!と逃げて方向を変えた(笑)本作の魅力はいわなくても1つは百合なんでしょうけど、もう1つは無駄に熱いロボットバトルですね。ソウマは姫子と千歌音の関係をより深くするための存在なんでしょうけど、この男かっこいいですよほんとに。「地球を救うことくらいしかできない」とか普通言えない。そして5話は僕の好きな「兄弟」の物語。弟を救うために悪へ落ちていった兄と、そんな兄と戦わなければならない弟。これもある種の百合なのか・・・

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 総監督:佐藤順一 監督:河本昇悟 脚本:池田眞美子 絵コンテ・演出:佐藤順一 作画監督小林明美

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俗にいうウテナ以降の作品じゃないだろうか。世界が片鱗が見えていく(崩れていく)最終話付近も素晴らしいですが、「卵の章」の最終話13.AKTはプリンセスクレールとチュチュの一騎打ちのダンス対決。チュチュがたった1人でパドドゥを踊る姿にぐっとくる。一生懸命踊りものすごい跳躍力で飛ぶがバタッと倒れたり、一人でバランスをとっているときの震えるつま先の描写が痛ましくて涙ぐましい。ダンスで世界を変えるよう人の心も動かすのだ。またラストシーンの燃えていくエデルを見ながらのラストダンス。もうもうもうたまらなく…素晴らしい。

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 監督:赤根和樹 脚本:山口亮太 絵コンテ山口祐司 演出:佐藤育郎 作画監督:菅野宏紀

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坂本真綾とともに20周年の『エスカフローネ』から三角関係を繊細に描くエピソードを。感情の揺れ動きを鳥が飛んだり、花が舞ったり、雨を降らしたり、橋(境界)を渡るか/渡らないかのシーンであったり、演出・ショットによって構成している素晴らしいエピソードです。ロングショットがキマるキマる。真綾さんもまだまだデビューしたばかりで初々しくてかわいいですね!(ただのファン)また劇場版の『エスカフローネ』(2000)も、設定をまるっきり変えて見せて映画を目指そうとした素晴らしい作品だと思います。

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 監督:錦織博 脚本:横手美智子 絵コンテ橋本カツヨ 演出:島美子 作画監督池田和美

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言わずと知れたウテナ勢の錦織博が監督を務め、橋本カツヨがコンテに入ったエピソード。やはり日常に変調が見え始め、キャラクターに何か自覚させ見ている者に何かを残していくといったことについて橋本カツヨ本当にうまい。卵が出てるとどうも「七実の卵」を思い出すんだがしょうがないよね。「同ポジ」による積み重ねと、いきなり人が現れたりいなくなったり、ラファエルが見えることの当たり前さを痛感するミカエル。普段お気楽なラファエルがこうもビターな味付け役になるとはと唸るエピソード。基本ギャグアニメのように見えるが、こういった作品のシリアスムードはボディブローのようにズシズシと身体に効いてくる。ウテナ勢の残した素晴らしい作品です。

 監督:出崎統 脚本:森雅美 絵コンテ出崎統 演出:鈴木卓夫 作画監督杉野昭夫

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おにいさまへ…』はいわずもがオールタイムベストなんですが、自分にしてはベタすぎるので外して出崎枠で『華星夜曲』を選んでアウトロー感だそうかと思ったんですが(実際アウトローアニメだし)、何せBlu-ray BOXが10月に発売じゃないですか。この大いなる流れに身を任せるしかない!(しかも『白鯨伝説』のBlu−rayBOXも11月に!)ということで『おにいさまへ…』から(安易)。

おにいさまへ…』の1つの魅力として女性たちのシリアスな攻防戦だと思いますが、ちょっとそこは外してみて、サンジュスト様が大好きなので選ぼうかな…と思いつつどうしてもサンジュスト様を想うとつらくて選べないし、それでそことは関係のない奈々子と武彦との距離をぐっと近づける挿話的な21話を選びました。やっぱり画面がめちゃくちゃかっこいいんですね。キャラクターの感情が画面によって説明される。世界最高峰の風車演出の1つでしょう。何度も見返したくなる傑作。

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 監督:五十嵐卓哉 絵コンテ石平信司 演出:安斎剛文 作画監督:矢崎優子、長谷部敦志

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かわいくてキュンキュンするハルヒから「ジャングルプールSOS」。かわいくてかわいくてしょうがないハルヒ水着回!といっても肝心のハルヒの水着姿は殆ど映りません。ハニー先輩のキュンキュンな(演出による)かわいさが何んともキュートかつあくどい(笑)そんなハニー先輩が失踪してしまい捜索するモリ先輩。2人のなんとも通じ合った気持ちが心地よいですね。ラストのハニー先輩の本気の姿にいちころ。ふっ視線を落として黒さが立ち上がってくる感じたなんともいいですね。ハニー先輩系であれば18話の「チカ君のハニー打倒宣言」の伝説的な強さと宇宙人的な食欲にはビビりますし、12話「ハニー先輩の甘くない三日間」での甘いモノ封印エピソードも超かわいいですね。ハルヒウテナのような背景っぽさや、空間設計がキマりまくっている。テロップの出し方から何から何まで見てて楽しい。

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 監督:幾原邦彦 脚本: 幾原邦彦伊神貴世、金子伸吾、古川知宏 絵コンテ幾原邦彦、金子伸吾、古川知宏 演出:金子伸吾 作画監督:いしかわともみ、加々美高浩

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最後は2011年もっとも好きなアニメピングドラム』から。『ウテナ』から14年の年月が経ったなかでの幾原作品ということで期待もされていましたね。選びたいエピソードはいくらでもあるんですが、もう泣き系エピソードを見るのは心身ともに生きていけないくらいのダメージを追うので、方向性変えてイカレちまったエピソードを選ぼうということで「死なない男」。

真砂子が祖父を殺す夢を見る。そんな夢から覚め起きてみると外で祖父が竹刀をふるっている。まるでゾンビのように蘇る祖父。幼少時代の真砂子のトラウマを何度も反復させることで奇妙な物語に見せています。エンディングのトリプルH『イカレちまったぜ!!』*1に至るまで緊張感にあふれた名エピソード。特にマリオがフグ刺しを食べようとしたところに真砂子が突き飛ばして池に突き刺さっているロングショットのシュールさ(笑)

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ウテナ』は個人的に10選をやったので外しましたが、これで幾原監督に加え橋本カツヨ五十嵐卓哉錦織博榎戸洋司ウテナ勢を入れられたので僕は満足です(笑)いやしかしベタだなベタ。

白鯨伝説 COMPLETE Blu-ray BOX

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*1ARBのカバーで1981年の『指を鳴らせ!/Snap Your Fingers』に収録されています。

2016-08-29

起源をめぐる冒険/トム・ムーア『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』感想

アイルランドの監督が地元の民話ベースに東映アニメオマージュを捧げながら傑作を作り上げた。いやはや恐れ入ったとはこのことだろうか。どうも『わんぱく王子の大蛇退治』のキャラクターデザインを意識しているようだが、それだけではなく東映アニメのように神話を物語のベースに置き、「漫画映画」を意識させるような作品設定がなされている。画面設計もきわめてシンプルに2D、しかも紙芝居的な平たい絵が特徴的だ。技法そのものは今まであったものの活用であろうが、「神話(民話)」の物語を引き立てるために、まるで絵本の世界に入り込んだような水彩画的な背景。平たい画面ながら青(海)のイメージを基調に、そこには幻想的な世界が広がっている。

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『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』ではキャラクターデザイン東映アニメベースにしながらも、頭を大きく描き等身を下げてより子供にも受け入れやすいような可愛いデザインにしている。オマージュを捧げながらも現代人に「古い」と思わせない配慮がなされている。*1シンプルなスタイルながら、それだけに物語の没入しやすく、滑らかなアニメーションに注力してみていられる。線が動きすべてが繋がっているような表現方法。決して派手さはないが、丁寧かつ表現豊かな作品だ。

また「神話(民話)」を意識させるよう「円環」のモチーフが繰り返し描写される。丸い顔のキャラクター、シアーシャ吹く貝の笛、光の粒、泉、泡、月、蜘蛛の巣、窓…と、全部あげたらどのくらいのモチーフが隠されているのかわからなくなるくらい多数描かれている。円環のモチーフはいわば「神話」の持つ永遠性といえる。「アザラシの伝説」が母から子へ言い伝えられるよう、人が存在する限り語り継がれる。また永遠性といったモチーフは「線の動き」とも言い換えられないだろうか。フクロウの魔法の力を借りてク―(犬)が全速力で家に戻るとき、まるで絵がひとつの線のように繋がりながら躍動している。

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」トム・ムーア監督インタビュー 前編 民話を身近な存在として現代に甦らせたい | アニメ!アニメ!

監督のインタビューによるとあの動きはコンピュータ上で動かしているようで、水彩・背景は「手描き」によるもの。線はまた「髪の毛」とも言い換えられ、シアーシャがフクロウに連れ去れ、助けに行く途中で出会う髪の毛の長い老人(妖精)。「髪の毛は命だ。髪の毛が切れていないうちは生きている」というように、いわば起源である命をめぐる冒険なのだ。

この「線の動き」は同じく今年公開された『父を探して』にもいえる。線がどこまでも続いていき、主人公が父を求めて世界をめぐり、綿花を摘む仕事、工場の仕事、人間から機械によるオートメーションへ。そして軍事政権…とまるで人類史を表現しているかのような物語。そういった社会を見ながらも最後には起源へ帰っていく。いわばアニメーションの起源をたどりながら世界の起源も同時にたどっていくような物語だった。『ソング・オブ・シー 海のうた』のキャラクターの動きも灯台から祖母の家、そしてまた灯台を目指すように起源にたどっていく。

2013年に公開した『かぐや姫の物語』でも「線の動き」をめいいっぱいに活用したのは偶然ではないだろう。こう考えていくと、高畑勲の心をつかんで離さなかった『やぶにらみの暴君』(1952)が海外の作品だったことから、海外から日本(東映アニメ)へ、そしてまた海外へめぐる起源をたどる物語のようだ。そんなことを思うくらい本作にはノスタルジーな気持ちにさせられてしまった。しかも単に東映アニメをそのままコピーするのではなく、コンピューターも駆使することで現代に蘇らせている。これは海外からの日本へのひとつの回答だ。「手描きアニメファンとしても素晴らしかったと声をあげていきたい。見た後にぐっと何か胸をつかんで離さない、行動を起こさなければならないと奮い立たせるような映画だった。

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*1:「古い」というのも個人の尺度なのであと時間が経てば新しいといった可能性はある。ファッションも何度も同じ流行が来るが、過去のものを現代スタイルに落とし込んでいる。

2016-08-27

赤い紐が繋ぎとめるもの/新海誠『君の名は。』 感想 ※ネタバレ含む

新海誠君の名は。を見た。見ている前提で感想を書いているので物語・演出のネタバレをしています。

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画面いっぱいに広大な空(雲)が映され、そこにひとつの赤い物体が線状に帯びて落ちてくる。まるで幻想風景のように美しいそのシーンは、遠くにいるある少年の目にも焼きつく。気が付けばシーンが変わり、どうやら山手線に乗っているようなショットが見受けられ、彼女は何かに気がつく。まるで扉が開く瞬間を待っていたように、カメラが扉が開いた瞬間を捉える。『君の名は。』ではこういった扉が「開く/閉じる」といったシーンを敷居の中央にカメラを置き、扉を「超える/超えない」といった境界を意識させるシーンが多数見られる。この超えるか/超えないか、の「選択」が物語をけん引していくのである。

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新海誠の新作は、彼のフィルモグラフィーである『星のこえ』や『雲のむこう、約束の場所』のようなSF的な要素をしっかりと引き継がれており、それに加えて大林宣彦の『転校生』や『時をかける少女』といった「男女の入れ替わり」、「タイムトラベル」といったお約束要素さえも踏襲していく。以下より気になったシーンを項目ごとに振り返っていきたい。

  • 写実的ではなく心象風景

物語としてみれば今までの新海誠作品と大差ないと思うかもしれない。彼の特徴である綺麗な風景描写もある。ただ、本作を見ていると写実的な美しさというよりも心象風景を目指しているんだなといっそうに思った。『秒速5センチメートル』で桜の花びらは秒速5センチメートルで落下していくといった台詞があるが、実際にやってみると5センチメートルよりも速く落下していく。別にそれがいい/悪いとは別の話として、『秒速』はあくまで青春映画で記憶の映画でもある。あくまで彼/彼女のイメージではそのようなスピードに見える。といった話なのである。新海誠はあくまでも超リアルな、写実的な、風景を活用しているのではなく彼の中の心象風景を映像にしているのではないか?と。

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君の名は。』確かに綺麗な風景も出てくるが、彼/彼女にとって印象的な風景と出会う瞬間は俯瞰ショットとして、彼/彼女も風景の一部として存在している。隕石が落ちる前と後の絶対に重なり合うことのない2人が入れ替わりお互いの風景を見ている。それ自体があり得ないこと。だけれども彼/彼女は確かに“そこにいる”といった事実を私たちに焼き付けるために、主観ショットを避けてキャラも風景の一部として描いているのではないだろうか。

これまでの新海誠作品としても広く受け入れやすいだろうなと思うような作品だったと思う。単にキャラクターが動いて気持ちがいいといったアニメーションを意識させるようなシーンがある。例えば三葉、克彦、早耶香といった3人が話しているシーンが前景として、背景に校庭・学校の風景が見えるが、そこではサッカーをしている生徒がアニメーションとして動いている姿が映されている。三葉が走るシーン(転ぶシーン)や瀧が走るシーンも気持ちよく、青春映画としての強度を保っている。それとアニメーションとしての運動イメージ以外にも、電車、自転車、車、バイク…といったように様々な乗り物を使って、その場所から“動くこと”が意識される。その彼/彼女が動くこと、選択することによって後半の作劇を盛り上げるのだ。

  • 赤と線状のイメージ

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三葉は神社の娘であり、いうなれば巫女である。彼女の家では代々「組紐」作りを続けている。彼女の祖母が三葉(入れ替わった瀧)にねじれは〜(略)「時間」だ。という話をするシーンがあるが、彼が飛騨へいくときつけている紐は3年前に三葉にもらった赤い組紐。つまり、彼が三葉として意識して出会っていないときも組紐は時間を超えて彼の手に渡ったということだ。隕石が落ちてくるシーンは実に幻想的だが、紐のように線状に落下が描かれている。瀧が三葉の口噛み酒を飲んで意識が飛ぶシーンで、彼が持つ組紐がまるで3年という時間をつなげるかのように隕石になりアニメーションで贅沢に見せる(この作画が本当にすごかった)。紐は解いていくと1本の糸になる。ベタに考えればこの組紐が赤なので「赤い糸」なのだろう。また流星が割れて大気圏に入ると、熱で星のかけらは“赤く”なる(隕石になる)。流星が割れる姿を「美しい」と表現しているように、隕石が落ちなければ彼/彼女は出会わなかった。皮肉にも聞こえそうな台詞を曲げずに「美しい」と表現とした点に覚悟が見られる。

  • ドアの開閉/線状を断ち切る

冒頭に扉が「開く/閉まる」ことで超えるか/超えないかの選択をしていると書いたが、特に彼/彼女の入れ替えがなくなるまでは必ず「開く」ショットをカメラが捉えている。これは2人がつながっている意味であり、逆に瀧が飛騨に行くときには、新幹線の扉が「閉まる」ショットをカメラが捉える。ここで瀧は事実を知るのでネガティブなイメージとしてこのショットがインサートされているのだ。おそらく開くのは9回か10回、閉まるのは2回のはずで、もうひとつの閉まるシーンは、三葉が滝を見つけて電車に乗り込んだシーン。三葉にとってはあまり良くなかった再会だったため、ここでもネガティブの「閉まる」イメージが使われたのだと思う。*1そのため、彼女は髪を切る(失恋)。髪は1本の線であり、この映画が何度も繰り返すつながるイメージをここでは印象的に断ち切る。もうひとつ断ち切るイメージがあり、それは三葉のへその緒を断ち切るシーン。彼女の亡くなった母親(二葉)とのつながりとして映像で示す。

  • 分岐点/踏襲

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この映画では「選択」によって時を超え救えるかもしれない希望を描いている。流星が割れて隕石が“いくつか”落ちていくように、“いくつか”の分岐点が可能性として存在する。瀧が最後に彼女の身体に入るシーン。祖母には一瞬でバレてしまう。*2祖母もまた少女のころ誰かと入れ替わったことがあり、それは三葉以外にも誰にでも存在することである、といったくだり。ここで歴代祖先たちの写真が映される。『魔法少女まどか☆マギカ』で世界中の魔法少女が運命と戦って朽ち果てていく姿が描かれていたが、同じように写真の彼女らにも瀧/三葉と同じような出来事があったのである(瀧の発言)。その忘れたくない記憶を忘れてしまっただけなのである。つまり、たくさんの可能性の果てに彼/彼女は存在する。*3

瀧と三葉が東京で再開するシーン。初めに彼女が見つけ、次に彼が見つける。列車は分岐点を過ぎ断絶するかのように列車が真ん中を走る。そこから、彼/彼女が町中を走る。ここでも何度かの分岐点(交差点)が存在し、それを前に臆せず走って探すのである。そしてすれ違いそうになり思い切って振り返るシーン「君の名前は」と響き渡る声。『秒速5センチメートル』でもラストシーンで「すれ違う」ことが扱われているが、今回では完全に振り切ったように見える。『秒速』も最後に笑顔が見えるのでハッピーエンドとして成立していると思うが、今回こんなに優しく終わったのは意外だった。

  • 最後に

正直に言うと新海誠作品は『星を追う子供』以外、独りよがりが強すぎるせいでどうも苦手だった。それなのに『君の名は。』を見ていて三葉に消えないでほしい。最後2人に再開してほしいと心の底から思っている自分がいた。俯瞰的な映像設計がされていると思うし、強引な共感もなかったと思うんだが、ここまで感情移入してしまうとは…と、恐るべき作家になったなという印象。ただ音楽は少しクドいと思うんですけどね、もう少し映像を信じてもいいんじゃないだろうか。さて、見ていて思い出した歌詞がある。

素顔のままで生きて行ければきっと 瞳に映る夜は輝く夢だけ残して 朝を迎える孤独を忘れて 赤い手首を抱きしめて泣いた夜を終わらせて」
‐中略‐
「苦しくて心を飾った今も あなたを忘れられなくて」

そうX JAPANの『Rusty Nail』である。映画を見ているときにどうもシンパシーを感じて家に帰ってから再生してみたのだが、『君の名は。』は、状況としては全く逆の『Rusty Nail』じゃないか!といった驚きがあった。

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「赤い手首」は「赤い組紐」でしょうし、瞳に映る夜はあの流星群であり、輝く夢はそのまま彼/彼女の状況下におかれる。また「〜流れる時代に抱かれても 胸に突き刺さる〜」といった歌詞もあるように、何年たってもモヤモヤする気持ちだ。「あなたを忘れられなくて」ではなく、「あなたは誰?忘れてしまいたくない気持ち」に言い換えられる。実は新海誠さんV系の素質をお持ちでは…。(しかしこの画像見ると泣けてくる)

余計な妄想が過ぎましたが、最後に声優について。上白石萌音さんの三葉は本当に素晴らしかった。演技をしているというよりも、本当にこのキャラがこの世界に存在していると思わせるような素朴で綺麗で優しい声。何よりその人を意識しないで、三葉という存在を意識させてくれました。既に2回見てしまいましたが、少なくてもあと1回は見に行くでしょう。素晴らしい映画だと思います。

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劇場アニメーション『星を追う子ども』 [Blu-ray]

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ほしのこえ

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RUSTY NAIL

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*1:超えるイメージでは冒頭の「喫茶店」の前の線路を超える、田んぼを超える、ご神体での此岸と彼岸(『星を追う子ども』を想起した)…なども。

*2:ここでは新幹線の「閉まる」とは逆に「開く」を意識されており、部屋の引きとがすべて開かれており、奥の部屋から彼女らをとらえて「開かれている」ように見せている。ポジティブなニュアンスが伝わるシーンだ。

*3:瀧が腕に組紐を巻いているのを見ると“ねじれる”まるで「メビウスの輪」のような出口のない円環を意識しているよう。

2016-08-23

今更見た『プリパラ』1stシーズンの覚書

前々から見よう見ようと後回しにしてきて気づいたら100話超えていたプリパラ重い腰を上げて見たんだが、これが全話捨て回がなくメチャクチャ面白いという奇跡的なアニメだった。一気に1stシーズンを見終えたので簡単に感想を残しておこうと思う。

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プリパラ』は、プリチケが届いた子供は誰でもアイドルになれるプリパラタウンへ入れることができ、その中でアイドル活動をして「いいね」をたくさんもらいアイドルランクを上げて「神アイドル」を目指すといった内容だ。まず、「誰でも」という部分をしっかりと記憶していきたい。しかし主人公である真中らぁらの小学校では校長先生の方針で小学生のプリチケは禁止とされていて、校長先生がプリチケが届いた生徒からプリチケを奪うことに躍起になっている。そう、この学校の生徒はプリチケを入手する喜びとともに、プリチケを「失う」ことの恐怖におびえながら生活しているのだ。

第1話の冒頭らぁらが大声で大騒ぎをする。お母さんからも大声を指摘される。彼女にとって自分の大きな声はコンプレックスとなっており、音楽の授業中でもわざと小さな声で歌っていたと彼女から聞かされる。そしてある日プリチケの入ったファイルを広い、持ち主のためにプリパラタウンまで届けにいくことになる。全生徒が「失う」といった恐怖にかられるなかで彼女は幸運にも「拾う」ことができる存在であり、プリパラに入る寸前にプリチケがまるで運命のように彼女のもとに届く。あれよあれよという間に南みれぃの口車に乗ってしまい「かしこま!」という声とともに彼女はステージに立つのである。そしてステージでらぁらは大声で歌うことで自らのコンプレックスも克服することができる。

主人公として当然のように奇跡的な出会いを果たすらぁらは正真正銘のアイドルといっても過言ではないのだろう。底抜けに明るく他人を思いやるらぁらはその後も仲間を増やしていく。特に感心したのが、「誰でも」アイドルになれるといったこと。とくにクライマックスの物語36話‐37話で特にそのことを感じられた。1期の途中でらぁらが出会うファルルとの一連の物語。彼女はみんなの想いが作り出したアイドルであり、他のアイドルたちのモノマネをすることでアイドルランクを上げていく。しかもプリズムボイスをいつでも出せる。彼女が「想い」の存在であることは彼女の持つロボットの玩具を見ても明らかなように、もとは空っぽの存在であった。その空っぽの彼女がらぁらやアイドルたちに会うことで吸収していく。そんな彼女が初めてらぁらと友達になりたいと自覚することで彼女は機能を停止してしまう。

めが兄ぃが眼鏡をプロジェクターとして映像を投影させるシーンには笑ってしまったが、あれもファルルがみんなの「想い」が投影された存在と思うと面白い演出だと思う。そしてファルルのカムバックライヴ。らぁらたちの歌声だけではファルルは復活しない。“みんな”の歌声が必要なのだと。そして「誰でも」プリズムボイスが(想いによって)出せるようになり、みんながキラキラと光り輝く。いわば誰でも「特別」な存在になれると。*1

ものすごく練りこまれた脚本であると思うし、それらを円滑に説明して見せる演出がさえわたったアニメだと思う。そのほかにもまるで狂ったような演出に舌を巻き、「かしこま!」に完全にヤラれてしまった。「かしこま!」はその場の瞬間ではあるのだが、止めるような働き(効果)があると思う。写真を撮るときの掛け声やポーズとしての役割が正確かもしれない。つまり、その瞬間をとどめること。これはアイドルとしての性分じゃないだろうか。いわばアイドルは永遠には活動できない存在であり、その永遠性のためにポーズを決め、まるで写真のようにその瞬間を「記録=記憶」する。

これから2ndシーズンに入り残り70話程度さらっと見てしまいそうな気がします。それくらいに面白い。さらっと書きましたが今度は主軸の物語のみならず挿話にも注力してガッツリ見てまとて感想あげられればいいなと思っていたり。

*1:男でもチケットが届く設定になっているが、目立つのは1人(しかも女の子のような)だけなので、本当に「誰でも」といったことには言い難いのかもしれない。初めから選別されているのかも。

2016-08-22

小澤雅人 『月光』を見た(感想)

シネマスコーレにて小澤雅人『月光を見た。

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月光には何か不思議な魔力でもあると云うの?」
「伽噺じゃあるまいし。月は太陽の光を反射しているだけさ。だからね、太陽の光は動物や植物に命を与えてくれるけれども、月の光は一度死んだ光だから、生き物には何も与えちゃあくれないのさ」
京極夏彦‐『魍魎の匣』P.18)

強姦されそうになる女性が何とか逃れようとして、湖に反射した満月に手を伸ばそうとする。しかしどうしても逃れられない。それはまるで呪いのように彼女にまとわりつく。この映画は「性暴力被害」をテーマとした映画であり、こうした性暴力シーンをいくつも私たちに突き付けてくる。まるで悲痛の叫びのように。映画のオープニング、不意にシャッター音とフラッシュによって“迫られる”女性がアップで映される。次に切り返しによってどうやら写真館で何かのモデルをしている様子だとわかる。この「撮影者(迫る)‐モデル(迫られる)」の関係性は、同時に似たようなショットで「迫る男‐迫られる女」といった別のシーンが混入されることでいっそうに“迫られる”ということを強く意識させる。

その「迫られる女性=主人公(佐藤乃莉)」は個人ピアノ教室の先生をしているようでオープニングの「迫られる」シーンのあと生徒らしき子供の演奏を見ている。しかしこのシーン以後しばらくは、外からの光が印象的おさめられており人物の顔がなかなかおぼつかない。どうも認識できないように画面設計されているようなのである。確かに月光は綺麗かもしれないが、太陽のようにハッキリと照らすわけではなく、所詮は「一度死んだ光」であるため、ボンヤリとした光しか与えてくれない。だから「顔」がハッキリとは認識できない。この「認識できない」といった感覚は、なかなか私たちの前に情報として姿を見せない「性暴力被害」といったこの映画のテーマにもつながると考えられる。

また「性暴力被害」つまり既に起こってしまったこと(事実)として、この映画ではトラウマ(回想)を有効活用している。そのトラウマを呼び起こす装置は「音楽」である。佐藤乃莉は裕福な生活をしているとはいえない。ピアノ教室の先生といった仕事で何とか生活している。また彼女の実家もどうやら裕福な家庭ではなかったようで、実にお金がなく子供のころ親戚のおじさんの家に預けられた経験があり、そこでどうやら「性暴力」を受けた過去があった。終盤で彼女が母親に子供のころ虐待されていたと告白するシーンがあるが、当時いわなかったのは、母親に迎えに来てもらいたかったからおじさんの言うことを守り「いい子」であったようだ。そう彼女は子供のころから、誰かの許しがなければ先には進めなかった。また学生時代に先生(失念 ※何度も出てくる男性)と不倫状態だったようで彼女はそのころについて「俺の“言うとおり”にすればよかったと言っていた」と怒りをぶつけるシーンがある。とにかく彼女は誰かの許しがなければ行動できない存在だった。

それを強めるのはまた彼女の教え子の少女もそうである。家庭内暴力、性的虐待…を受ける彼女は常に誰かに何か許しを得なければ行動できない(佐藤乃莉にトイレに行っていいか聞く…等)。その少女の姿をおそらく自分=トラウマ(佐藤乃莉の子供のころ)と重ねているのだろう。彼女らの共通することとしてシートベルトが外せないといった動作がある。これも「迫られる」ことによって彼女たちの動きが制御されてしまっていることを意味している。タクシーで彼女がシートベルトを認識したとき発狂するのもそういった理由だろうか。あくまでこの映画が見せる佐藤乃莉への性暴力は既に起こってしまったこととして提示されている。だから彼女は逃げられない。精神的にも逃れられないが、強姦した男が行為をビデオに収めることで物理的にも行動ができなくなっている。

この映画のラストシーンで彼女は少女とある取引をすることになる。彼女は少女のほしがっていたヒールを、少女はビデオ(や写真)を渡す。彼女はヒールからスニーカーに履き替えたように大人から少女へ、少女はヒールを手に入れることで大人(束縛されない者)への転身を図る。月光が太陽光の反射(複製)であるならば、ビデオもまた複製として彼女の束縛(トラウマ)を解くキーとしての意味が込められている。湖に映る満月もさらに反射した光である。そして彼女は母親に認められることで「救い」を得られるといった真っ当な終わり方を見せる。

「音楽」
トラウマを呼び起こす装置としての「音楽」はそこらじゅうで鳴っている。等間隔でリズムを示すメトロノームトンネルで響くヒールの足音、電話のコール音…。彼女の生活圏におけるすべての環境音がトラウマを呼び起こす装置となる。また彼女は音楽をイヤホンで聞くシーンがある。病院でのシーンではまるで「夢」のように自信をもって堂々と病室まで一直線に歩いていく。おそらく彼女が描く像のようなものを表現(特に帽子)しているのだろうと思うのだが、タクシーでトラウマを見たときにも同じようにロックがかけられる。ただここは、どうも音楽を心理につなげすぎていて若干くどいように感じられた。病院のシーンも一瞬ハッとしなくもないが、どうも感情の起伏に順応する音をつける演出は好みではない。

長文になってしまったが最後に。テーマとしては重いものを取り扱っているが、どうもあまり肌に合わないというか、111分が長いように感じられた(テーマが苦手だとかではなく映画として)。未見だが前作『風切羽〜かざきりば〜』も児童虐待がテーマとされているようで作風は今後も変わらないだろうな、と思う。確かに主題を画面で演出するといったことが常になされていいるが、どうも音楽の扱い方がちょっと苦手だったような気がしてノレなかったのが正直なところだ。ただけして悪い映画ではないし今後も意欲的に作品を撮っていく監督だろうと思う。

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文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

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