白い雪がやわらかく積もった朝。その静けさの中で、ふと風が香りを運んできました。梅の花の、あのほのかな甘さです。 うちのワンコは足跡を残しながら、白と赤のコントラストを見上げるようにして立ち止まります。その横顔に朝の光が差し、毛先がふんわりと輝く――まるで冬と春の境目のように。 しばらくすると、どこか遠くから「ホーホケキョ」。思わず立ち止まって、耳を澄ましました。まだ雪が残るこの季節に、もう鶯が鳴くなんて、少し早い春の便りです。 ワンコは首を傾げ、「いまの、なあに?」と言いたげに私を見上げる。私は微笑んで、「春が来る音だよ」と答えました。 季節は、いつだってゆっくりと変わるもの。でも、犬といっし…