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2016-05-07

『ザ・デクライン III』と『ぼくら、20世紀の子供たち』のフィクション性

先日、長らくソフト化されていなかったロサンゼルスの音楽シーンを捉えたドキュメンタリー映画『ザ・デクライン』(1981)と、『ザ・デクライン III』を見ることができた。『ザ・デクライン』はBLACK FLAGを代表とし1979-1980のバンドたちの活動をライヴやインタビューを記録した映画である。ほぼライヴ映像の記録となっており、パンクかじりたてのファンたちやマニアックなファンまで、広く楽しめる内容が収録されている。それに対し『ザ・デクライン III』は、『ザ・メタルイヤーズ』(1988)※タイミングが合わず見れず のあとに再びパンク視線を向け撮影されたドキュメンタリーであるが、そこで描かれているのは『ザ・デクライン』とは全くの別物だ。

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『ザ・デクライン III』では活動しているバンドにはほとんど目を向けておらず、かわりに『ガターパンクス』と呼ばれる路上生活をする若者を追ったドキュメンタリーになっている。『ザ・デクライン』で描かれたロサンゼルスパンクシーンの”初期衝動”とは違い、タイトル通り(=デクライン)文化の退廃を感じさせるような内容が記録されている。彼らは(以下,彼ら=彼女ら)、小さい頃に親に虐待されてきた人たちばかりであり、虐待から逃げるために無一文で路上生活を選択した者たちだ。もちろん彼らにはお金はないし寝床もない。日々、空き家を転々として路上で持ち前のパンクファッションで観光客と写真を撮ったり、お金を強請ったりすることで生きている。そんな生活を送りながらも、ライヴ会場には足を運び(受付を突破するらしい)、毎日朝からビールを飲みながらパンクを聴いている。

本作の役割はそんな彼らの生活(現実)を記録すること。そして全世界にこういった現状を伝えることであろう。親から虐待され、その場から逃避することで路上生活を余儀なくされているが、彼らを見る社会の目は厳しい。彼らが物乞いしているシーンを客観的に撮影されるが、ほとんどの人からは無視されていることがわかるだろう。彼らは「外見で見られる」ことに対して嫌なようなことをインタビューで答えているが、それは仕方がないように思える。それは本来の動物としての外敵(危険)から身を守る本能だからだ。ただ本作はカメラと対象者の距離感がいい塩梅となっており、少しながらも彼らが可哀想に見えてこなくもない。また”ネオナチ”の存在がある。彼らはパンクス(マイノリティー)を毛嫌いしており、暴行を加え喧嘩沙汰が絶えないようだ。そういったパンクスに対する世評や、アンダーグラウンド界での情勢を見ることで感情移入してしまうのである。それこそがこの映画の狙いであり、ラストではこういった子供たちを支援していると映画で訴えているだ。

一方で見ていて感じたのが、この映画はロシアの映画監督ヴィターリー・カネフスキー『ぼくら、20世紀の子供たち』(1993)パンクス版ではないか?といったことだ。ヴィタリー・カネフスキー『動くな、死ね、甦れ!』(1990)『ひとりで生きる』(1992)で、ベルリンの壁崩壊後のロシアにてひとりの少年を撮り続けた。『ぼくら、20世紀の子供たち』では本作のようにドキュメンタリーでベルリン崩壊後に街に溢れるストリートチルドレンの生活を追っている。子供たちにインタビューを行うが、ほとんどが街中であったり、刑務所の中であったりと安定した場所でのインタビューがされていない。しかしそれがストリートチルドレンの現実(場として)であり、そこに真実性が見えてくるのだ。彼らは子供なのに強盗や、人殺し…といった罪で服役しており、ソ連崩壊後のロシアの情勢が悲痛なほど伝わってくる。

ぼくら、20世紀の子供たち [DVD]

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物語的な部分以外にもドキュメンタリー映画のフィクション性としてこの映画の終盤は似ていると感じる。『ザ・デクライン III』では、本作の撮影から数ヶ月後のシーンに移り火事になった家が映される。そこでは本作のインタビューを受けていたガター・パンクスのひとりが火事でなくなってしまったエピソードが語られる。約80分間こういったガター・パンクスの生活を見てきたわれわれは、映画の物語に適用する(=慣れる)ことで劇映画(フィクション)のように映画を楽しんでいた。しかし、カメラの前でインタビューを先ほどまで受けていたパンクスが火事で亡くなったと衝撃的な現実を突きつけられることになる。そこで『ぼくら、21世紀の子供たち』のラストについて触れていきたい。

『ぼくら、20世紀の子供たち』の刑務所のシーンで観客は驚くべき事実を知ることになる。カネフスキーの前作と前々作(『動くな、死ね、甦れ!』『ひとりで生きる』)に主人公役(ワレルカ)として出演しているバーヴェル・ナザーロフが刑務所に服役しているのだ。「盗んだ車は2桁?1桁?」と聞かれて「3桁かもな」と冗談混じり答える彼の姿を見ているとフィクションでは捉えられないような感覚がある。そして同じく2作品に出演していたディナーラ・ドルカーロワが面会にやってくる。ふたりは抱き合い再会を果たすことになるが、ここで『ザ・デクライン III』と同じような感覚に陥っていることがわかる。ドキュメンタリー映画という体制を取りながらも、観客の映画への”適用(慣れ)”によって劇映画(フィクション)のように映画を見ていること。そこで実際に俳優が刑務所に服役しているといった事実をつきつけることで「これはドキュメンタリーなんだ」といった感覚が再び戻ってくる。そこで突きつけられる現実に無力でしかない私たち。そのような残酷さがこの映画にはあるのだ。『ザ・デクライン III』と『ぼくら、20世紀の子供たち』を見ていると、映画のフィクションとドキュメンタリーというものの垣根というものは案外低いものなのではないかと思い知らされるだろう。

2016-05-03

最近見た新作映画 春ーGW

さてさて暑くなってきましたゴールデンウィークまっさかり。GWといっても映画を見てアニメを見てライヴを見てって生活は変わらないわけですがね。そういえばCCさくらの中学編なるものが始まるらしいですね。これは歴史的事件ですよ。とか話題をそらしながら本題へ。長文書いていない新作映画の感想です。

◼『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』ザック・スナイダー

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ザック・スナイダーとの相性は途方にくれるぐらい悪いのですが、彼の作品のなかでも一番嫌いになれない映画かもしれない。ただ、見終わっても果てしてこれがなんだったのかよくわからない。あの絵画が示唆的ですが、上昇下降の無数のイメージが洪水となりカットがバラバラになり編集が編集になっていないめちゃくちゃ。肉弾戦見る限り”マンガ”を忠実に目指しているんだろうか。

◼『いいにおいのする映画』酒井麻衣

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これは「Vampillia」がやってなきゃ絶対見てなかったんですが、なかなかかわゆい(金子理江が)映画でしたよ。突飛な編集に加えてvampilliaなので、結局vampilliaに帰還する。ぶっちゃけvampilliaが関わってなきゃ成立しない。

◼『マジカル・ガール』カルロス・ベルムト

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いまのところ今年のワーストでしょう。”省略”でいっけん雰囲気が出ているような気もしないでもないが、省略が物語展開にしか効いてきていないのが残念でならない。やたら『まどマギ』が引き合いに出せれますが、そっちじゃなくて『ゆゆゆ』でしょうに。論理だけで外に踏み出そうとしない映画。少女は走るもんなんだよ。

◼『父を探して』アレ・アブレウ

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そんなに好きじゃないんだけど、これはすごい映画だ。奥行きを排除したように見えるが、「物語」が繋がっているようにアニメーションもどこまでも繋がる。人類史アニメーション史をクロスオーヴァーさせる手法に脱帽した。

◼『ロブスター』ヨルゴス・ランティモス

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今年のベスト級!ひたすら人を信用してないところに胸を打たれる。他社とは必ずしも分かり合えない。交わることのできないもどかしさ。ひたすら”孤独”を描き、最後の最後まで突き放す姿勢に惚れ惚れする。(レア・セドゥの不機嫌そうな顔!)雰囲気こそ違うか昨年のベストワン『サンローラン』のように”痛み”と”孤独”を描いた傑作。世界を信じない態度が映画を作る(適当)最後に一言。背を泳ぎをしているこの横乳(そこに出現するホクロ)を抑える天才ですよ!

◼『ボーダーラインドゥニ・ヴィルヌーヴ

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対戦成績が非常に悪いヴィルヌーヴだったが、案外悪くなかった。昨年似たようなドキュメンタリー映画を見たような気がするが、今最も(2番目だったか?)治安が悪いとされるメキシコの麻薬カルテル撲滅を目指す特別部隊の映画。エミリーブラントのやさぐれ感が妙にエロッちくてよかったよ!

◼『劇場版 響け!ユーフォニアム石原立也

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昨年ヒットした『響け!』の編集版。テレビ版だと「無意識に口走ってしまう」癖がある久美子が、「意識して言える(楽器の上達”吹く”にかかる)」ようになるってことをやってるんだけど、映画版だとちょっとそんな風に見えないというか、より久美子と麗奈の関係にフォーカスされたような印象を受ける。序盤(サンフェスまで)は編集がかなりされていて妙なリズム感があり、逆にそれ以降はゆったりとした贅沢な時間配分だった。

◼『アイアムアヒーロー佐藤信介

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冒頭の日常から徐々に壊れ始めパニックになる瞬間までがめちゃくちゃうまい。本当に小さい波紋(テレビのニュース)から大きい波紋(飛行機がバンバン飛ぶ)へ虚構に落ちていく流れ。そして”煙”で爆発し疾走が始まる。ありえないことが起きる”意外性”が突飛な演出(落ちる、引かれる)によって表現されエモーション(タクシー大回転)に繋がる。ここまでは完璧。だけど、森のシーンはかったるいし場を使いきれていない。それとアウトレットに移ってからかなり顔映画(バストショット、アップ)になってしまい残念。地下のゾンビパニックも残念(見づらい)につきるが、あれだけ屍体を積み重ねたことには感銘を受ける。ラストは屍体だらけの世界が映ればいいなと思ったが、妄想落ちってのも可能性としてあるのかな?それと有村架純かわゆい(コスプレ感ありまくりだけど)。

◼『ズートピア』リッチ・ムーア

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アニメーションとしては天下一品申し分ないけど、多様性についてウダウダ語っているように見えて対峙するリスクなんて見ようとしていていない。よくできているけど「行儀がいい」映画。いっそのこと謎解きに専念したほうがよかった。

◼『ちはやふる 下の句』小泉徳宏

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『上の句』もそうだったんだけど、被写界深度がめちゃくちゃ浅く、画面が白飛び寸前で本当に見づらい画面が続く。特に昼間のシーンが多いので中盤まで酷すぎて…。それと『上の句』の練習シーンのような編集の繋ぎのような面白い要素が減退。ただ、クイーン(松岡茉優)の圧倒的存在感。それだけで最後まで見れた。一貫して”記憶”の映画ですね。

◼『テラフォーマーズ三池崇史

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糞汁だらだら映画!悪くないんだけど、ドラマがかったるい(笑)いっそのこと原作ぶっ壊してアクションのみにしてもっとグチャグチャにして欲しかった。

◼『光りの墓』アピチャッポン・ウィーラセタクン

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水車を捉えたショットが印象的(輪廻)なんだけど、そこから引いて水車を見る人をおさめる。人が人生について見守る映画なんだなーと。地球の歴史からするとあまりにもちっぽけな人間の歴史はフィックスで撮影(運動の不在=人類は地球史からすると動いていない短い歴史)される。ただ、”眠り”があるように、少なからずとも人類は動いているので最後にカメラは動く(これが気持ちがいい)。タイの独特の色彩が綺麗に撮影された。とても居心地のいい映画でした。

◼『追憶の森』ガス・ヴァン・サント

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あの三部作(『エレファント』『ジェリー』『ラストデイズ』)が”死”に対して重きを置いていたけれど、この映画は真逆に”生”に執着というか呪われている。急に落ちたり、流れたり、ナオミワッツだったり(笑)、妙に物語が加速するシークエンスが物語っているように見えるが、マコノヒーはこの世に頑として囚われる。ベッタベタでたいへん日本的な感動映画に仕上がっているように思える(樹海だし)が、日本の描写はかなり適当。いやーナオミワッツには唖然だったなー。

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2016-04-24

松田龍平がモヒカンにした理由『モヒカン故郷に帰る』(感想)

「世の中全ての事象に意味があるとは思わないほうがいい」殺人犯が逮捕されたときに犯人の身辺を洗い出し犯人像をマスコミは勝手に予想する。犯人はただむしゃくしゃしていたから人を殺したかもしれないし、偶然殺してしまったかもしれない。ただ人間は何も理由がないのに人を殺してしまった理由がないことに不安になる。だから理由を無理やりにでも作る必要があるのだろう。ただ劇映画(フィクション)ではどうだろうか?例えば、撮影して後で見直してみると妙なものがカメラに映り込んでいたり、実際に公開されてから何か気づくといったことはないだろうか。それは偶然に過ぎないが、基本的に劇映画では自覚的に演出をする。それは物語を象徴するようなものが多いだろう。大体は理由があるものである。

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さて沖田修一のモヒカン故郷に帰るであるが、タイトルは木下恵介の『カルメン故郷に帰る』をそのまま頂戴しているのは言うまでもない。主演の松田龍平デスメタルバンドのボーカルで、CDはリリースしているもののどうやらメンバーのたちは今後の活動について悩んでいるようだ。この松田龍平の役所に意見のようなものは殆どなくメンバーの意見に流されている。また彼女である前田敦子は妊娠しているようで、何年も帰っていない松田龍平の家に挨拶しに行かなければならないだろう?と、これも他人の意見に流されて挨拶しに行くことになる。

恐らくデスメタルやハードコアパンクの知識がない人から見ればここまでのシーン全く気にならないだろうと思う。むしろ、前田敦子の眉間にしわを寄せる寝顔芸に笑いを誘われ、和やかなムードで鑑賞できるはずだ。ただ僕はまずここで「ん?」と考え込んでしまった。それと同時に「この映画はもしかしたら◯◯◯◯が主題なのかもしれない。」と。まず何を思ったか?それは冒頭のライヴシーンである。当初映画を鑑賞する前にこの映画のビジュアルとトレーラーを見た際に「ハードコアパンクの兄ちゃんが田舎に帰る映画かー。」と思ったものである。それは”モヒカン”だったからである。音楽界のモヒカンファッションはパンク色が強い。わざわざ劇映画でモヒカンにするならパンクやろ?と思うのが普通だと考えられる。ただ、冒頭始まったライヴではデスメタルが演奏されていた。デスメタルは基本的にロン毛に黒いバンドT、そして軍物のパンツといったファッションが基本でパンクと比べるともっさりしているなと思うファッションが多い。そしてそのライヴの観客席を見てみると殆どがパンク好きそうなファッションをしている連中ばかり。

実際のところ、客層というものは対バン*1によってガラッと変わるので一概に音楽と客層があってないとはいいきれない。また、お客だって別にひとつのジャンルが好きなわけではなかろうし、別にそこを責める気もさながらない。バンドマンも数バンド掛け持ちであれば色々なファッションが入り混じるのは仕方がないことである。しかしながら、何度もいうがこれは劇映画(フィクション)である。このライヴシーンは表現として自覚的に作られた物と推測するのが当然だろう。ではなぜ松田龍平はモヒカンにしたのだろうか。もちろんファッションアイコンというよりか、映画で音楽を表現するにモヒカンはわかり易いたとえだろう。でもそうじゃない。冒頭のライヴシーンがそういったパンクファッションとメタルが交わる”チグハグ”さを表象しているように、この映画は”チグハグ”さを主題として物語が作られている。

映画を見ていればわかるだろうが、この映画からは運動的な魅力が削がれており、ギャグに映画の大半をかけている。死にそうな老人をギャグに使ったり、病院の屋上で入院中にもかかわらず対岸の屋上の吹奏楽のコーチをしてみたり、そういった笑いのみで物語を展開してみようとこの映画は試みる。そういった妙なチグハグ感が妙な感動やどこか暖かい気持ちにさせるのが目的なように。極め付けはラストの松田龍平前田敦子の結婚式。土砂降りで本土からシスターが式に出られない、そこで入院中の患者がシスター(本物らしい)が代わりに仲を取り持つ。もともと親父の願いで結婚式をすることになったが、結婚式中に「断末魔」を挙げて死ぬ。ここで流れるのは松田龍平デスメタルバンドの「断末魔」という曲。つまり、こういったチグハグさで生きる者としに行く者を対比させた作品なのである。だからデスメタルなのにモヒカンだった理由はこの”チグハグ”さを冒頭のライヴシーンで象徴するためだったのだ。なんともよく考えたなと思う。

しかし単純な感想として退屈だったのは否めない。そもそも画面から弾き出るものが表面的(台詞,ギャグ)なものとして狙っているのであれば全てフィックスによる撮影でいいのに、動かしたくてしょうがなかったのか途中でカメラを引いて役者を走らせたり、横移動を入れたりする。まあそれもチグハグしていたのかもしれないが…。

*1:よほどメジャーなバンドじゃない限り1バンドで箱を埋めるのは至難の技なので基本は数バンド集めてライヴをするのが普通

2016-04-20

祝!出崎統『劇場版 エースをねらえ!』『劇場版 あしたのジョー2』のBlu-ray再発!-アニメと映画の関係について-

廃盤になってからAmazonのマケプレやオークションでプレ値がついていた出崎統の『劇場版エースをねらえ!』(1979)と『劇場版 あしたのジョー2』(1981)が、Blu-rayで再発売されることが決定した。

出崎統監督の傑作劇場アニメ「エースをねらえ!」「あしたのジョー2」Blu-ray再発売決定 | アニメ!アニメ!

特に『エースをねらえ!』についてはレンタル店では殆ど置いていなく、VHSで限られた場所にひっそりと存在していた作品である。またセル版の『劇場版 エースをねらえ!』のBlu-rayにはDVDで収録されていた出崎統のオーディオコメンタリーが収録されていなかった。しかし、今回のBlu-rayはそちらも収録されているということでやっと完全版の『劇場版 エースをねらえ!』が発売されることになるのだ。

劇場版 エースをねらえ! [Blu-ray]

劇場版 エースをねらえ! [Blu-ray]

『劇場版 エースをねらえ!』は出崎全部盛りといった出崎演出の宝庫であり、アニメを映画にする方法が記録されている。かの押井守は、うる星やつら オンリー・ユー』(1983)アニメを映画にすることができずに悩んでいた時、本作を見ることであの伝説的アニメ映画うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)を生み出したといった話がある。90分間、手に汗をかくような演出の乱れ打ちをこれを期にぜひ味わってもらいたい。

自己満足的な『エースをねらえ!』の話はここまでとして、「アニメを映画にする方法」とはなんぞや?ということを幾つかの作品とともに考えてみたい。

押井守が気づいた「間」について
アニメファンならずも映画好きでもファンが多い押井守。学生時代は年間1000本見るシネフィルだったとかそんな情報もありますが、やはり映画へのこだわりは強い。

WEBアニメスタイル_特別企画

アニメで映画をつくること」旧WEBアニメスタイル押井守特集で書かれている。そこでは、いかに「間」(=時間)をつくること。例えば、とにかくカット割りが早くてインパクトなる画をガンガン見せていけば映画になるかというと違う。ここでいわれる「間」とは結果的に観客がそのアニメの世界に没入してしまう時間を指しているんじゃないだろうか。画面から伝わって来る雰囲気や音(音楽)をじっくり味あわせ、ありとあらゆることを思考させることで観客から時間を奪う。それがよくいわれる「ダレ場」の話。そして『エースをねらえ!』から着想を貰い『ビューティフル・ドリーマー』を完成させ、完全に自分のものにして生まれた傑作が機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993)だろう。

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]

押井守の映画のなかで『パトレイバー2』が一番好きで見るたびに「すごい」といった感想は出るが、どこか掴みどころのないというか、この映画を完全に理解するに何十年かかるんだろう…と、同時に途方もない気持ちになる。これは「ダレ場」の効果が発揮されているからだろうし、生み出された「虚構」にまんまと足を突っ込んだ結果である。

まあ、ただ押井守のいう「映画」だけが映画なのか?と言われると、劇場公開してしまえば映画っちゃあ映画だし、そんなことはないといった意見もあるだろう。

◼ゼロ年代以降のサービスてんこ盛りの劇場版
藤津亮太の著書『チャンネルはいつもアニメ「見せ尽くすことが招く〈映画〉の変質」の項では、『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(2010)涼宮ハルヒの消失』(2010)を元に近年の劇場版の変容について触れている。それまでのアニメが目指した映画は、おそらく「映画的」であることが一種のキーワードになっていて、TVよりも短い尺の劇場版ではいかに使用するエピソードを絞って作っていたが、いまでは上映時間を延ばしてでも見せ場をとことん見せる手法にシフトしてきている。

魔法少女リリカルなのは The MOVIE  1st<初回限定版> [Blu-ray]

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涼宮ハルヒの消失 限定版 [Blu-ray]

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確かに『リリカルなのは1st』では「劇中劇」設定ともいわれることがあり、TV版に比べとにかくド派手になっている。特に、なのはとフェイトの戦闘シーン「スターライトブレイカー」のくだりはアニメ映画史に刻まれる傑作シーンだったと思う。そう思うとTV版より派手にすることで「映画」としての価値を新たに見出したのだろうなとも思うし、何よりTV版では冷たく突き放したフェイトとプレシアのラストシーン。劇場版では「救い」を感じさせるシーンに改変していて何よりもサプライズだったと思う。

◼TV版に逃げず「映画」を目指した作品

劇場版 エスカフローネ [Blu-ray]

劇場版 エスカフローネ [Blu-ray]

天空のエスカフローネ』(1996)は『エヴァ』以降の作品の中でもファンが多く、坂本真綾デビュー作としても有名な作品だ。しかし劇場版のエスカフローネ』(2000)であまりいい評判を聞かない。それはおそらく、ひとみの感情がやたら唐突なこと、キャラが劇画タッチになっていることが挙げられると思う。ただ全26話のTV版を単に編集したものではなく、まったく新しい作品として90分程度の時間で納めたのは評価せざるを得ない。それと、ひとみがガイアから地球に戻るラストシーン。微妙にTV版とも変わっていて、引っ張らずさっといなくなりながらも余韻を残していく最高のシーンだ。あのような雰囲気を作り出すのはなかなかできるものではないと感じる。今でもたまに見返している好きな作品だ。

◼「OVA?いえ、劇場版です。」
近年だと『コートギアス 亡国のアキト』(2012-2016)など続々作品が増えているが、1話=60分程度の作品を数章にわけて映画館で上映するといった作品が数多く見られる。この手の作品で僕が好きなのは『劇場版 空の境界』(2007-2013)。もともと同人で書いていた奈須きのこ原作作品。伝奇小説から発せられる独特の”湿気”や、空虚感といったような作品のもつ雰囲気がめっぽう好きである。この辺りは京極夏彦の小説や昔よくV系を聞いていたので自分の趣味が露骨に出ているのだが、今作の中でも矛盾螺旋』(2008)は別格級に作品の出来がいい。『矛盾螺旋』は物語自体にギミックがあるので、『俯瞰風景』(2007)のように雰囲気で持って行くような作品ではなく、わかりやすい面白さがある。

見ていると世界は別に自分のためにあるわけではないんだという諦めと、それでも戦っていかねばならぬといった覚悟を背負った作品のように感じる。アクションをとっても、ラストシークエンスの式と荒耶の戦闘は本シリーズ内でも随一だろう。*1同シリーズであれば『痛覚残留』(2008)未来福音』(2013)も素晴らしい作品だ。

◼日本の初期アニメ映画
いまではオリジナル・アニメとして最初から「映画」に挑戦する作品よりも、TVシリーズから映画に進む経路のほうが多いだろう。ただ実際にはTVアニメがバンバン放送される前から映画としてアニメはあった。日本の劇場アニメ(長編漫画映画)としては白蛇伝』(1958)が最初と言われている。この辺りだと高畑勲の『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968)が有名だろうか。今回は空飛ぶゆうれい船』(1969)に触れていきたいと思う。

空飛ぶゆうれい船 [DVD]

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空飛ぶゆうれい船』は開始15分で主人公の家族が巨大ロボットに殺されるという不運に見舞われたり、悪のボスだと思っていたものが案外ただの使いぱしりだったりと、わずか60分間のランタイムの中で目まぐるしく物語が展開されていく。東映関連だとこの69年近辺では『長靴をはいた猫』(1969)『太陽の王子ホルスの大冒険』などが公開されていたが、その中でも社会風刺色が強い作品である。初めて鑑賞したときには低年齢層向けのアニメなのにここまでブラックなネタをぶちこむのか!と思ったものだが、実写でも本多猪四郎の『マタンゴ』(1963)とか相当ブラックな作品があった時代だしなと納得した。また海外アニメでも『やぶにらみの暴君』(1952)なんかは代表格だろうし、少なからず影響がなくはないのかなとも思う。また物語のラストでは『パシフィック・リム』に影響を与えただろうと思えるシーンがあり、この作品自身の影響力も強い。同じく池田宏が演出したどうぶつ宝島』(1971)も素晴らしい傑作である。

◼自覚的に映画を目指した傑作

近年の作品で映画ファンをも唸らせたたまこラブストーリー』(2014)。実際『たまこまーけっと』(2013)は見ていなかったけど『たまこラ』は見たひとたちや、『たまこラ』を見た後に『たまこま』を見たといったひともいた。高校生の甘酸っぱい青春ラブストーリーながら、「投げる」「落とす」「受ける」といった行為が大変効果的に扱われており、いわゆる運動論なんかで映画を見ているひとたちにも好評だった。またロングショットや望遠レンズを使ったショットも凝っており、近年の「劇場版アニメ」において最も自覚的に映画を目指した作品だったと言えるだろう。

自己満足で色々と書いてみたが、自分でも「映画」ってフォーマットに縛られて頭がコチコチになることがたまにあるので、ちょっと広い視野で俯瞰してみるとまた新たな発見があるかもしれませんね。とにかく祝!『エースをねらえ!』再発おめでとう!

チャンネルはいつもアニメ―ゼロ年代アニメ時評

チャンネルはいつもアニメ―ゼロ年代アニメ時評

勝つために戦え!〈監督篇〉

勝つために戦え!〈監督篇〉

作画汗まみれ (文春ジブリ文庫)

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*1:『痛覚残留』の浅上藤乃 戦も素晴らしい

2016-04-17

まさに”フリースタイル”な水樹奈々!/水樹奈々:NANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016 (GENESIS,FRONTIER) 東京ドーム 2DAYS レポ(セトリあり)

さて待ちに待った水樹奈々さんのNANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016』東京ドーム公演に参戦してきました。東京ドームでライヴに参戦したのは08年のX JAPAN復活以来なのでめちゃくちゃ楽しみだった。それに、もともと水樹奈々さんのライヴに行きたいと思うようになったのも、2011年の『NANA MIZUKI LIVE CASTLE』のBlu-rayを見てからだったので待ちに待った場所でした。前日、大阪で別のライヴを見ていたので着いたのは11時過ぎ。さすがにこの時間から物販はキツいかなーと思いきや、フォロワーさんと待ち合わせをしてゆっくりと向かったら1時間もかからず買えました。(ペンライトとマフラータオルget)おそらく前の週に事前物販をやっていたのと、本気組は朝から並んでるであろうからこんな結果だったんだろう。売り切れも2〜3個だったので支障はなかった。

そしてあまりにも物販が早く終わってしまったのでブラブラ時間潰して、いざ東京ドーム入場!1日目はアリーナA5の前列だったので過去最高の席だった。当日のセトリと簡単な感想は下記にて。

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NANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016 -GENESIS-

01.ETERNAL BLAZE
02.残光のガイア
03.suddenly~巡り合えて~
04.Never Let Go
05.Bring it on!
06.Exterminate
〜チェリボ〜
07.フリースタイル
08.エゴアイディール
09.What cheer?
10.deep sea
11.アンビバレンス
〜チームヨーダ
12.SUPER☆MAN
13.still in the groove
14.Take a shot
15.リプレイマシン-custom-
16.Glorious Break
17.Orchestral Fantasia
18.Love's Wonderland
19.Clutch!!
20.SUPER GENERATION
21.New Sensation
〜アンコール〜
22.BE READY!
23.Pray
24.innocent starter
〜ダブルアンコール〜
25.POWER GATE

いやあ、見事にセトリ予想外しまくりました(笑)。(水樹奈々:NANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016 - つぶやきの延長線上) 敗戦理由はセトリを考えるときに今回のテーマである「GALAXY(=宇宙)」を軽薄に考えていたこと。自分が考えたセトリは予想が難しいので好きな曲くればいいかな的なニュアンスで選んでるところがったので…。

この日について思ったのが「水樹奈々フリースタイル(=自由)だ!」ということと。まずメインテーマである「宇宙」に関してはおなじみのムービーによる物語が提供される。今回は「無限(?)の宇宙エネルギーを入手した人類がロボットを使い豊かな生活を送っていた。」だけれども「エネルギーを粗末に扱うことでエネルギーがなくなってしまい…」といったありがちなSFモノ。まあそれを救うのが水樹奈々なんだけど、オープニングのシリアスなムービーから、エタブレなんて誰が予想できただろうか。自分も周りの人も完全にズッコケそうになっていたよ(笑)。「開幕先頭打者満塁ホームラン」とか絶対起きなさそうなことを起こす水樹奈々恐れ入った。そしてなんとか乗り切ったオタクたちの前に、またしてもオレンジ色の光!『残光のガイアだ!(ここで完全に水樹奈々に翻弄される)。そして00年〜07年までの曲として無論聞きたかった『suddenly』に悶絶!

一旦MCを挟み新曲の『Never Let Go』へ。赤い照明が印象的で旗を持ったチームヨーダが兵隊のように動いていたのがかっこよかった。とてもいい雰囲気でしたね。そして中期水樹奈々を代表するロックナンバー『Bring it on!』初めて水樹奈々さんのライヴに参戦した2011年のUNIONぶりに聴けたので嬉しかった。そしてこのタイミングで『Exterminate』正直1日目はこないと思ったのだが、新アルバム単位として披露されたんだろうなー。新規ファンにも優しさが詰まっている。そしてチェリボの楽しい時間から、フリースタイルで「なに!?魔法少女だと??!!」これにはびっくり!2011年のときは気球に乗っていたけど、今回はホウキに乗って空を飛ぶ水樹奈々。足をばたつかせる奈々さんかわいかったなーーーー。たしかに『フリースタイル』には「空を飛ぼうね」とか歌詞あるんですけどね、これには心底びっくりしたよ。たしかに『まほプリ』やってるし旬だよね。(堀江さんだったら落下していたかと思うと…)そしてそこからしっとり系の曲だったけど、『deep sea』嬉しかったーー!こういった曲を東京ドームで聴けるってなかなか贅沢だと思うんですよね。そこからチームヨーダが始まり、新曲『SUPER☆MAN』なんとも宇宙なディスコソング(笑)セットとマッチしていてよかった。『still in the groove』〜『Take a shot』の流れからリプレイマシン』この辺り完璧!

そしてムービーがラストになり、やっぱりきた『Glorious Break』!ここでなんと7.7メートルのロボットに乗って水樹奈々が歌う。ちょっとスチームパンクっぽくて大友の作品に出てきそうでしたね(笑)あれいくらかかってるんだろう…。そして『オケファンラスボス的雰囲気が最高にかっこいいよな〜。『Love's Wonderland』も初めて聴けたしよかったが、新曲『Clutch!!』に関してはタオル曲でタオル振りたかった感が…。そこから僕の水樹奈々ベストソングのSUPER GENERATION!本編ラストは『New Sensation』!ここは本当いい流れだった。アンコール〜ダブアンに関してはそこまでレアな感じもせず、投票で一位だった『Pray』もそんなに好きではないのでアガらず…。

「次は水樹奈々宇宙で歌っているんじゃないかな」と思ってたんだけど、それが実現したんだと思う。まさにフリースタイルなライヴだった。一曲目の『エタブレ』から今日は何か違うぞ?!感が漂っていて、最後まで予想外なセトリになっていた。ただ私的な思いとしては、来てほしかったセトリがこなかったことと、新曲が案外多かったことに不満がなくもない。ただ、宇宙魔女っ子誕生にはヒックリ返ったし、総合的には悪くなかったかなー。

NANA MIZUKI LIVE GALAXY 2016 -FRONTIER-

01.禁断のレジスタンス
02.Synchrogazer
03.BRIGHT STREAM
04.Never Let Go
05.Trickster
06.Exterminate
〜チェリボ〜
07.COSMIC LOVE
08.エゴアイディール
09.Mr.Bunny!
10.少年
11.アンビバレンス
〜チームヨーダ
12.SUPER☆MAN
13.DISCOTHEQUE
14.恋の抑止力-type EXCITER-
15.FEARLESS HERO
16.Glorious Break
17.VIRGIN CODE
18.Love Brick
19.Clutch!!
20.POP MASTER
21.Astrogation
〜アンコール〜
22.Rock you baby!
23.天空カナリア
24.愛の星
〜ダブルアンコール〜
25.NEXT ARCADIA

さて、2日目。この日は4Fあたりからサイリウム海を見ながら雰囲気を味わうことに。会場の盛り上がり的には1日目よりもよかったんじゃないかなー。どちらかというと攻め曲重視になっていたような気がしますね。個人的には08-11年あたりの曲が来てくれると嬉しかったんですが、『クロスアンジュ』に始まり『なのはシリーズ』を経由して『シンフォギア』に落ち着くような比率か。まあしょうがないなといいつつTricksterには飛び上がりましたし、『COSMIC LOVE』も久々でよかった。『少年』のとき、後ろの中国の方が「oh!!!!yes!!!」って叫んでてここはいったいどこの国なんだ?と水樹奈々ファン層の広がりを感じれてよかった。『ちゅるぱや』〜『恋の抑止力』の流れは完璧で、犬日シリーズで一番好きな『FEARLESS HEROで多幸感で満たされる。POP MASTERは言わずもがな最高であり、『Astrogation』もかっこよかった。アンコールでくると思わなかった天空カナリア。そして愛の星

ここで発表されたのが「9.22 水樹奈々 甲子園ライヴ」決定のお知らせ。夏ツアーはなしでしょうねー。半年また見れないと思うと悲しいけど、奈々さん本当に泣きながら嬉しそうに発表を伝えていたのでこちらももらい泣き。そしてラストは『NEXT ARCADIA最後まで攻め曲の水樹奈々に満足で終焉。

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