1960年生まれ。サントリー宣伝部勤務後、翻訳家に。エッセイストとしても活躍。
掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)作者:ルシア・ベルリン講談社Amazon やつはみ喫茶読書会七十一冊目『掃除婦のための手引き書』 日時:2022/06/25(土)開始20:00 終了21:30 課題図書:ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳『掃除婦のための手引き書』講談社文庫 作品内容:毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。道路の舗装材を友だちの名前みたいだと感じてしまう、独りぼっちの少女(「マカダム」)。波乱万丈の人生から紡いだ鮮やかな言葉で、本国アメリカで衝撃を与えた奇跡の作家。大反響を呼んだ初の邦…
ルシア・ベルリンの掃除婦のための手引書は、上半期一番おもしろかった本になったかもしれない。 印象に残った一節に付箋を貼っていったら すごい量になった。 彼女の物語は、とにかく登場人物が秀逸なのだと思う。 子供のころの学校の先生やシスター 断酒会とかアル中女性(多分本人) 毒母、妹、息子などの家族との関係 刑務所の受刑者たち 半分フィクション、半分本当のような話らしいが、 そのせいか情景が生き生きと描かれている。 アメリカという国は知っているけど 馴染みのない国の知らない文化圏なのに、なぜかありありと想像ができる。 驚くような話や痛々しい話もいくつかあったり。 多分またいちから読み直すだろうと思…
「死ぬまでに行きたい海」岸本佐知子のレビューです。 ☞読書ポイント 【感想】~あれれ?あれれ?いつの間に...~ 【つなぐ本】本は本をつれて来る ☞読書ポイント 昔住んでいた場所、子供の時に行った場所、昔の職場界隈など、今どうなっているか気になっている。懐かしい場所を再び訪れてみたい。または、ずっと気になっているけど行けていない場所がある。ちょっとシュールなエッセイを読みたい。なんでもない思い出を失いたくない。 死ぬまでに行きたい海 作者:岸本 佐知子 スイッチ・パブリッシング Amazon 【感想】~あれれ?あれれ?いつの間に...~ 期待を裏切らない岸本さんのエッセイです。「とにかくなんで…
思い出すと、読みたくなってしまう。 岸本さんのエッセイ本は2冊持っているが、どちらも目に入ると気になってしかたがない。 そして、一旦読み始めてしまうと、終わりまで手から離れないのだ。 変わった人の書いた文章というだけではない、何かがある。 この人は、恐らく宇宙人とでも友達になれるのではないか。 そう思わせるものがある。 あるいは、そのまま子供時代に何かのきっかけで戻ることがあっても、それなりに対応できそうである。 同じように、不意に未来に飛ばされても、そこで慌てることなく暮らしていけそうである。 つまりは、我々がしがらみとして自然に持っている「同時代性」のようなものにつかまれていないのだ。 勝…
この本は、11年前、バンコクの伊勢丹にあった紀伊国屋書店で購入した。 ちょうどその頃、タクシン派と反タクシン派との衝突があって、赤Tシャツと黄Tシャツのチームに分かれて、それぞれ夜毎に大宴会のようなことをしていた。 バンコク市街地はところどころにバリケードが築かれ、騒がしかった。 駐在員やその家族は、バンコクに行くのは控えるようにしていたが、騒動が一休みになった隙に、家族そろってバンコク市街地に出かけた。 どうしても、日本の本屋さんに行きたかったのだ。 自宅を出る時はかなり緊張していたが、伊勢丹のあるセントラルショッピングセンターの駐車場に車を入れると、外の騒がしさはまるで聞こえてこなかった。…
短いエッセイを、ぎゅうぎゅうに詰め込んだ一冊! 岸本佐知子さんの本は初読みでしたが、表紙の絵もそうですが、 エッセイ事に、素敵な挿し絵ページがあり、絵にも惹かれて引き寄せられました(*^^)v 本の中身はというと、最初の1ページを読んだときに、 すっかり作者のことが好きになってしまって(一目惚れ)、 友達になりたいな~と勝手な片想い笑 普段あまり口数は少なさそうだけど、周囲のことをよく観察していて、 頭の中ではいろんな面白いことが、止まらないメリーゴーランドのように、 回転し続けていそう。その頭の中のいろいろを、 何時間でもおしゃべりを聞いていたいなぁと思いました! 本の題にもなっている『ひみ…
ひみつのしつもん (単行本) 作者:岸本 佐知子 発売日: 2019/10/10 メディア: 単行本 社会で立派に活躍している人が失敗や妄想や風変わりな自分をネタにしていると 盛ってるんじゃないかとかちょっと自分を落として笑いを取って妬まれたりしないようにしてるんじゃないかとか邪推してしまうんだけど 岸本佐知子もその1人。 あとは三浦しをんとか阿川佐和子とかなんとなく女性に多いような。 それでも行きます KANちゃんのライブのチケットが届いた。 定員の半分以下での開催なのであんまり期待してなかったんだけど結構良いお席だ。 もしかしたら延期になるかも?とためらっているうちに飛行機は取り損なってし…
「『罪と罰』を読まない」を読んだ。本書はドストエフスキーの「罪と罰」を読んだことがない岸本佐和子氏、三浦しをん氏、吉田篤弘氏、吉田浩美氏が断片的に与えられる情報をもとに「罪と罰」の内容を推測していく座談会を書き起こしたものだ。 私も今から15年ぐらい前にヨーロッパを鉄道で旅したときに、鉄道での移動時間の間に「罪と罰」を読んだことがある。読んだことがあるというだけで、その細かなストーリーはほとんど記憶に残っていない。ありていに言えば、読み終わった時に「なぜ『罪と罰』がこれほど評価されているか」がピンとこなかったのだけはよく覚えてている。とにかく読みにくかったことは記憶に焼き付いている。 まず第一…
毎年やってきてしまう暑すぎる夏に疲弊している。そろそろ夏やめてほしい。しかも今年は6月から真夏日みたいな気温で街を熱してきたわけなのだから、まだ8月になったばかりであるけれど、もうヘトヘトである。そんなだから愉快な気持ちで街に繰り出していく気にもなれないし、海に行くのもプールに行くのも当然、面倒である。ましてや、オミクロン株の新たな派生型「BA・5」なるものによる「第7波」が猛威を奮っているし。はあ、もういいよ、暑いよ、夏いよ。外に出ないで、とにかくクーラーの効いたお部屋や図書館で涼むのがいい。扉を閉めて、本を読みながら物語のなかで泳ごう。涼しそうな映画のシーンとかでも良いのかもしれなのだけれ…
古本を買った。興膳宏『中国名文選』岩波新書、2008中国名文選 (岩波新書)作者:興膳 宏岩波書店Amazon室謙二『アメリカで仏教を学ぶ』平凡社新書、2013アメリカで仏教を学ぶ (平凡社新書)作者:室 謙二平凡社Amazon野口富士男『風のない日々/少女 野口富士男犯罪小説集』中公文庫、2021野口冨士男犯罪小説集-風のない日々/少女 (中公文庫 の 2-4)作者:野口 冨士男中央公論新社Amazon梅原猛『神殺しの日本 反時代的密語』朝日文庫、2011神殺しの日本 反時代的密語 (朝日文庫)作者:梅原 猛朝日新聞出版AmazonSteven Millhauser『エドウィン・マルハウス』…
入院前後にきっちり間に合うようにしないといけないことが出来て、そちらのほうがドキドキしている。こうやって、怖いものを分散したりずらしたりする、いつも。そのやりくちも自分で分かってきている、その自分を見ながら別の手を編み出そうとし続けている自分もいる気がする。 怖いものというのはほんとうに個別具体的で、それぞれに聞いてみないときっとほんとうに分からないし、誰も誰かの怖がるものをばかに出来ない。わたしの怖いものや怖がり方は滑稽だなと思う。ほかのひともそうだと思う。 すっかり生理不順になっていたけれど、入院前に来てかなり安心した。体調がいつもまずここに現れるし、やっぱりとても分かりやすくて、信頼して…
www.shinchosha.co.jp 書誌情報 作品紹介 イチオシコメント ネタバレ注意! 読後のひとりごと 書誌情報 アンドレイ・クルコフ 著 沼野恭子 訳 新潮社 作品通し番号*1 10レビュー番号 2 作品紹介 作家のなりそこないヴィクトルは、動物園から引き取ったペンギンのミーシャと暮らしている。存命の著名人の死亡記事〈十字架〉を書き溜める仕事を始めるが、不可解なことに、記事にした人物が次々と命を落とす。不安を募らせるヴィクトルのもとにある少女が転がり込んできて、奇妙な三人生活が始まるが— 。 イチオシコメント この猛暑の夏に、ゾワワとなる肝試し体験したい人はどうぞ!ペンギンとの生活…
『すべての月、すべての年』 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 『掃除婦ための手引書』につづくルシア・ベルリンの短編集である。訳も前書同様に岸本佐知子さん。 確かに面白いのだが、半分ほどで疲れた。筆者の分身らしき語り手や主人公に何か思い入れがあるわけではない。およそ共感も想像もできぬ世界である。では、何が読ませるのか。それは、畳み掛けるような文章力だと思う。少しも無駄のない、時には省略しすぎだと思うほど緊張した筆致。これしか考えられない。 残り半分は少し間をおいて読もう。返却するまでの時間があればの話しだが。 すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集作者:ルシア・ベルリン講談社Amazon…
魂の作家による19の短編。 ロングセラー『掃除婦のための手引き書』のルシア・ベルリン、待望の新邦訳作品集。『掃除婦のための手引き書』の底本である短編集 A Manual for Cleaning Women より、同書に収録しきれなかった19編を収録、今回も傑作ぞろいの作品集です。〈収録作品〉 虎に噛まれて/エル・ティム/視点/緊急救命室ノート、一九七七年/失われた時/すべての月、すべての年/メリーナ/ 友人/野良犬/哀しみ/ブルーボネット/コンチへの手紙/泣くなんて馬鹿/情事/笑ってみせてよ/カルメン/ ミヒート/502/B・Fとわたし 前作に引き続き、日本人作家にはなかなか書けないタイプの…
いぬ posted with ヨメレバ ショーン・タン/岸本 佐知子 河出書房新社 2022年07月21日頃 売り上げランキング : 楽天ブックスで探す Amazonで探す Kindleで探す 出る本、ショーン・タンの絵本「いぬ」(7/21)出ます。岸本佐知子さんの訳。これもう表紙からたまらないなぁ。ショーン・タンの絵本や絵に出てくる人間以外の生き物たちには強く惹かれるものがある。アマゾンの紹介文を。
信長、鉄砲で君臨する 作者:門井慶喜 祥伝社 Amazon 恋文屋さんのごほうび酒 (角川文庫) 作者:神楽坂 淳 KADOKAWA Amazon もう一杯、飲む? (新潮文庫) 作者:角田 光代,島本 理生,燃え殻,朝倉 かすみ,ラズ゛ウェル細木,越谷 オサム,小泉 武夫,岸本 佐知子,北村 薫 新潮社 Amazon 鎌倉幕府と北条義時 見るだけノート 作者: 宝島社 Amazon
『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子・三浦しをん・吉田篤弘・吉田浩美(文春文庫) 何となくは知っているけれど何となくしか知らない名作を、最低限の知識だけをもとに、読まないままで内容を推し量ってみようという、聞くだけで面白そうな企画です。最後には読んだうえでの読後座談会もあります。わたし自身は『罪と罰』は読んだことがありません。 ざっくりした知識と最初の一ページ(+ヒント用の任意の数ページ)をもとにあれこれ推理する様子は、「九マイルは遠すぎる」のようでもありました。 漫画『社長島耕作』を内容推測に援用したり、思いつきがドンピシャと当たったりするものの、それは化石から恐竜を復元するようなもので、実際…
この夏は仕事のスケジュールをゆったりめに組んでいるのと、いつのまにやらいただきものの図書券とか商品券とかAmazonギフトカードとかがめちゃくちゃ溜まっていた!ので、まとめて本を買う楽しい遊びをしました。「夏っぽい本(表紙が海、タイトルに「夏」が入る)1万円分」、「科学書1万円分」、「図鑑1万円分」などなど。 「世界文学1万円分」は5月に買ったのだけれど、 ・単行本コーナー、それも新刊の陳列をさっと見ただけでほぼ終了してしまった ・図書券を使い忘れてカードで買った ので、今月リベンジしようかなとも思う……「図書券とかで買う」のを目的に本屋さんに来ているのに、手元のスマホで1万円超えないように!…
水中の哲学者たち 作者:永井玲衣 晶文社 Amazon 『水中の哲学者たち』永井玲衣著を読む。 アルキメデスは入浴しているとき、あふれるお湯を見て、はたと閃いた。これが、「アルキメデスの原理」。この本も南の透き通った海をシュノーケリングしているときに、何か真理や法則を閃いた。つーことは書いていない。 沈思熟考もしくは沈思黙考、深く考えることは、水の中を潜ることに似ているから、つけたそうだ。 作者は「哲学対話」のファシリテーターとして哲学の楽しさを広める活動をしている。ファシリテーターとは、単なる司会ではなくMCとかお笑い用語なら回しのようなもの。潤滑油のような存在。 確かに哲学ってむつかしい。…
紙の空から 晶文社 Amazon 「地上で読む機内誌」をコンセプトに、世界各地の自然や文化を紹介する雑誌〈PAPER SKY〉に翻訳連載された短編を集めたもの。旅にまつわる小説を、との編集部の提案で始まった連載だが、「その都度その都度面白いと思った作品を選んできた」こともあり、やや旅というテーマからは逸れたものも散見される。とはいえ、鉄板のミルハウザーやダイベックに加え、カズオ・イシグロの貴重な短編も読めるので、それはそれでよいのかもしれない。とはいえ、ミルハウザーとダイベックに関しては少年小説アンソロジーに、カズオ・イシグロについては老人小説アンソロジーに収録できなかった余り物の再利用といっ…
死ぬまでに行きたい海 作者:岸本 佐知子 スイッチ・パブリッシング Amazon 全作品読破を目指している岸本佐知子さん。この人、天才的な表現力と発想力があるよね。笑える、笑えるっ!この本、まだ読んでなかったなー!♪岸本さんが、「死ぬまでに行きたい海」ってどこだろう?と思って読んだら、忘れたっ!っていうから呆れるなあ!(笑) 文芸誌『MONKEY』創刊号から7年あまり続く岸本佐知子の人気連載「死ぬまでに行きたい海」がついに単行本化!」そのエッセンスを紹介しよう。 ・中学高校のことは濃密に覚えているのに、大学にいた四年間の記憶は、かき集めてもなぜか三日分ぐらいしかない。ただ何となくぶざまだったと…
『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』高原英理編著(講談社) 長年にわたってゴシック関連の仕事をしてきた著者の、ゴシック文学アンソロジー。 「獣」モーリーン・F・マクヒュー/岸本佐知子訳(The Beast,Maureen F. McHugh,1992)★★★★☆ ――わたしは十三歳だった。父とわたしはミサに行くところだった。気恥ずかしくてただ普通に歩くことしかできなかったが、もういちど七歳に戻って守られたかった。わたしは教会に入って祈った。観覧席の下の空間は暗く謎めいていた。モップ、雑巾、燭台。何かがかさりと鳴った。もしかしたら暗がりの中に誰かいるのかもしれない。わたしが父…