【平家物語34 第2巻 教訓①】 陰謀荷担者のほとんどすべてを捕え、 これを幽閉した清盛は、 まだそれでも気の済まないことが一つあった。 いうまでもない、陰謀の本当の元凶というべき法皇を、 目と鼻の先に野放しにしていることだった。 とにかく相手は法皇であって、西光や成親とはわけが違う、 うかつに手の出せないことが、 余計、彼を焦々《いらいら》させていたのである。 やがて清盛は、 赤地錦《あかじにしき》の直垂《ひたたれ》に、 黒糸縅《くろいとおどし》の腹巻、 白金物《しろかなもの》打った胸板《むないた》を着け、 愛用の小長刀《こなぎなた》をかいばさんだ 物々しい装立《いでた》ちで、側近の貞能を呼…