清国の革命戦を実見した婦人 大倉組清国漢口支店員阿部又三郎氏夫人 阿部春子 △揚子江の対岸に銃声 私は清国漢口の租界地にをりましたが、最初変乱のことを聞きましたのは、十月十日の朝で、揚子江の対岸の武昌に騒動のあつた翌日でございました。しかし、私どもは、初めゐ普通の暴動ぐらゐに思つてをりましたのですが、その日の夕方から、日本人や支那人がドンドン川を渡つて、武昌から漢口へ逃げてまゐりました。十一日になると、武昌方面の空は一面の黒煙が渡つて、鉄砲の音が豆を焙るやうにズドンパチパチと響きます。 私は吃驚いたしまして、二階へ上つて武昌の方を見ますと、猛火は二ヶ所も三ヶ所も焔を上げて燃え上つてをります。 …