急ぎの文書を届けさせようと役所で早馬を用意すると、使いの者は手綱をとって馬と一緒に走りだした。役人が「急ぐのになぜ馬に乗らないか」と聞くと、使いは「4本の足で走るより、6本の足で走る方が速いからだ」といった。 *** 上に述べたのは中国の古い笑話であるが、どのくらい急ぎか、どのくらい離れているか、使いの身分はどうか、すべて言い落としているので、これで笑おうとしてもむずかしいと感じてしまう。使いの切り返しの妙よりも、じっさいどうして使いが馬に乗らなかったのかが気になって、うまく笑えない。 一見不可解な行動の裏には、何かしらの隠された理由があるものだ。たいていは「解せぬ」で終わらざるを得ないが、第…