腎不全が進行し、腎臓が機能しなくなった場合に、血液を浄化する治療。 血液透析と腹膜透析の2種類があるが、一般には前者のことのみを指して言われることが多い。実際日本では人工透析を行う患者の約96%が血液透析両方を受けている。 血液透析では、一般的に週3回専門の施設に通い、1回4時間かけて治療する。 腹膜透析では、お腹にカテーテル(チューブ)を挿入し、毎日自分で4回程度、液を交換を行って治療する。
希望と現実のあいだで 「食べたい。でも増えたくない」透析患者にとって、この葛藤は日常的なものです。 体重を増やせば、透析後の血圧が不安定になり、心臓への負担も増える。けれど、栄養が不足すればフレイルに陥り、筋力も落ちてしまう。血糖は日によって上下し、インスリンも必要だけど、増やすと太る…。 そんな難しいバランスの中に登場したのが、「マンジャロ(Mounjaro)」という新しい薬です。今回は、透析患者の視点から、この薬が持つ可能性と、現実的な限界について見ていきます。 マンジャロとは何か?──GLP-1×GIPの二重作動薬 マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2023年に日本で承認された糖尿病…
お題「お酒での失敗談」 お酒を飲むか、飲まないか──。 透析患者にとって、それは意外と難しい問いかもしれない。 僕自身は、もう何年もお酒を口にしていない。 飲まない理由は、はっきりしている。 血圧が急に下がるからだ。 それに、ビール1缶で500mlというのは、僕たちにとっては“重すぎる一杯”なのだ。 お酒は“水分”である 透析患者にとって、水分の摂取量は命に関わる。 むくみ、血圧の乱高下、除水困難、心不全──。 そのすべてが、たった数百ミリリットルの“過剰”から始まる。 ビール1缶は500ml。 それはすなわち、薬を飲む水、お茶、スープ、すべて合わせて1日分の水分を、たった一瞬で飲み干してしま…
透析を受けていると、「なぜ生活習慣が変えられないのか」と悩む人をよく見かける。食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足。毎週、同じ注意を受けながらも、結局また同じことを繰り返してしまう。 僕自身はそこまで不摂生ではないけれど、それでも周囲を見ていて、なぜ人は変われないのかと考えることはよくある。そこに“意志の弱さ”とは違う構造があるのではないか──そう思って、少し調べてみた。 食べ過ぎも運動不足も、“脳”がつくっている? 透析室でよく聞くフレーズがある。 「また食べすぎちゃったよ」 「水、我慢できなかった」 「全然歩けてないんだよね」 これ、1人や2人の話じゃない。食べ過ぎる人はいつも食べ過ぎているし、運…
透析患者の僕が、自分の言葉で考える“予防の話” 糖尿病について書こうと思ったのは、透析を受けている身として、見過ごせない風景があるからだ。 透析室では、糖尿病が原因で腎臓を悪くした人と数多く出会う。 「透析=糖尿病性腎症」と言っても大げさじゃない。 でも実際、「糖尿病ってなに?」と問われると、僕自身、透析になるまで深く考えたことがなかった。 もっと早く知っていたら。そう思ったことが何度もある。 この記事は、その気持ちから生まれている。 ■ 糖尿病とは? 簡単に言えば、「血糖値が高い状態がずっと続いてしまう病気」だ。 食事をすれば血糖値は上がる。それを下げるのが、インスリンというホルモンの役割。…
※この記事は、はてなブログ「今週のお題『コーヒー』」に参加しています。 透析を受けていると、「飲み物」が特別な存在になる。 毎日摂取できる水分は、透析スケジュールや体調、医師の方針によって異なるが、おおよそ500〜800mlとされることが多い。 その中で、コーヒーを選ぶということは、何かを諦めてでも味わいたいものがあるということだ。 日々の食事制限、水分制限、薬の管理。そのすべてに意識を向け続けていると、時折“自分らしさ”を見失いそうになる。 だからこそ、朝にコーヒーを淹れる。香りに包まれる時間が、自分を取り戻すひとときになる。 水分としてのコーヒー──その“一杯”は、貴重な選択 透析患者にと…
人工透析を受けている人の医療費は、月にするとおよそ40万円前後かかるとされています。ダイアライザー、穿刺、返血、医師の診察や検査、そして薬代──これらが積み重なることで、非常に高額になるのです。 それでも、私たちが実際に窓口で支払う金額は、ごくわずかで済んでいます。これは、日本の医療保険制度や公費負担制度があるからです。高額療養費制度、障害者手帳に基づく助成制度、重度心身障害者医療費助成(自治体ごとに名称は異なります)など、いくつもの制度が重なり合って、透析患者の生活を支えています。 しかし、この仕組みは外から見るととてもわかりづらく、当事者であっても十分に理解できていないことが少なくありませ…
透析患者なら見逃せない“隠れた敵”がいるのをご存じでしょうか。その名は「β2-MG(ベータ・ツー・マイクログロブリン)」。検査結果の項目には出ていても、あまり気にしたことがないかもしれません。 けれど、この物質が体にたまり続けると、ある日突然「箸が持てない」「肩が動かない」といった不調をもたらすことがあります。その正体は、透析アミロイドーシスという病気。自覚症状が出るころには、すでに体の中で“沈着”が進んでいる可能性もあります。 このブログでは、β2-MGとは何か、なぜ気をつけるべきなのか、そしてどうすれば対策できるのかを、透析を受ける一人として、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。…
「そんなに飲んでないつもりなんですけど、体重が増えてて…」 透析のあと、体重計に乗って、看護師さんや技士さんにそう伝える患者さんは少なくない。僕もそのひとりだ。本当にそんなに飲んだかな?と思いながら、体重が2kg増えている──それならまだ少ないほうだ。3kgくらいなら「まあ、こんなもんか」と思える。でも、4kgを超えると、さすがに「やってしまった」と感じる。数字は嘘をつかない──それは、透析をしていると、いやというほど思い知らされる。 増えた体重と、自分への言い訳 「透析後にココイチに寄ってしまうことがある」 そう聞いて、「まあ、そのくらいいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれない。でも、水…
ジムに半年行けなかった僕が、それでも歩き続けている理由 ウォーキングアプリの記録を見返してみたら、今年に入ってから毎日5000〜7000歩くらい歩いていた。週末は少し距離を伸ばして、8000〜10000歩程度。 だけど、ここに「健康意識の高さ」や「運動習慣の継続力」といった美徳を読み取ってほしいわけじゃない。僕自身、ジムは半年以上もサボっている。契約だけは続けているけれど、最後にマシンを触ったのがいつか思い出せない。 それでも、歩くことはやめなかった。 歩く理由が“健康”だけじゃないと気づいた日 歩いているのは、病気と闘うためではなく──会社へ行くため。食材を買いに行くため。コーヒーを飲みに行…
透析中、片手が自由じゃない。 針と管につながっていて、動かすと警報が鳴る。 いや、正確には“すぐ鳴る”わけじゃない。 忘れたころにふと動かしてしまって、 「ピーッ」と、あの独特の音が静かな室内に響く。 自分でも驚いて手を止めるけど、 一度鳴ると、読書のリズムも少し崩れる。 紙の本は読みにくい。だから、工夫する ページをめくるのが難しい。 片手で本を押さえて、もう片方でめくる──そんな単純な動作が、 透析中にはけっこうハードルが高い。 だから最近は、Kindleを使っている。 軽いし、片手でページ送りもできる。 文字サイズも変えられるから、姿勢がつらいときにも助かる。 オーディオブックもたまに聴…