はじめに 近年、深刻な人手不足が叫ばれる一方で、実質賃金が上がらないという逆説的な現象が生じています。まるで「働けば働くほど貧しくなる」という逆転現象が起こっているかのようです。この背景には、30年以上にわたる日本経済の低迷が関係していると考えられますが、それだけではありません。この奇妙な現象の裏には、さらに複雑な要因が絡み合っています。 非正規雇用の増加 近年、正社員比率の低下とともに、非正規雇用労働者の割合が大幅に増加しました。非正規雇用の平均賃金は、正社員の約半分にとどまっています。総務省の労働力調査によると、非正規雇用労働者数は、1980年代半ばから増加傾向にあり、2022年には3,6…