品田遊 著『名称未設定ファイル』(朝日文庫版)を読みました。インターネットを職業にしている人が書いた小説が読める貴重な一冊です。インターネットを本業にしている人なのだからインターネットの長所や輝かしい未来を描いてもよさそうなものですが、品田氏は描きません。むしろ、現代日本人のインターネットの使い方がいかに滑稽であるかを描いています。本書で面白いのは、インターネットやモバイル機器を題材にしたものだけでなく、SF短編も含まれていること。著者の反出生主義が垣間見える「過程の医学」、誰も不幸にならない世界が実現するまで世界をリセットし続けている「ピクニックの日」、惑星の時間が解凍される「クラムゲートの…