文学賞 新潮社が1987年に創設。新潮文芸振興会主催。
三島由紀夫賞規定 [記念品及び副賞百万円] 本賞は下記の規定により、文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授賞する。 一、選考の対象は、小説、評論、詩歌、戯曲とする。(以下略)
文藝春秋(日本文学振興会)の「芥川龍之介賞」、講談社(野間文化財団)の「野間文芸新人賞」と並び純文学における若手作家の登竜門とされる。芥川賞に比べ現代的な作風の作品・作家が受賞しやすいと言わる。
2011年現在
今年の三島由紀夫賞と山本周五郎賞の候補作品が決まりました。まずは、三島由紀夫賞候補5作です。
こちらあみ子 (ちくま文庫) 作者:今村夏子 筑摩書房 Amazon 「こちらあみ子」今村夏子(著) 筑摩書房 あらすじ 後の芥川賞作家のデビュー作!太宰賞&三島賞W受賞! まとめ こんな人にオススメ こんばんは、ちわぷ〜です! 「むらさきのスカートの女」に激ハマりして以来、しつこいくらいに取り上げ続けてきた今村夏子先生の作品。 本日をもちまして、一応既刊は全て取り上げた事になる様です! 記念すべきフィナーレにはあえてのデビュー作を取り上げさせて頂きます! お察しの通り、私は好物は最後まで取っておくタイプの人間です笑笑 「こちらあみ子」今村夏子(著) 筑摩書房 あらすじ 純粋過ぎて、かえって風…
今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきました。 芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の尖りっぷりは芥川賞を凌ぐと思っている。舞城王太郎や佐藤友哉、中原昌也など芥川賞では評価されにくい尖った才能を見出してきた。個人的に一番好きな純文学新人賞だ。 前回は乗代雄介の『旅する練習』が受賞という順当な結果だったが、今年はどうなるのか。受賞作が出揃ったので紹介してきたい。 今回の候補作も芥川賞と違って独自色が強いなって思う。 デビュー作で読売文学賞を受賞した『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』がまさか候補に上がるとは思っていなかった。 岡田利規の「ブ…
久しぶりに古典を読んだ。 三島由紀夫の作品の中では他とは異なるといった趣旨の解説があったと思うが、確かにそう感じた。読みやすく、生き生きとしたものを感じた。 三島由紀夫がいきた時代からそれほどたくさんの時間が流れたわけではないであろうが、大きな時代格差を感じた。 読み継がれるだけの価値があることを感じた。 潮騒 (新潮文庫) 作者:三島 由紀夫 新潮社 Amazon
中原昌也は、現代文学の奇才と言ってもいいくらい、尖った小説を書いている小説家だ。 アンチ・クライマックス、無意味な暴力、規則的な反復、紋切り型の表現と普通の小説とは一味違った現代文学を書いていている。今までに、三島由紀夫賞や野間新人文学賞などを受賞しており、純文学のフィールドで評価を受けている。 小説だけでなく、音楽家、映画評論家、イラストレーターなど複数の肩書きを持ち、幅広いジャンルで活躍している。 中原昌也は、紋切り型の文章・陳腐な表現を多用し、掌編ぐらいの長さで唐突に小説を終わらせる。小説の種を発芽させて開花させるのではなく、芽が出始めのところで刈り取るのは暴力的でもある。普通の小説に異…
メフィスト賞からデビューし、ミステリ・純文学の枠に収まらない小説を執筆してきた佐藤友哉。 サブカルチャーを小説内に取り込み、様々な意匠をパロディ的に用いるのが作風だ。先行作品を下敷きにし、オマージュ的な作品を多く執筆している。 代表例を挙げると、サリンジャーの「グラスサーガ」を下敷きにした「鏡家サーガ」、高橋源一郎の『日本文学盛衰史』を佐藤友哉的にオマージュした『1000の小説とバックベアード』、中上健次の「灰色のコカコーラ」のタイトルをもじった『灰色のダイエット・コカコーラ』などがある。 鬱屈した内面を抱えた登場人物を主人公にすることが多く、焦燥や葛藤を生々しく描写するスタイルはコアなファン…
でも、劇場を抜け出したあの日見た景色のお陰で、リンデは新しい自分に出会えた気がした。 『自分を好きになる方法』本谷有希子 十二月の読書会の案内です。 参加希望者はホームページからお申し込み下さい。 kannawanoasa.jimdofree.com ◆「別府鉄輪朝読書ノ会 12.17」十二月は自己啓発本と間違われそうなタイトルの『自分を好きになる方法』本谷有希子(講談社文庫)を読んでいきます。16歳のランチ、28歳のプロポーズ前夜、34歳の結婚記念日、47歳のクリスマス、3歳のお昼寝タイム、63歳の何もない一日。リンデは「お互い心から一緒にいたいと思える相手」を求め続ける。密やかな孤独と後悔…
三大純文学新人賞の一つである第45回野間文芸新人賞の受賞作が発表された。 受賞作は、朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」の2作だ。 特に朝比奈秋は今回の受賞で新人賞三冠にリーチとなった。 この記事では第45回野間文芸新人賞の受賞作について」紹介したい。
75. 佐伯一麦『ア・ルース・ボーイ』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆☆★★ 何気なく図書館で手に取った一冊。著者は仙台出身で、かつ本作の舞台も仙台だったこともあり、妙な親近感を覚えて読んだ。第4回三島由紀夫賞受賞作。 進学校を中退し、子連れの同級生の女と生きることを決意した少年の物語。彼の不器用さ、若さからくる熱気、決断力、淋しさをひっくるめて感じられて良い。無職で家もなく、頼る人もいない。自分に素直な好意を抱いているのかいまいち不明な女と、見知らぬ男との間に生まれた血縁のない子どもと、三人暮らし。そんな彼の言動や心情には、共感してやまない部分と、全く共感のできない部分が入り混じっている。そ…
初めまして、京こと申します。 本日からブログを始めてみました。 私は本を読むのが好きなのですが、そのイメージの割にお淑やかでなく言葉遣いも美しくないのでせめてこのブログでは丁寧な口調を保ってお話しいたしたいと思っております。 ブログを始めたきっかけは、「むらさきのスカートの女」を読んだためです。 あとがきのようなコラム?エッセイ?で作者の今村夏子さまご自身が小説家を志すようになったきっかけを書いていらっしゃって、そちらを読んだところ文章を書いてみたくなってしまいました。 もちろん私は太宰治賞も三島由紀夫賞も芥川賞も受賞しておりません、市のコンクール小学生部門の佳作がいいとこです。 小説を書こう…
一億三千万人のための 小説教室 (岩波新書 新赤版 786) 著者 : 高橋源一郎 岩波書店 (2002年6月20日発売) ②f.2023/9/6①f.2010/12/15p.2010/11/16 from amazon site 小説は教わって書けるようになるのか? 小説はどう発展してきたのか? 小説にとって重要なのは,ストーリーか,キャラクターか,それとも,描写なのか? こうした疑問に答える,刺激的で実践的な教室.さまざまな文体を比較して,練習問題も豊富.「先生」と「生徒」の対話を追ううちに,小説とは何か,が見えてくるだろう. 商品説明世の中には小説の書き方に関する本があふれている。そうい…
2023年9月24日(日) たっぷりと寝て目覚め、ラジオを聴きながら溜まった洗濯物を干した。ベランダで柔らかな日差しと涼やかな風を浴びながら、そうか、これで良いのだ、と思った。夢も希望も、自尊心も要らない。ただ健康に、日々の生活の一つ一つを愛おしく思う気持ちだけ持ち合わせていれば、生きていくことなんて、さほど難しいことではないのかもしれない。けれどきっと、そうやって日々を愛おしく思うことが何より一番、難しいのだけれど。 雑貨屋でコーヒーミル、洋菓子店で木苺のジャム、本屋で三冊の本を購入した。そうして穏やかに流れる時間の中で、連れ合いと色々な話をした。それだけで、亡くしていた心を取り戻したような…
佐藤友哉 『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 講談社ノベルス 佐藤友哉の『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』を読了しました。第21回メフィスト賞受賞作品で、以前に文庫で読んだ記憶があるのですが、今回はノベルス版で読むこととなりました。佐藤氏の作品は新本格というミステリーの文脈ではあまり評価されることがなく、やがて作者は「一般文芸」の方に作家活動の軸足をシフトさせて三島由紀夫賞を受賞することになります。今回あらためて読み返してみて、ミステリーとしての面白さ(というかプロットの意外性)についてしっかりと感じ取ることができたように思うのですが、刊行当時(2001年)は同時代の小説として…
お久しぶりです。青桐です。 とうとう9月になり、慌ただしく夏休みの終了と共に 秋の訪れを感じる今日この頃、いかがお過ごしですか? ここ3日程、改めて小説を書いてみようと思い立ち、 書いてみました。ショートショートを。 結果散々です。すごくカッコ悪い文章になる。 言いたいことが多すぎるし、無駄も多いし まとまりがない。構成力がないんだろう。 そして何より 頭に浮かぶ情景を描写する力がまだまだない! まず辞書から読むべきだと痛感しました。 早急に辞書を手に入れなければ! それでも書くこと自体は 自己満足の極みで細々とは続けていけそう。 いつか三島由紀夫賞を取りたい。 自分の説明書に、三島由紀夫の名…
ミステリの制約から解き放たれた舞城王太郎作品 2003年刊行作品。講談社の文芸誌「群像」の2003年7月号に掲載された作品を単行本化したもの。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、七作目の作品。一つ前に刊行された『阿修羅ガール』は三島由紀夫賞を受賞しており、活動のベースがミステリから、ブンガク寄りに移っていこうかという頃合いの作品である。 ちなみにタイトルの読みは「やまんなかのしみともなるお」である。 山ん中の獅見朋成雄 作者:舞城 王太郎 講談社 Amazon 講談社ノベルス版は2005年に登場。 山ん中の獅見朋成雄 (講談社ノベルス) 作者:舞城 王太郎 講談社 Amazon そして…
三島由紀夫賞候補作 『熊の場所』、『バット男』、『ピコーン!』からなる短編集 『熊の場所』 小学5年生の主人公がクラスメイトのカバンに当たると中から切断された猫の尻尾が出てきた。彼はクラスメイトの動向を探るべく、クラスメイトと放課後に遊ぶようになるがクラスメイトはサッカーが上手い普通の男の子ように見えた。しかしそんななかでも彼の家に置いてある缶の中では猫の尻尾が増え続ける。そんなある日近くの学校で子どもがいなくなるという事件が起きて…という話 『ピコーン!』 主人公のわたしはバイクメンという暴走族に属していた哲也と付き合っている。わたしは高校卒業認定試験を受けて就職し、哲也と一緒に普通の社会に…
天才思想家 東浩紀の凄さについてまとめてみた。 PRESIDENT Onlineより 東浩紀とは ひろゆき(西村博之) ただのぽっちゃりかと思ったら、やっぱり頭いい 成田悠輔(イェール大学助教授) 初めて読んだ思想書が東浩紀の著書 浅田彰(批評家) 『存在論的、郵便的』は最も重要な本のひとつ 東浩紀の登場により私の『構造と力』は完全に過去のものとなった 川上量生(株式会社KADOKAWA取締役、株式会社カラー取締役) 茂木健一郎(脳科学者) 東浩紀さんの才能はすごいと思うが、その立ち位置に感動する 東浩紀とは 日本の批評家、哲学者、小説家。株式会社ゲンロン創業者および取締役、合同会社シラス元代…
宇佐美りんの第二作 2020年刊行作品。『文藝』秋季号(2020年7月号)に発表された作品を書籍化したもの。第164回(2020年度下半期)の芥川賞受賞作品である。 筆者の宇佐美りんは1999年生まれ。2019年のデビュー作『かか』でいきなり文藝賞、更に三島由紀夫賞を史上最年少で受賞。そして、二作目の『推し、燃ゆ』で、早くも芥川賞を受賞。これは、綿矢りさ(当時19歳)、金原ひとみ(当時20歳)の受賞に次ぐ若さである。 推し、燃ゆ 作者:宇佐見りん 河出書房新社 Amazon 2021年の2月25日時点で47万部を突破(スゴイ!)。純文学界における、久しぶりの大型新人の登場である。 河出文庫版は…
第26回三島由紀夫賞受賞作品となります。 しろいろの街の、その骨の体温の 村田紗耶香:著 朝日文庫 個人蔵 クラスでは目立たない女生徒が通っている習字(書道ではないのか)教室において、一緒に習っている男子と仲良くなります。 次第に彼をおもちゃにしたいという気持ちが芽生えるのですが、その「おもちゃにしたい」が「性への目覚め」と絡まり、複雑なお年頃の内面を実に丁寧に、そして残酷に書き出しています。ちょうどそのころの学生というのは、平気で相手を傷つける傾向にあります。主人公の女性とも美しい・かわいいというわけではないようで、そこに深く傷を負ったりします。そういったことを経験しながらも、性的なことへの…
6月16日、2023年上半期の芥川龍之介賞・直木三十五賞の候補作品が発表されました。 今回の記事では、2つの賞の候補作をご紹介します。 芥川龍之介賞とは? 過去受賞作 2023年上半期 芥川賞候補作 直木三十五賞とは? 過去受賞作 2023年上半期 直木賞候補作 まとめ 芥川龍之介賞とは? 『羅生門』 『地獄変』などの作者、 芥川龍之介 の名を記念して制定された賞です。 新人作家が手掛けた、最も優秀な純文学の中・短編作品に贈られ、上半期・下半期の年2回、選考会が行われます。 1935年に始まり、2023年の上半期選考会で169回目を迎えました。 過去受賞作 168回 この世の喜びよ 井戸川 射…
植物少女 朝比奈 秋 (著) 朝日新聞出版 今期の三島由紀夫賞を受賞した「植物少女」を読みました、どの頁も例外なく胸や目頭が熱くなる作品でした。 主人公の美桜(みお)を出産する時に、脳出血で植物状態になってしまった母、深雪。 美桜は、植物状態の深雪の母乳で育ち、やがて成長して、ほぼ毎日病院の特別病棟の部屋で、植物状態の母と2人だけの時間を過ごしたり、同室の植物状態の患者たちと静かな交流を繰り広げます。 勤務医だった著者は、病棟や病室の患者や医師や看護師をクールに描いています。 そして、それらの対局にあるのが著者が創り出した主人公の美桜で、植物状態の母親との濃密な時間の描写に圧倒的な生命の尊厳が…