ミニマム、ミニチュアなどの略。
小型である、小さいことを示すための冠詞として用いられる。
英国BMCに始まり、現在はBMWのミニブランドで発売されている小型自動車。
大まかには1959年から2000年まで生産が続けられた初代ミニ(オールドミニ、ローバーミニなど)、2001年に発表された現行ミニ(ニューミニ、BMWミニなど)とに分けられる。
1956年に勃発したスエズ動乱に伴う欧州各国の石油事情悪化の結果、より小型で燃費のいい車が求められたことによって生まれた。主任設計者はアレック・イシゴニス*1。
設計メーカーはBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)*2、コードナンバーはADO15(Austin Drawing/Design Office no./Project 15)。
まず最大の特徴は、当時小型車のレイアウトとして基本となっていたリアエンジン・リアドライブ*3ではなく、フロントエンジン・フロントドライブを採用したことといえる。エンジンは開発期間が短かったために、既存の直列4気筒OHVを使用しているが、ギアボックスをエンジンの下に収め、エンジンオイルとミッションオイルを共用とすることで、幅を抑えつつエンジンの横置きを可能にし、動力スペースを最小限に抑え、車体の約8割を乗客・荷物スペースとした。当時としては革新的な考えであり、現代の小型車の礎はミニによって作られたといえる。
他にも、アレックス・モールトン*4が開発したゴムの反力を利用するラバーコーンサス、10インチといった小径タイヤの採用、ドア内も荷物スペースとして使える引き戸式窓など、とことんまでスペースの有効利用を図っている。
生産期間は実に長く、その間さまざまなタイプの販売や、改良が行われている。主なものをあげると以下のとおり。
1959年8月、最初に発売された車種。基本のサルーンタイプ。848cc、34ps。
モーリスとオースティンの両ブランド名で、現在のバッジ・エンジニアリングのはしりとでも言うべき方法で販売された。低価格ではあったが、革新的過ぎたため、当初の売れ行きはよくなかった。しかし、文化人や芸術家、上流階級が飛びついたことをきっかけに、徐々に受け入れられていく。
1967年、ボディ内外をマイナーチェンジ。もっとも目立つのはフロントグリルがそれまでの鬚付きから、角型に変わったこと、オースティンとモーリスで同じものを使用したことがあげられるだろう。他にも、サスペンションをハイドラスティック・サスペンションに、フロントブレーキを2リーディングドラムに、クラッチをダイアフラムに改良した。
848ccモデルのほか、998ccモデルも存在。
1961年に発売開始。エンジンユニットは848ccだが、後に998ccも追加された。
ホイールベースを延長したバンタイプ。商用車使用であり、荷室に側窓はない。1980年代まで退き違い窓、外付けドアヒンジなどのまま生産が続いた。
1961年に誕生。ミニ・バンとともに変遷し、生産時期もほぼ同じ。
1960年に発売開始、848cc、34ps。
エステートタイプ。エステートは欧州ではサルーン以上のステイタスである為、内装はデラックスタイプ。荷室外部にウッドステム付きのものと、そうでないものがある。
1967年にサルーンに準じた変更*5が為されたタイプ。60年代末にこのシリーズは生産が終了するが、現在でも人気は高い。
1961年登場、997cc、55ps
ユーザーからより出力の大きいミニを求められつつあったために登場したスポーツモデル。日本ではミニと言えばなんでもミニ・クーパーの感があるが、正しくはミニ・シリーズのスペシャルモデルがミニ・クーパー。
ミニ・シリーズのADO15に対し、ADO50のコードナンバーが与えられており、イシゴニスとレーシング・コンストラクターを率いるジョン・クーパーの共同開発によって生まれた。
1964年にサルーンに準じた変更(サス、フロントグリルなど)が為されたタイプ。60年代末に生産終了。
1963年に登場、1071cc、68ps。
ミニ・クーパーを更に高性能化させたタイプ。1275ccエンジンが有名だが、最初に登場したのは1100cc以下のコンペティションにエントリーできる1071ccタイプ。普通のミニ・クーパーがロングストロークであるのに対し、クーパーSは瞬発力のあるショートストロークエンジンとなっている。
翌1964年にエンジンストロークを縮めた970cc・65psモデルと、逆に延長した1275cc・75psのモデルが誕生した。特に後者は160km/hに達する、まさに羊の皮を被った狼であった。
1964年〜67年までのモンテカルロラリー4年連続総合優勝*6の活躍は特に有名。
1964年にサルーンに準じた変更(サス、フロントグリルなど)が為されたタイプ。
1961年登場。848cc・34ps。
高級版ミニとして、どうしてもミニに馴染めない人向けの為の車種。ノッチバックボディ、フロントグリル形状、内装など、各所に高級感がちりばめられている。
1963年、多車に先駆けて998ccエンジンに換装、ブレーキ回りが強化されたタイプ。
1967年、ドアヒンジ内蔵化、巻き上げ窓化などが為された最終タイプ。
1964年誕生。848cc・34ps。ツインエンジン四駆タイプも試作された。
当初は空輸可能な軍用車として期待されたが、2WDであることや、小径車輪であることが災いして、悪路走破性能が不足とされた。
そこで発想を転換し、農作業からレジャー用まで、オープントップの多目的車として販売が開始された。本国での生産が終了した後も、オーストラリアのBL子会社が1980年代半ばまで生産。1275ccタイプなども作られる。
この類別は少しおかしいが、1966年、BMCとジャガー/ダイムラーが合併、続いて67年にローバー・アルヴィスといったレイランド・グループも合併したため、BMCからブリティッシュ・レイランドUK(BLMC)という大グループとなり、バッジ・エンジニアリングで多くのバリエーションの生まれていたミニ・シリーズが整理された。
簡単には、BLMCミニ850/1000、BLMCミニ・クーパーS、ミニ・バン、ミニ・ピックアップが受け継がれているが、ブランド名からオースティン/モーリスが消え、単にミニと呼ばれるようになった。
848cc及び998ccタイプが受け継がれた。フロントグリルが変更されたほか、ドアヒンジ内蔵化、巻き上げ窓化などの改良が施されているが、サスペンションはコストのかかるハイドラスティックからラバーコーンに戻されている。80年に生産は終わる。
1275ccタイプが受け継がれた。フロントグリルが変更されたほか、ドアヒンジ内蔵化、巻き上げ窓化などの改良が施されているが、サスペンションはコストのかかるハイドラスティックからラバーコーンに戻されている。1975年に生産終了。
オースティン/モーリス時代と殆ど変化なし。
オースティン/モーリス時代と殆ど変化なし。
1969年誕生、998cc・38ps。後に1098ccに。
フロントマスクを延長・デザイン改良したタイプ。ミニらしくないミニとして知られる。
1969年から。
クラブマンのエンジンを1275ccに強化したもの。
1969年誕生、998cc・38ps。後に1098ccに。
それまでは人気だったエステートタイプ。しかし、クラブマンのフロントマスクでは人気はいまひとつだった。
1980年、Mk IIIの生産終了にあわせて、998cc一車種に絞って生産・日本に輸入されたタイプ。
1980年から生産・輸入開始。998cc。
ミニ1000のエステートタイプ。
1982年に登場した999cc。内装デラックス版。
1989年に登場した999cc。廉価版。
1989年、本国ローバーグループの会社統合をきっかけに、日本の商社名がオースティン・ローバー・ジャパンから、ローバー・ジャパンに変更される。これ以後発売されたミニに一般にローバーブランドで呼んでいる。
1990年に登場。スポーティーなイメージを持たせたタイプ。999cc。
メイフェアのマイナーチェンジ版。1990年から。999cc。
1990年に生産・輸入が開始。15年間待たされていたクーパータイプ。エンジン出力は1271ccで、往年の1275Sに比べるとマイルドな味付けがされている。
おそらくミニ史上1,2を争うじゃじゃ馬。
English-Racing-Automobiles*7によってチューンされたターボ付きエンジンを備え、排気量はクーパー1.3と同じものの最大出力95ps。
外見的にもいかつく、13インチホイールにオーバーフェンダーが目立ち、ボンネットにはエンジンルーム容積確保のためのバルジが設けられている。
現行MINIはローバーがBMWに買収された以降の2001年に発表。開発はBMWが行い、事実上BMWが史上初めて手がけたFF車。日本では翌年3月2日から販売が開始された。以降、便宜上オールド・ミニに対してニュー・ミニやBMWミニと呼ばれることも。
その後、ローバーが再度分割売却された後も、BMWはミニブランドに関しては手元に残し、独自の販売網を継続維持している。
内外装のデザインは初代ミニをモチーフに現代的にアレンジされたもの。
可愛らしく、それでいて老若男女問わず誰が乗ってもサマになる雰囲気は初代譲り。
まるでカートのようにクイックな操縦性は、BMWの技術が注ぎ込まれたシャシーによって
FF車として世界でも一級のレベルで再現された。
また、初代ほどシビアではないものの実用車としての要素も十分考慮されている。
初代ミニとニュー・ミニの生み出された時代の違いや求められるものの違いも考慮すれば
小型でありながら自動車として全般的に高い能力を持つという点において両車は共通しており、
またそういう意味でニュー・ミニは「現代のミニ」として相応しい資質を持つと言える。
日本で販売されているグレードはONE、COOPER、COOPER S。
それぞれ出力が異なる1.6リッター直4SOHC、通称「ペンタゴンユニット」*8を搭載し、
COOPER Sにはスーパーチャージャーが装着されている。
COOPERとCOOPER Sにはコンバーチブルの設定もある。
欧州ではディーゼルエンジンを搭載するグレードも販売されている。