哲学者、批評家。専攻は現代フランス文学・思想。
1948年、島根県松江市に生まれる。松江高専、京都大学文学部文学科を卒業。その後、パリ第八大学において文学科で修士論文、哲学科でアルトーをテーマにした博士論文を提出、博士号を取得(このときの指導教官はジル・ドゥルーズ)。
現在、立教大学現代心理学部(映像身体学科)教授。
大阪の上町台地と東京の江戸前島は地形として似ている。豊臣秀吉はその類似に着目し、江戸を東の商都とさせるべく、関東奥羽支配の拠点とするべく徳川家康に国替させたのだろう。 漢典 詩歌への批評眼はすばらしいが社会へ目を向けると表層しか捉えられておらず紋切り型の稚拙さが目立つ。 こうして日本社会はことばの「皮膜」に覆いつくされ、息が自由にできなくなってゆく。隠喩の深みから換喩へ、垂鉛から皮膜へ、とめどなく詩も俳句も横滑りする時代がとっくに始まっていたのである。(恩田侑布子『星を見る人』春秋社) 「有季定型は油断すれば予定調和になる。季語に足をとられるな。無季でなければ言えない世界がある。遠くを目指せよ…
8/1(火) 通所146日目。 8/2(水) 通所147日目。 8/2(水) 金井美恵子『タマや』(河出文庫 1999.6)を買った。 8/3(木) 病院。 8/4(金) 通所148日目。 8/4(金) 神は目を閉じた。誰かに祈ることさえできたなら。 (ロン・カリー・ジュニア『神は死んだ』藤井光訳 白水社 p33) 懐かしく思って泣いてしまいそうなものなど、一つも思いつかなかった。 (p40) 衝動があって、行動がある。それだけなんだ (p67) 崇拝の対象になることは排除の最たるものなのかもしれない、などとは思いもよらなかった。 (p147) 僕と話をする数少ない人たちは、何か間違ったことを…
今年のインフルエンザワクチン接種、迷いましたが職場で申し込むことに。先日、高1Aが(コロナでなく)インフルエンザで学級閉鎖になりましたし、高3授業担当者としては念のためというのが筋でしょうねぇ。 7時半学校入り、始業前は時間割業務、京大特講の板書準備。本日は学校説明会(F校会場)の開催日で、校内には小学生・中学生とその保護者が大勢。で、説明会の司会運営その他で少なくない先生方が体育館に張り付きになります。しかも本日は中体連の新人戦も行われており、中学運動部の顧問が引率出張で不在。時間割変更が大変……というか、授業に割ける教員の数がギリギリで、私、一面識もない中3の数学テストの監督に駆り出されま…
前日の日記を翌日に、というのを5日も続けていますが、これは少なくとも63回生(中3)で初めてクラス担任をもって以降は初めてのこと。割と近い位置で生徒と接している場合は、アップした後で後悔しないで済むかどうか確認する情報の「寝かせ」が1~2週間要るかなぁ、という感覚です。今年度は数年前から引き続いて担任団所属のない時間割係(教務部主任)で、高1漢文は週1回のモブ授業、高3現代文は国語メインですが何しろ学年とは今年度が初対面、という状況ですから生徒との距離がだいぶ遠くて、「寝かせ」を意識する必要性が殆どないんですね。 時間割係、向いてないことはない(「よし・よろし・わろし・あし」の「よろし」レベル…
そう言えば、今は「放生会」の最中ですか。「お化け屋敷」に「見世物小屋」に。 2週間ほど前、高3某クラスの授業。10分前に黒板清掃・板書準備のために教室に入ったら、中央付近で男子生徒数人が集まってこそこそ話をしているのが聞こえて来たのですが、それが「18禁なのに……」「熱海に行ったら……」と来たら「秒」で理解は成る、「『秘宝館』に行ったのっ!?」 頷く生徒、「ううう、羨ましい!」と天を仰ぐ教員。私、熱海は未経験なのです。8月の「松濤美術館」特別展18禁コーナーでほんの少しだけ味わったのも記憶に新しい「秘宝館」。授業が始まってから、生徒に「『秘宝館』と『見世物小屋』とだけは早い内に経験しておこうね…
今回の記事はpdf形式でダウンロードできます。 ダウンロードはこちらから。 子どもの能力と潜在性 2023.9.10 飯田東宏 最近「遊びは学び」という言葉を小耳に挟みました。「遊びの中には学びがたくさんあって、子どもたちは遊びを通して成長しているんです!だから、遊びは大事なんです!」ということを発信していきたいのでしょう。私もこの意味に対しては概ね賛同するのですが、私はこの言葉が正直苦手(というか嫌い)です。なぜ苦手なのか、それは「遊びは学び」という言葉が「学びのための遊び」という意味を含んでいるように聞こえるからです。「いろんな力が身につく、だから遊びは大事」なのでしょうか。「人の話を注意…
先日の渋谷「LATURE」のお礼なのか、70回生Yくんから自宅届け物が。段ボールには大きく「一升瓶」と大書されており、それだけでは何か分かりませんでしたが、取り出してみればどうやら焼酎のようで、ラベルには「兼八」の文字。裏返して確認したら麦焼酎とのことだったのですが、それを読んで、ふと、自分が人生で一度も麦焼酎を(本当に一滴も)口にしたことがなかったという事実に気づきました。経験済みなのは、芋・蕎麦・栗・紫蘇・泡盛(準米焼酎)のみ。この年でお酒絡みの初体験が出来るって嬉しいですね、楽しみ。 思い返せば、大学時代に最初に覚えた焼酎は「雲海」で、蕎麦がデビューでした。巣鴨のアパート下にあった蕎麦屋…
今回の記事はpdf形式でダウンロードできます。 ダウンロードはこちらから。 「インクルーシブ教育」に感じる違和感 〜多様性とドゥルーズ〜 飯田東宏 2023.9.3 勤務先の職員会議で「多様性を認め合うことが大事です」という話がでてきた。しかし、多様性は認め合うものなのだろうか?また、私はどうしても「インクルーシブ教育」という言葉に小さな違和感を感じてしまう。どうしてなのだろうか? 最近の教育界隈では、「多様性」が流行り文句のように叫ばれている。マジョリティとマイノリティの対立が社会だけでなく教育現場においても顕在化し続けている。そんな現代において、多様性について考えてみることは大きな意義があ…
4時起床、書斎で添削の残り。入浴後に出勤、7時半学校入り。1~3限がセンター評論演習で教材は山本健吉。07年本試験の「日本の庭について」。山本健吉に関しては、本当は88年本試験で出題された『俳句の世界』の方が文章も問題も面白いんですけれども……。 明日は午前中に2コマ(今日と同じ山本健吉)授業の後、午後に文系東大現代文の特講があります。扱う教材は06年の宇都宮輝夫「死と宗教」で、これとその次の08年(宇野邦一『反歴史論』)とが東大特講半年間の難易度のピークなんじゃないでしょうかね(ちょっと別口で04年の伊藤徹『柳宗悦』という恐ろしいのもありますけど)。 埼玉研修から今は(9月末まで)福岡に戻っ…
毎週日曜日は、この一週間に週刊誌などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 8/6 号 2 冊心眼 相場英雄 実業之日本社 1,980恋する殺人者 倉知淳 幻冬舎 1,540 ◆女性自身「今週の本」: 8/8 号 4 冊腹を空かせた勇者ども 金原ひとみ 河出書房新社 1,760 ③民話を生む人々 広島の村に働く女たち 山代巴 岩波書店 858もっと悪い妻 桐野夏生 文藝春秋 1,…
毎週日曜日は、この一週間に週刊誌などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 7/23・7/30 号 2 冊あなたを想う花(上・下) ヴァレリー・ぺラン 早川書房 各1,980ここに住みたい 堀内誠一 中公文庫 968 ◆女性自身「今週の本」: 7/25・8/1 号 4 冊この夏の星を見る 辻村深月 KADOKAWA 1,900 ②その昔、N市では カシュニッツ短編傑作選 マリー・…
〈ジャン・ジュネ〉 ジュネ、16歳。 晩年のジュネ(右)。友人のジャコメッティと(左)。 ジャン・ジュネ。英語ではJean Genet。ジュネはフランスの小説家である。 〈経歴〉 〈第1章〉0歳〜27歳 メトレと放浪1910年12月19日、パリに生まれる。父親は不詳。7ヶ月で母〈カミーユ・ガブリエル・ジュネ〉はこの子を孤児院に遺棄。13歳までモルバン地方アリニィ村で過ごす。職人の里子になる。小学生時代は成績優秀。小学校を卒業し、13歳で職業訓練所に入れられる。10日目に脱走。冒険と旅を夢見る少年だった。数回の出奔と微罪のために、15歳で監獄される。その後、成人(18歳)になるまでメトレ強制訓練…
こんな夢を私は思い出した。 先の見えない薄暗い廊下を歩いている。なにか塔のような高さのある建物だがひとけはなく、コツコツという自分の足音だけが高い天井に反響している。歩き続けているとやがて分厚い布張りの扉の前にたどり着く。どれくらい歩いたのかわからないが、冷たい風がときおり吹き抜けるので身体の末端の感覚がうすれてきて、瞼も重たい。しかし私はこの扉を開けなければならないと思う。この扉をあける呪文を知っている。ひらく。そこは壁一面にたくさんの本が並べられた図書室のようなところであるとわかる。室内はわずかに明かりがついていて、私はそれをたよりに背表紙をながめやり、一つの書物を手に取る。 * 私たちが…