作家。1962年、岡山生まれ。早稲田大学卒。 1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞受賞。1991年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年「博士の愛した数式」で読売文学賞・本屋大賞受賞。同年「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞(第32回)受賞。2006年「ミーナの行進」で谷崎潤一郎賞受賞。 主な作品に「シュガータイム」「密やかな結晶」など。静謐で透明感のある文体が特徴。
心に残る物語――日本文学秀作選 右か、左か (文春文庫) 著者 : 沢木耕太郎 文藝春秋 発売日 : 2010-01-08 ブクログでレビューを見る» アンソロジー作品『心に残る物語――日本文学秀作選 右か、左か』を読みました。沢木耕太郎の編集による、「選択」をテーマにしたアンソロジー作品です。-----story-------------第一線のノンフィクション作家が選ぶ短篇アンソロジー芥川龍之介、開高健から小川洋子、村上春樹まで――「人生におけるあらゆる選択」をテーマに沢木耕太郎が選ぶ濃密な13の短篇----------------------沢木耕太郎編による文春文庫創刊35周年記念特別…
JR甲子園口の駅前には、小さなロータリーがある。その片隅に申し訳なそうにぽつんと佇む、木製のバットを模したモニュメントは、いつ見てもどこか所在なさげだ。そこから本物の甲子園球場までは、歩くには少し、不調法なほど遠い。 夏を先取りしたような五月のある日、お使いものの洋菓子を抱え、すずらん通りを歩いていると、不意に背後から声をかけられた。 振り返ると、白いレースの日傘を小さくすぼめるようにして、一人の老女が立っていた。 「甲子園は、どちらでしょう」 私は一瞬、言葉を失った。私たちが今立っているこの地面もまた、甲子園と呼ばれる土地の一部だったからだ。けれど、彼女が求めている場所はここではない。 「球…
2026年5月6-12日 ・小川洋子『密やかな結晶』 ・辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』上下 ・本谷有希子『静かに、ねぇ、静かに』 ・辻村美月『かがみの孤城』上下 ・米澤穂信『倫敦スコーンの謎』 ・村田沙耶香『コンビニ人間』 ・村田沙耶香『授乳』 ・村田沙耶香『殺人出産』 ・今村夏子『父と私の桜尾通り商店街』 ・木皿泉『さざなみのよる』 以下コメント・ネタバレあり
本を読んでいると、世界にはなんと様々な価値観をもった人がいるのかと驚かされることがある。 うさぎがもっている「当たり前」を易々と踏み越えて、ときには勇敢に、ときには狂気に生きている、または生きていた人々がいる。 そういう人々と出会うたび、うさぎの世界は開かれていく。快い痛みを伴うこともあれば、尊敬を越えて畏怖すら覚えることもある。 何が言いたいのかというと、本との出会いは人との出会いであり、人との出会いは自分との出会いということだ。 インクの染みを越えて 十代の頃は、本に書かれてあることは文字以上の意味をもたなかった。別れの痛みも、成功の喜びも、インクの染みの上の出来事であって、うさぎとはなん…
小川洋子『妊娠カレンダー』 今日は読書の話題です。まず、小川洋子の『妊娠カレンダー』。 芥川賞受賞作で、書かれたのが1991年だから、もう35年前の作品になる。文庫本には『妊娠カレンダー』と、他に2つの短編が収録されている。 半年ほど前に読んだ『完璧な病室』は、その少し前に書かれた最初期の作品集で、その感覚的かつ官能的な表現が過剰なまでに溢れていたが、この3編はより平易で読みやすい文体の中に、それがうまく溶け込んでいる印象だった。もともと文体や描かれている世界が好きな作家なので、気持ちよく読み終えることができた。 それは個々の作品に対する感想。 「妊娠カレンダー」 出産を控えた姉と同居する「わ…
初夏の風が心地よい季節となりました。公園では若葉が美しいです。ゴールデンウィークは如何でしたか?ご主人様は映画やお芝居を観たり、ちょっと運動らしきものをしたりと、忙しそうにしておりました。夏が来る前のこの季節を大いに満喫したいところですね。 さて、ご主人様の本便りです、いろいろなジャンルの本をお読みになったようです。 まずは「博士の本棚」小川洋子 著 素晴らしいエッセイでした。何故、作家になったのか?本が好きになったのか?と聞かれれば子供の頃に読んだ「世界少年少女文学全集」だったそうです。この時点でご主人様は嘆いておりました。(私はこの世界少年少女…を読んでいなかった)と後悔しておりました。今…
(2021年11月30日投稿) 評価5(5段階評価) 母が経営するホテル・アイリスのフロント係マリはロシア語翻訳家の男と知り合う。普段は大人しい男だが島の家に着いた途端に豹変、マリを裸にし紐で全身を縛り凌辱する。次第に官能の世界へのめり込む娘と男の歪んだ愛を独特の筆致で語る小川ワールドの新境地! 異常に髪にこだわる母親、病的なほど几帳面な男、舌がないために口がきけない男の甥、液体状の料理、マリの持ち物を盗むおばさん、小川洋子的キーワード満載だが、小川さんがこのたぐいの小説を書くとは!?ビックリ。まさかの結末にも驚いたが、けっしてドロドロしない小川ワールドに大満足。ぐいぐい物語に読者を引き込む力…
だいぶ前の過去記事で、自分の趣味に合う新書のレーベルは筑摩書房の「ちくまプリマー新書」なのではないかと思い至り、いくつかAmazonのほしいものリストに追加して早数年。このままじゃ半永久的に買わないのではないかと思っていましたが、Amazonがまた本のまとめ買いキャンペーンを開催してくれたので参加。5冊まとめ買いしたうちの1冊が小川洋子著『物語の役割』です(⇩) www.chikumashobo.co.jp 現役作家が説く「物語の役割」とは何か。人はなぜ物語を、フィクションを生み出すのか。それをわずか128ページでコンパクトに解説してくださったのが本書です。一言で表すと名著。フィクションづくり…
地元の商店街に小さな本屋があった。赤字の大きな「本」の看板が遠目によく見えた。通りに面した棚には新刊や注目の本が平積みにされ、目線を上げれば狭い店内の奥までお通すことができた。そこで本を買ったことは数えるほどしかないが、本屋の前を通るたびに、どんな本が並んでいるのかを横目で見るのは楽しかったし、ときには用もないのに中に入ってみたりもした。 本屋は、うさぎが地元を離れている間に畳まれた。あれからもう10年ほどになる。 10年の間に商店街はどんどん寂しくなった。通りにはシャッターが冷たく下ろされ、テナント募集の張り紙が虚勢のように大きな字で存在感を示している。 本屋があった場所もシャッターに張り紙…
2026年4月8-14日 ・W・G・ゼーバルト(鈴木仁子訳)『土星の環:イギリス行脚』 ・真藤順丈『宝島』上下 ・宇佐見りん『推し、燃ゆ』 ・川上弘美『センセイの鞄』 ・岡野宏文、豊崎由美『百年の誤読 海外文学篇』 ・小川洋子『妊娠カレンダー』 ・佐藤正午『月の満ち欠け』 ・羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』 ・磯崎憲一郎『終の住処』 ・角田光代『対岸の彼女』 ・川上弘美『神様』 ・今村夏子『こちらあみ子』 以下コメント・ネタバレあり