小さな頃の私は、寒い冬の日に 母と一緒に街角の屋台で売られている 「おでん」の香りに誘われていた。 その温かくて優しい香りが、 まるで幸せな魔法のように心を包んでくれた。 家計が厳しい時期も、 母はいつも心を込めて 「おでん」を作ってくれた。 いつもひとつだけ入っていた、たまご。 私の楽しみだった。 安い材料だけど、美味しくて温かい食べ物。 その中には、間違いなく家族への愛と 思いやりが詰まっていたように感じた。 貧しくても心は豊かな家庭だった。 大人になった今でも 忙しい毎日、ストレスや悩みに 押しつぶされそうな時、 冷たい風に吹かれ夜道を歩くと ふとした瞬間に思い出す。 母が笑顔で「おでん…