小説家。 1917年4月18日、生まれ。1986年11月12日、死去。 神奈川県横浜市出身。島尾伸三は長男。しまおまほは孫。 1943年、九州帝国大学卒業。 戦争体験や私生活に題材を採った作品で知られる。 代表作に『死の棘』(ISBN:4101164037)がある。 amazon:島尾 敏雄
詩人・立原道造が死の直前に長崎へ行った際には、いつも一冊のノートが手許にあった。現在「長崎紀行」というタイトルで読むことができるその文は、その瞬間瞬間の詩人の心象や見えた風景を書き連ねていくというスタイルを取っている。それはあとから旅行記として発表するために書き留められたメモにしては長く、しかし帰ってきてからじっくりとまとめられた旅行記よりも短い。ほんとうはこのメモを元に、詩やほかの創作をするつもりだったのかもしれないけれど、これはすでに十分、旅行記として読むに耐えうる強度を持つ。長崎、南方への憧れを持ちながらも山陰本線経由でゆっくりと西に向かう旅程は、眩しくて、きらきらとしている。苦しいほど…
以前紹介した名作「死の棘」が今 ↓GYAO!で無料視聴できます。3月19日(日)まで↓ 死の棘 GYAO!タイトル情報より引用させていただきます。 別離の危機に瀕した夫婦の絆と家族の再生を描いた人間ドラマ。島尾敏雄原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は「伽耶子のために」の小栗康平、撮影は「帝都大戦」の安藤庄平がそれぞれ担当。結婚10年目の夫婦ミホとトシオ。1944年、トシオが特攻隊として島に駐屯したときに、島の娘ミホと出会い、二人は恋に落ちた。二人は死を覚悟するがそのまま敗戦を迎え、そして現在、二人の子どもの両親となっていた。が、ある日、トシオの浮気が発覚。それをきっかけにミホは精神の激しい発…
『死の棘』やっと読み終わった。会社の始業前と昼休みに毎日ちょっとずつ読んでたんだけどそのたびに気が滅入った。夫の浮気が原因で発狂した妻と、その妻と抱き合いながらぬかるみの中を滑り落ちていくようにして自身も狂っていく夫の話。 (今週のお題「最近おもしろかった本」) 死の棘35刷改版 (新潮文庫) [ 島尾敏雄 ]価格: 924 円楽天で詳細を見る ながしには食器が投げ出され、遂にその日が来たのだと思うと、からだもこころも宙吊りにされたようで、玄関につづく二畳のまから六畳を通って仕事部屋に突っ立った私の目に写ったのは、なまなましい事件の現場とかわらない。机と畳と壁に血のりのようにあびせかけられたイ…
名作「死の棘」が今 ↓GYAO!で無料視聴できます。6月4日(土)まで↓ 死の棘 GYAO!タイトル情報より引用させていただきます。 別離の危機に瀕した夫婦の絆と家族の再生を描いた人間ドラマ。島尾敏雄原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は「伽耶子のために」の小栗康平、撮影は「帝都大戦」の安藤庄平がそれぞれ担当。結婚10年目の夫婦ミホとトシオ。1944年、トシオが特攻隊として島に駐屯したときに、島の娘ミホと出会い、二人は恋に落ちた。二人は死を覚悟するがそのまま敗戦を迎え、そして現在、二人の子どもの両親となっていた。が、ある日、トシオの浮気が発覚。それをきっかけにミホは精神の激しい発作に見舞われる…
★★★☆☆ あらすじ 自身の浮気をきっかけに心を病んでしまった妻の面倒を見る夫。 感想 浮気をされた妻が延々と主人公である夫をなじり続ける映画だ。誰の立場で見るかによるが、なんだかずっと針のむしろに座っているようで、居たたまれない気持ちになってしまった。浮気をした相手への嫌がらせや、浮気の疑いのある相手の反応を確かめるために一緒に見るには最適な映画かもしれない。地獄を味わすことが出来る。 ただ人間というものは、ずっと責められっぱなしだと反発したくなるもので、この主人公もつい開き直った言葉を吐いてしまうのだが、妻の「あれ?反省しているはずの男が反論しているよ?」みたいな返しが面白く、そして怖かっ…
2008年3月10日配信の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」です。 http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol23.mp3 しまお:17から22までタイに行ってたんで。 鈴木:タイへ?なんで? しまお:仕事で。 鈴木:あ、仕事なんですか! しまお:はい。友達のアニメ描いてる男の子がタイにいて。 鈴木:それ日本人? しまお:いえ、タイ人。凄く面白いんですけど。その人。 鈴木:どういう人なんですか? しまお:漫画も描いて、アニメも作る人。日本で凄く人気ある人みたいですけど。 鈴木:あ、そうなんだ。日本の雑誌にも描いてるの? しまお:はい、…
海の彼方にニライカナイ(他界)があるとされます ユタだったり、ニライカナイだったり、御嶽(うたき)だったり、霊魂(マブイ)だったり、沖縄ってなんか独特の、神秘的な力が立ち昇る場所です。それがどういう由縁からくるのか、ずっと知りたいと思っていたのですが、とうとう見つけました! 喜山荘一著「珊瑚礁の思考」です。 日本列島をアジア大陸にしがみついているような位置関係で見るのではなく、太平洋に連なるメラネシア、ポリネシアなどの島々のひとつとして捉えようと「ヤポネシア」という概念を提起したのが作家、島尾敏雄でした。小さな島や集落ひとつひとつに大事な神話や習俗が残ってます。島は世界であり、宇宙。なんだそう…
誰も知らない特攻 島尾敏雄の「震洋」体験 作者:馬場 明子 未知谷 Amazon 私は17年前、「幻の特攻艇震洋の足跡」をテーマに、テレビドキュメンタリーを制作した。敬愛する作家の島尾敏雄が、太平洋戦争の時、震洋特攻隊の隊長だった体験をもとに名作を残していたからだ。以来、「震洋」の二文字が心の底に沈み、そのままになっていた。(中略) 導かれるように、「震洋会」の元副会長で「写真集人間兵器震洋特攻隊」をまとめ上げた荒井志朗氏の連絡先が見つかった。(中略) お宅を訪ねてみると、あの時の荒井氏が背筋をしゃんと伸ばした姿で出迎えてくださった。感激だった。「『震洋』のことを書きたい」と話すと、「私が17…
4月18日誕生日の全国35万人の皆さんおめでとうございます (拙句) 燃え上がる愛にあらねど躑躅愛 雅舟 【花】キリシマツツジ 【花言葉】燃え上がる愛 【短歌】さん然と燃え立ち上がるものごころキリシマツツジ咲ける高原 キリシマツツジがいっせいに花を開いた様子が、花ことば「燃え上がる愛」を思い起させます。キリシマツツジか゛咲く高原を歩いた若かりし日を思い出します。 【季語】 霧島躑躅【俳句】 遠き過去霧島躑躅火がつきて 篠田悌二郎 きりしまや葉一つなき真盛 富安 風生 松伐りし山の広さや躑躅咲く 飯田 蛇笏 【三行詩】 燃え立つように 匂い立つように 緋赤の花に溺れる 【万葉歌】 みなつたふ磯の…
いつも通り起きる。 身体と頭が重い。 薄曇り。 食事の準備と洗濯。 六角さんのラジオが久し振り。 にやにや。 オーブンレンジが届いた。 初めて使う前の空焼きをする。 立ち込めるビニール臭。 たこ焼き器も届く。 開梱だけで何だかくたびれてしまった。 今年初めて自転車に乗る。 まずはタイヤに空気を入れる。 ライトも点いた。 さぁ出発。 手袋が要らないくらい暖かくて驚く。 図書館に本を返して、ぐるりと町をひと回り。 公園の入口にあった雪山が融けて無くなっていたので入ってみる。 出口は微妙な高さの雪が残っていたのでやや強引に突破。 近くの食品スーパーで買い物をして帰宅。 昼は無印のバウムクーヘン、ホワ…
12.写真に残る港湾、船舶など(※市町村名は2024年1月現在) 港湾については利用した所が殆どですが、たまたま通り道にあった港湾も含めてあります。 なお、船舶は実際に利用したものです。 [24] 鹿児島県⑩ 加計呂麻島(瀬戸内町-2) 加計呂麻島は島尾敏雄氏の「出発は遂に訪れず」を読んだことにより、彼は奄美大島を走る際には必ず渡ろうと思っていたようです。 私達は古仁屋から瀬相港に入り、一旦北上して実久に向かい折り返して諸鈍まで走って池間港から古仁屋に戻りました。 彼はこの島に渡り、「北の実久に源氏、南の諸鈍に平家の言い伝えがある事を知った」と私に話していた。 《 瀬相港 》 1996.02.…
何しろアマゾンレビューからは閉め出されているし、読書メーターにはこの本の登録がないしするのでここに書いておく。最初のほうはいかにも身辺雑記や天気の話などが多かったが、自作解説や他の文学者の話になると面白くなる。子母沢寛が『戊辰物語』をほとんど一人で書いた話とか、企業人の伝記を書いた話とか、『庄野潤三全集』の月報の島尾敏雄の文章の話とか、小説書き以外には特に関心のない丹羽文雄とかで、人が出てこないと面白くないようである。 (小谷野敦)
朝7時半頃、一度目が覚めたけれど、もう少し寝たいと布団にもぐりこむ。次に目覚めたら9時を過ぎていた。久しぶりにゆっくりと目覚める。ご飯を食べつつ、洗濯機を回す。通常の洗い物と、そのあと、もう1回まわす。冬物トレーナーたち。そろそろお役御免になりそうなので。 洗濯ものをベランダに干し、それから小説とエッセイをリュックにいれて新宿御苑へ。今日も盛大に混んでいた。横目にパスポートで入園。日向の、端の方のあまり人の多くない場所に陣取る。敷物を敷いて、ゴロゴロと横になり、島尾敏雄さんの「死の棘」を読み始める。思ったよりも長編。焦ることなくのんびり読もうと思う。途中、昼寝をしたり、lineがきたり、電話が…
3月の大相撲大阪場所で青森県五所河原出身の新入幕の尊富士(24歳)が優勝した。 新入幕力士の初日からの11連勝は大横綱・大鵬と並ぶ大記録だ。ケガを押して強行出場し、そのまま優勝した。新入幕力士の優勝は110年ぶりとされている。初場所から10場所目での優勝は史上最速というおまけでついる、記録づくめの優勝だ。 100年前とは1914年。その力士は両國勇次郎( 1892年 3月18日 - 1960年 8月10日) である。両國については、この「名言との対話」で過去に取り上げている。 秋田県大仙市出身。1909年初土俵。新入幕の1914年5月場所で9勝1休でいきなり優勝を果たす。1915年に東関脇に昇…
東京学芸大学近代文学ゼミ(3つの自主ゼミ)の機関誌『青銅』には、3本の村田沙耶香論以外にも多様な論が載っている。小林秀雄論(「様々なる意匠」論)が2本も掲載されているのも驚きだけど(水準はともあれ)、他には 夢野久作・坂口安吾・湊かなえ・山田風太郎・漱石・小川洋子・高瀬準子・朔太郎・島尾敏雄・荻尾望都についての論も載っている。(ブログにも記したけど)高瀬準子は芥川賞を獲った「おいしいごはんがたべられますように」は先般読んだばかりだけど(とても面白い作品!)、それも論じられるような時代なンだナ、スゴイ! この調子で今後もガンバってもらいたいネ。 卒業生でまだ『青銅』の定期購読者でない人は、ヒッキ…
いろいろな所で見かけるレンガを拾っては持ち帰る。バーベキュー台を作るのだ。魔王にも見かけたら拾って、と頼むと滝の集落にたくさん棄ててあると教えて貰った。 まだこれだけ。
『塔の物語 異形アンソロジー タロット・ボックスⅠ』 井上雅彦(編)/2000年/305ページ 私は、今ここに、少年の日の密かなる愉しみを再現しようとしているのかもしれない。タロット・カードを創ろうというのである。テラー博士よろしく、オムニバスの物語を編んで。一枚のカード、一枚の象徴(シンボリズム)が、一冊のアンソロジーとなる。その最初の手札が、〈塔〉のカードだ。〈塔〉の物語、〈塔〉づくしによる、絵のない絵札――。(編者解説より)煙突、高層ビル、奇怪な建造物、市庁舎、夢の中の塔……。さまざまな〈塔〉が紡ぎ出す13の物語。名手が編む傑作ホラー・アンソロジー! (裏表紙解説文より) 書きおろしホラ…
この日記でもたびたび書いてきたことだけれど、いまのぼくの身分はあるデパートの従業員である。店の中をいつも、ここからあっちへこっちへとせわしなく歩き回っている(だからしばしば、1日の歩数は8000歩を数える)。そして商品が入った箱を西へ東へと運ぶのが仕事だ。勤務中、ぼくはこの脳をフル回転させていろんなことを考える。もちろんそれは基本的には仕事に絡んだことなのだけれど、同時にさまざまな夢想に浸ってしまうこともあるのだった。あるいは妄想やバカバカしい、島尾敏雄の言葉を使えば「夢屑」的なことがらを。今日は早番だった(10時から5時まで)。ランチタイムに、いったい午前の仕事中に自分が何を考えたのか具体的…
副題:娘たちの歳月 著者:梯 久美子 出版社:文藝春秋 2022年10月刊 1,980円(税込) 277P ご購入は、こちらから9人の女性作家の生涯をたどり、それぞれの父親との関わり方に注目して、人生と作品への父の影響を明らかにする評伝集である。著者の梯(かけはし)氏が取りあげた9人の名前と肩書きは、次の通り。 渡辺和子 修道女 齋藤史 歌人 島尾ミホ 作家 石垣りん 詩人 茨木のり子 詩人 田辺聖子 小説家 辺見じゅん 歌人・作家 萩原葉子 小説家・随筆家 石牟礼道子 作家・詩人
海上特攻隊「震洋」の出撃寸前に、日本の敗戦がやってきて、島尾敏雄は生きながらえた。軍は解体、島尾は、現地の女性と結婚し、奄美大島の図書館長に任じられた。人生極限の変化だった。 島尾は日記をつけた。その中にこんなことが書かれていた。 1月23日 妻が夕方、庭の草を引きながら泣いていた。ちょっと胸騒ぎがした。どうしたのかと聴いても、どうもしませんという返事しか返ってこない。妻がこっそり泣くということは尋常ではない。胸がつぶれる。おそらく私のありようが寂しい思いをさせるのにちがいない。私は自分の心をどう処置していいのか困惑しきっている。季節も人も、そのまま受け入れることができて、いずれ滅びるという考…
島尾敏雄と吉田満の対談記録の後に、吉本隆明 も意見を述べている。 「わたしたち戦争の年代が、島尾敏雄を頼みと感じた理由のうち、いちばん大きなものは、彼が戦争体験の表現を、自分の宿命的な資質の根にとどくところまで追いかけ、描き切った点にあった。戦争はいつも個人の手の届かないところからやってきて、個人を巻き込んでいく。戦争に出会うということは、たまたまその時代に生まれ合わせた、偶然に過ぎない。 ‥‥‥ 島尾敏雄の秀作「出発は遂に訪れず」は、人間魚雷をあやつる特攻訓練を積み、一度出撃すれば必ず死である行為を迎えるために、心のためらいを自死のイメージにまで高めて行く葛藤を経たのち、いよいよ出撃を迎える…
今日は天気が悪いのは昨日から知っていたので、ぐずくずと昼前まで眠って「しま」に起こされる。「しま」は便通も良く見違えるほど元気。 大島渚論を書こうとしてコピーの束と本ばかり増える。中原弓彦の「喜劇映画の衰退」の冒頭の「見逃した方が多いと思うが、いつか、テレビで」に変わるのは『笑殺の美学』からだった。冬樹社の『山川方夫全集』も竹内好訳の『魯迅文集』も晶文社の『島尾敏雄作品集』も幾ら安いからといって揃いで買わなくてもいい気もするのだが(特にブツが郵送で届いた折には強く思う)、そうしないと気が済まないのだからしかたがない。DVDで『絞死刑』を見る。1967年11月16日の小林信彦の日記には『島尾敏雄…