目の前に座る女性…クミコ。トシオさんより年上で、年齢は40に近いようだった。控えめに話し始めたその声は、静かで、穏やかで、どこか距離を保っているようにも感じた。 「彼、東北出身なんですよね。私も北のほうで…共通の知人に紹介されて、数ヶ月前に知り合ったんです」 私は頷くこともできず、ただ黙っていた。彼女は気を遣っているのか、それとも自分の中でも整理をつけようとしているのか淡々と話し続けた。 「年齢的にもう、結婚なんてないかなって思ってたんですけど……でも、話が合ったし、海外暮らしにも憧れがあったから、“いいかな”って思えて」 “いいかな”。その言葉が、胸の奥に静かに引っかかった。口調は終始穏やか…