(1668-1683) 江戸本郷駒込の八百屋の娘。1682年の火事で檀那寺に避難した折に恋仲となった寺小姓に再会できると思い放火し、捕らえられ火刑に処された。井原西鶴が「好色五人女」に書き、また、歌舞伎「八百屋お七歌さいもん」、浄瑠璃「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)(通称「櫓のお七」)」など多数の作に脚色された。三省堂提供「大辞林 第二版」より
(1668-1683) 江戸本郷駒込の八百屋の娘。1682年の火事で檀那寺に避難した折に恋仲となった寺小姓に再会できると思い放火し、捕らえられ火刑に処された。井原西鶴が「好色五人女」に書き、また、歌舞伎「八百屋お七歌さいもん」、浄瑠璃「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)(通称「櫓のお七」)」など多数の作に脚色された。
三省堂提供「大辞林 第二版」より
それでは、最後に、お七という人物は、本当に存在していたのかについて、先行研究、特に、矢野公和氏(矢野公和「「八百屋お七」は実在したのか」『西鶴と浮世草子研究』4 笠間書院 2010)と、有働裕氏(「「お七」再考」『文学・語学』215 2016-04)の論考を踏まえて、解説しようと思います。。 結論から言いますと、お七という人物は存在していなかったと考えざるを得ません。 現在残されているお七の資料は全て、『好色五人女』の影響を受けて、『好色五人女』以降に書かれたもので、同時代のお七の資料は一切存在しないのです。 確かに、『好色五人女』以前に出版された、西村本『好色三代男』や、当時の記録の戸田茂睡…
今回から第四章ですが、わずか2ページで話は急速に進みます。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 世に見納めの桜《さくら》 この世で見納めの桜 其れとハ言はずに、明暮《あけくれ》女心の墓《はか》なや。 吉三郎への恋心を誰にも言わずに、朝から晩まで思い悩む女心はむなしいものです。 逢ふべき便《たよ》りも無けれバ、或る日、風《かぜ》の激しき夕暮《ゆふぐれ》に、日外《いつぞや》寺へ逃げ行く、世間《せけん》の騒ぎを思ひ出して、 吉三郎に会う方法も無かったのですが、ある日、…
野菜を売りに来た里の子が、雪のために帰れず、お七の父親の情けで、一晩八百屋の土間で過ごすことを許されるのですが、下男の久七が興奮して里の子にチューをしようとします。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 久七、分別《ふんべつ》して、「いや/\根深《ねぶか》、にんにく喰《く》ひし口中も知れず」 と止《や》めける事の嬉し。 しかし、久七は考え直して、「いやいや、ネギやニンニクを食べた臭い口かもしれない」 と、チューをするのをやめたので、里の子は嬉しく思うのでした。 其…
お七は吉三郎の寝室に忍び込むことに成功し、ようやく二人は結ばれるのでした。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】「恨めしや、今寐《いまね》温《ぬく》もる間《ま》も無く、飽かぬハ別《わか》れ、世界《せかい》は廣《ひろ》し、昼《ひる》を夜《よる》の國もがな」「恨めしいですわ、今寝たばかりで、温まってもいないのに、名残惜しくも別れなければならないなんて。 世界は広いんだから、昼を夜にする国があればいいのに」 と俄《にハか》に願ひとても、叶《かな》はぬ心を悩ませしに、母《…
吉三郎が目の前ですが、新発意(小坊主)が邪魔なので、お七は口止めとして、新発意に欲しい物を聞きます。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】「其れならバ錢《ぜに》八十と、松葉屋の骨牌《かるた》と、淺草《あさくさ》の米饅頭《よねまんぢう》五つと、世に是より欲しき物は無ひ」 と言へば、「それならば、銭《ぜに》八十文[一両を十万円とすると二千円]と、松葉屋のカルタと、浅草の米饅頭《よねまんじゅう》五つをくだされ。 世の中でこのほかに欲しい物はありませぬ」 と、小坊主(新発…
お七は吉三郎のもとに忍んで行こうとしますが。。。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 方丈《はうぢやう》に行きてみれども、彼の児人《せうじん》の寐姿《ねすがた》見えねバ、悲しくなつて、臺所《だいどころ》に出ければ、 お七は、方丈《ほうじょう》[住職の部屋]に行ってみたのですが、あの児人《しょうじん》(吉三郎)の寝姿が見えないので、悲しい気持ちになりながら、台所に出ました。 姥《うば》目覚《めさ》まし、「今宵《こよひ》鼡《ねずミ》めは」と、呟《つぶや》く片手《かた…
夜中に急な葬式が入り、寺の僧はみんな出払ってしまいました。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 何《いづ》れも驚《おどろ》きて、姥《うば》は年越《としこ》しの夜《よ》の煎大豆《いりまめ》取り出すなど、天井《てんぢヤう》の有る小座敷《こざしき》尋《たづ》ねて身を潜《ひそ》めける。(虫出しの雷が鳴り響くので、)誰もが驚き、庫裏姥《くりうば》は、節分の夜の煎《い》り豆を取り出したりして[食べると雷除けになるという]、天井のある小座敷を探して身を潜めました[二重天井があ…
両思いとなったお七と吉三郎ですが、なかなか密会するチャンスがやってきませんでした。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 虫出《むしだ》しの神鳴《かミなり》も褌《ふんどし》掛《か》きたる君様《きみさま》 虫出しの雷様(立春後初めて鳴る雷)[冬眠中の虫が音を聞いて出てくることから]も、愛しの君様(吉三郎)と同じようにフンドシを締めているから、親近感があって怖くない 春《はる》の雨《あめ》、玉にも貫《ぬ》ける柳原《やなぎはら》[『古今和歌集』僧正遍照より]の辺《あた》…
運命的な(?)出会いをしたお七と吉三郎ですが、、、。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 猶《なを》思ひ勝りて、忍び/\の文《ふミ》書《か》きて、人知れず遣ハしけるに、便《たよ》りの人替ハりて、結句《けつく》吉三良 方《かた》より思惑《おもハく》数《かづ》/\の文送りける。 お七は、ますます恋する思いが募《つの》って、ナイショのラヴレターを書いて、誰にもバレないように吉三郎に送りましたが、いつのまにか送り主が入れ替わって、なんだかんだ吉三郎の方から恋する思いの数…
火事から逃れるため、吉祥寺に避難したお七さんと母親。 『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】【現代語訳】 折節の夜嵐《よあらし》を凌《しの》ぎ兼ねしに、亭坊《ていぼう》慈悲《ぢひ》の心から、着替《きが》への有《あ》る程《ほど》出して貸されける中に、 この時季の夜風の寒さに、誰も耐えきれないので、住職は慈悲の心から、ある限りの着替えを出してきて、皆に貸し出しました。 黒羽二重《くろはぶたへ》の大振袖《おほふりそで》に梧《きり》銀杏《いてう》の並べ紋《もん》、紅裏《もミうら》を山道…