大正時代、円本の普及と共に、大衆受けは良いが、世俗的で品性の低い、文学的価値の乏しいテキストが大量に出回った。既存の作家達や、円本のような作品を卑しむ人々により、今までの文学はそういう大衆文学とは一線をかくしたジャンルであるとされ、それは純文学と名付けられた。もっとも、そうは言え、既得権益を守るために作った組合みたいな側面も多分にあった。 (こっちのほうがまとまってていいと思います)
「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく大物司会者の楽屋へ乗り込んでゆく。もちろんノックなどするはずもない。ノックをすれば追い返されるのがわかっているからだ。「はい、よろしくね~」 失礼くんをドラマの番宣に来た子役だと勘違いした大物司会者が、メイク中の鏡越しに適当な挨拶を返して終わらせたつもりになっている。しかしここで引き下がってしまっては失礼くんの名折れである。むしろここからが失礼くんの腕の見せどころであるに違いない。「もし良かったら、一曲歌ってもらってもいいですか?」 失礼くんが、ぶしつけにとんでもないリクエストを投げかける。大物司会者の本業は歌手なのである。「歌えって、いまここで?…
血圧値 129/78/68 酸素飽和度 98% 体温 36.4℃ 体重 67.6キロ 運勢 The Emperor 辻邦生の今って、どうなんだろう。 新刊書店ではほとんど買えないし。 初めて聞く作家さん、という意見も多数。 もう過去の人になってしまったのか? 0630 起床 晴 辻邦生の今って、どうなんだろう。本屋さんには売ってないなあ。 - にこたろう読書室の日乗 これは、オワコンになったというよりも、「読者のいる場所」が変わってしまった、という感じに近いのではないかと思います。 辻邦生 は、1970〜90年代にはかなり大きな存在でした。 特に、知識人層・大学生・文学青年・西欧文化への憧れを…
今日は会社が休みだったので、いつものように「レンタル余計なことしかしない人」を頼むことにした。 だからといってわたしにだって友達がいないわけではない。たしかに友達が多いほうではないと思う。けれど大人になると、友達は余計なことをしなくなる。これはおそらく人間が本来持っている学習能力の弊害ではないかと思われる。人は相手が何を求めているかをいつのまにか学び、そこから逆算し、ごく自然に必要とされる行動を取ってしまうようになる。 それは一般に「思いやり」と解釈され、友人関係を円滑にするために必須の発想とされている節があるが、わたしにはそれがつまらない。わたしは小学校のときの友達のように、野球をしている最…
この記事は、ライトノベルの定義を考えたとき、 そもそもその定義自体が社会の都合で作られた“枠”にすぎず、 世の中には同じような枠がいくつも存在する、という話をまとめたものである。 はじめに ライトノベルという曖昧なジャンル 純文学と一般文芸の違いはどこにあるのか ● 純文学 ● 一般文芸 中高年がライトノベルを読んでもいい では、「中高年」とは何歳からなのか 人生100年時代の年代区分(例) 人生50年と言われた時代なら 結婚適齢期という、もうひとつの「ラベル」 生物学的な側面 社会的な側面 ラベルは、社会の都合で括られるだけ まとめ 関連記事 はじめに ライトノベルという言葉を聞くと、多くの…
学校から帰ってきてドアを開けた勢いのまま玄関に飛び込むと、足もとの大きな四角い物体につまずいていきなりヘッドスライディングをかましてしまった。何をそんなに急ぐことがあるのかという感じだけど――実際のところ別になんの用事もなかったし――いつ何時でもスピードを追求するのが小学生という生き物なのだ。それは河童だって変わらない。 考えてみればゆっくりドアを開けて家に入ったことなんて、一回もないかもしれない。学校でも、余裕をかまして教室に入ってくるのは先生と相場が決まっている。この先たっぷり時間のある子供のほうが生き急いでるなんておかしな話だけど、いざ教室に入ってしまえばチャイムが鳴るまで友達とダラダラ…
本間直人は代行を許さない。許さないといっても許さないことすら許されない世の中である。代行といえばいわゆる「退職代行」が良くも悪くも話題になることが多いが、それ以前からこの世はなにもかもが実のところ代行まみれであるのかもしれない。 スーパーマーケットにいる直人は、腰をかがめて棚にせっせと米袋を積み上げている店員に尋ねる。「これってあなたのお米ですか?」 振り返った三角巾の似合う女性店員は怪訝な表情を浮かべつつ、初めての質問に慌てて正解の言葉を探し当てる。「えーっと、もちろんわたしのではなくて、まあなんというかお店の、ということになりますが……」「でもお店のでもないですよね」 訊き手である直人の口…
わたしは充分な準備を整えたうえで重要な社内会議に臨んだ。といっても、別に企画書等を準備する必要はなかった。なぜならばこれは、この先に何かを生み出したり、立ち上げたりするための会議ではないからだ。この場でアイデアをただ発表しさえすれば、それですべてを完了させることができる。これほどまでに有意義で、かつ効率的な会議はほかにないように思われる。 議長役を務める部長からトップバッターに指名されたわたしは、さっそくひとつ目のアイデアを披露することになった。「ちょっとタイムマシンを作ってみようと思ったんですが」 わたしがひとこと目にそう言うと、同僚たちからは驚きの声が上がった。「なぜですか?」 部長は当然…
あなたがもし幸せになりたいのならば、家を出てひとつめの角を右に曲がってください。そこでぶつかった相手が、あなたの運命の人です。 誰ともぶつからないようであれば、あなたに必要なのはその角ではありません。そのまま真っすぐに進んで、次の角を左に曲がってください。いいですか、今度は左ですよ。右に曲がったらおしまいです。 しかしそう言われると、あなたは途端に右が気になってくるでしょう。でもあなたは、そこを右に折れたら何があるのかということぐらい、すでに知っているはずです。なぜならばそこはまだあなたの家の近所なのですから、少なくとも一度や二度は、その角を右に曲がったことがあるはずです。もしかすると毎日曲が…
近ごろ迷惑メールが増えていて困っている。《お得なグリーン副業あります。即日キュウリ百本進呈!》 《マッチングアプリ『カパーズ』にご登録ありがとうございます! 本河童確認をお願いいたします》 《国際河川郵便が届いております。至急お受け取りの手続きを!》 メールはどれも微妙に河童用にカスタマイズされているので、ついつい騙されそうになる。ちなみに「グリーン案件」というのは人間で言うところの「ホワイト案件」というやつで、もちろんわざわざそんなことを言う案件がグリーンであるわけはない。 それに報酬にキュウリをもらえるのはたしかに嬉しいが、さすがに百本もいっぺんに渡されたところで新鮮なうちに食べきれるはず…
「つまりお前は、地球をまるごと盗んだってわけだ!」 取調室で容疑者の顔面にひん曲げたデスクライトをカッと浴びせながら、ひとりの刑事がそう断言した。この刑事の名を過田玄堂という。「いやいや、だから俺が盗んだのはペン一本っすよ」 万引きの容疑をかけられた若い男は、両掌を天に向けるアメリカ譲りの動きを添えてその発言を否定した。彼の背後に立っているもうひとりの刑事は、そんな容疑者をたしなめるかと思いきや、その向こうにいる玄堂に向かって言った。「玄堂さん、それはさすがに言い過ぎではないでしょうか」 この若いほうの小森村という刑事は、玄堂のいわゆるバディということになる。彼は玄堂のいき過ぎた発言に、毎度頭…