〈掃きだめに靏〉 このことを考えていると、どうしても触れずにはいられないことがある。おそらくは松崎明が最後に公に黒田を批判したのは、二〇〇一年九月一一日のいわゆる「同時多発テロ」をめぐってであろう。黒田は、マンハッタンの世界貿易センターのツィンタワーへの航空機での突入、二棟のタワーの崩落をイスラム戦士の偉業として、「芸術的」とまで讃えたのであった。この闘いは、アメリカ帝国主義本国への歴史上初めての痛打であり、アメリカ帝国主義の「終わりの始まり」を画した、と。 だが、この評価を松崎明は痛烈に批判した。松崎の胸の内をすべて推しはかることはできない。ツィンタワーでは、二六〇六人が死亡したとされている…