映画女優。「永遠の処女」と呼ばれる伝説的スター。
1920年6月17日生まれ。 本名:会田昌江。義兄に熊谷久虎がいたことから家に映画人が自然で出入りし、半ばスカウトのような形で日活へ入社。山中貞雄監督の「河内山宗俊」で注目を浴び、日独合作映画「新しき土」ではヒロインに抜擢される。 伊丹万作、小津安二郎、黒澤明、吉村公三郎、木下恵介、今井正など、多くの監督の名作に出演。引退後は一切マスコミに姿を見せていない。 2015年9月5日、肺炎のため死去。享年95。
入院して四日目の夜、看護婦たちが用があり、私だけが父の枕元に立っている短い時間があった。父が私の顔に目を向けていた。不意に突きあがるような思いが胸に来て、私は父の頬に顔を寄せると、“父が好きだ”と言った。”好きでたまらないのだ”と言った。たまりにたまったものが、一時に堰を切って流れ出したように、私はその言葉を繰り返した。 父は一寸うなずくと、笑みを浮かべた。目と口元に浮かんだ、やさしい、何とも言えぬ嬉し気な表情、その純な幼児のような嬉し気な表情を目にした瞬間、私の目から涙が溢れた。 これは広津和郎の娘・広津桃子が書いた父の追悼文からの引用である。 なぜこの文章が印象的だったかというと、あの小津…
濱口竜介監督が「ユリイカ2016年2月号 特集=原節子と〈昭和〉の風景」に「『東京物語』の原節子」という文章を寄稿していて、これがなかなか静かな熱量の籠ったいい文章であった。「静かな熱量」というのは濱口監督の映像作品にも共通して受ける感銘である。 濱口は、『東京物語』の最終部における原節子と笠智衆のやりとりを見て、原節子がカメラを正面にして見せる表情に驚いたといい、映画創りを続けながら、今も驚きを深めているとまでいう。 一体、人はカメラの前であのような表情をし得るものなのだろうか。明らかに演技をしているにもかかわらず、いやもしかしたらそのことによって、ただ信じることしかできないような人がそこに…
六本木一丁目には東京倶楽部という明治から続く社交クラブがあるそうだ。加入の条件は「紳士であること」だって! *** 「品行が悪くても品性が正しければいい」とは原節子の言であるが、こういう人格はかなり特殊で、それというのも品性は個別の品行によって時をかけて醸成される、というのが大方のパターンだからだ。 したがって「品行が悪くても品性が正しい」という人にはそうはお目にかかれないし、もしいたとすればそれは、やはり並の人間ではないだろう。 ・・・と、あろうことかここまで書いてきて「そうか、いずれにしても品性が正しいからいいのか」とようやく気がついた。これは、どちらかというと「付き合う側に品行の悪さに目…
(監督:小津安二郎、脚本:野田高梧、小津安二郎、出演:原節子、笠智衆、月丘夢路他/松竹/1949年) もはや何もかも語り尽くされた感のある古典的作品だが、個人的備忘録として感想を記す。 原節子が強烈。原演じる紀子の激情をまったく意に介さずスルーし続け、「幸せになるんだよ」と呪文のように繰り返すことで無理矢理嫁がせた後、独り林檎を剝いて俯く五十六歳男やもめを淡々と演じる笠智衆もよい。小津は当初林檎を剝いた後で号泣せよと命じたが笠がそれを拒否しため実現しなかった。実現していれば映画の印象は全く異なった物になっていた筈だし、監督の意図はより明確に伝わったであろう。 この映画が〈親子愛〉、つまり父は娘…
年末は、黒澤明『わが青春に悔なし』(原節子主演)をブルーレイで見て、徳田秋声と嘉村磯多と尾崎一雄を読んだりして過ごしている。あと最近いくら眠っても寝たりない気がするので昼間から泥のように寝た。 『わが青春に悔なし』の原節子は、よかった。というより凄くて圧倒された。公開当時はキャラクターにリアリティがないといって批判されたそうだ。こんな強い女性は日本には実在しないよ、ということだろうか。しかし原節子は実際強い女性だったようで、役柄に見事にはまっていると思った。彼女自身この役を気に入っていたようだ。 嘉村磯多は西村賢太への影響を感じた。尾崎一雄は世評通り「暢気眼鏡」などの「芳兵衛もの」が<調和型私…
昭和12年、原節子はベルリンで舞台挨拶をしていました 昭和12年の初夏(1937)、「原節子・ベルリン写真通信」が「主婦之友」に連載されました。なんでベルリンに行ったかというと、日独合作の国策映画「新しき土」(『Die Tochter des Samurai』)の主役だったから*1。10代の原節子が鏡で自撮りしてます! 「主婦之友」昭和12年7月号 昭和11年、ドイツの旗が有楽町に…。日独防共協定の成立 原節子がベルリンに行く前年(昭和11)、日独合作映画「新しき土」の撮影がすすめられています。(撮影風景はこちらに書きました→10代の原節子「新しき土」 - 佐藤いぬこのブログ) そして昭和11…
不自然な笑顔、ひきつったような無理な笑いなどと言うが、その張りつめた和やかさ、反射神経によるかと思わせるほどの素早い反応に、私の心ははっと動かされる。たとえそれが店員であろうと、同僚であろうと、あるいはまた家族の誰かのジェスチャーであろうと、スクリーン上の原節子の笑みの如く。 元同僚から、唐突に三十年も前の発言をなじられ、一瞬驚いたが、むしろ嬉しくなりまた有難くもなった。何故か。退職後の寂寞の中で、かつての自分がそれほど気にされていたのか、といういくばくかの自負と、かつ又、自分もそうした諸々の砕け散った断片として、辛うじて人々の記憶のどこかに暫しはながらえうるのか、という思いが湧いたのだ。 三…
白血病と公表してから壮絶な闘病治療を行い、順調に回復。その後プールに戻ってきた池江璃花子さんが2年目の今日、オリンピックメドレーリレーの代表に内定したというニュースが飛び込んできました。 リアルタイムで見ていなかったので、YouTubeで探して娘に送ろうと思って観ていたら間違えていて、15歳の時に、RIOオリンピックの代表枠を始めて勝ち取った時の動画だと気づきました。 万事順調な中で成長を遂げ、期待の新生として、私たちがこの「天才スイマー」を認知した時のものでした。 レース前の控室で、屈託のない輝くような15歳の笑顔を見せていました。そして、レース後は喜びの号泣。15歳の無垢な涙が印象的でした…
原節子16才。日独合作映画「新しき土」の撮影風景 ホームライフ 昭和11年(1936)8月号より、日本とドイツの合作映画「新しき土」の撮影風景です。原節子は1920年生まれなので、この時16歳くらい。パッと見たかんじ、16歳には見えませんよね?(映画の中では10代らしく、とっても華奢です。) 「新しき土」の監督はドイツのアーノルド・ファンク 監督はドイツのアーノルド・ファンク。「山岳映画王として世界の映画界に特異の位置を占めている」と紹介されています。 山岳映画王として世界の映画界に特異の位置を占めているドイツのアーノルド・ファンク博士は、撮影技師、女優などを引具して来朝、日本を題材とし、日本…
もう画が出る前のノイズが時代を感じさせてくれるよな~。レコードに針を落とした時のような音だけど、若い人には話しても伝わりにくい音だろうな。タイトルも良いんだよ。食事でもごはんでもない。おい!めし!なんて言えるやつが今の世の中にどれだけいるかわかんね~けど、この映画から70年も経てばすっかり時代も変わって、下手すりゃ母ちゃんが言うセリフになってる家もあるんじゃね~かな。舞台は大阪なんだけどじっくり歩いて見たこともね~から、どこがどう変わったのかなんて、さっぱりわかんね~けど、かなりの年配層が見りゃ、青春時代が蘇るんじゃね~かな。トップギャランなんて~のはまだ新しい部類だろうな。走ってる車もビンテ…
いったい、『東京暮色』に何が起こっているのか。このとき頭をよぎるのが、またしても『暗夜行路』である。 小津作品の中でも最も暗く救いのない印象を与える作品。『東京暮色』というよりは、これでは『東京暗夜』と称したいぐらいである。過去の不倫が物語の伏線となっている点で、この作品は『暗夜行路』の記憶から出発したと考えられなくもない。実際、志賀直哉を崇拝し、私的な交際もあった小津に、『暗夜行路』映画化の勧めはあったらしい。「『早春』快談」で、岸松雄が〈ちょっと聞いたのだけど、小津さん『暗夜行路』をやるのですか〉と質問したのに、小津と野田はこう答える。 小津 まだやるともやらないともきまらない。 野田 小…
「移民党」ここは日本なんだけどね 総理大臣が中国共産党員だし他政治家も 日本を動かしてる企業もあらゆる物 人が中国人と外国人達!どんだけ~ https://t.co/YJoCgUc5Ao— umi 7 (@son24777) 2022年5月14日 なぁーーーるほどねぇー---だいぶ長い記事ですが凄く解りやすいのでサクサク読めてしまう知識として残るわね 大阪が「一帯一路」に組み込まれていた!意味が理解出来たら、大騒ぎして当たり前ですよね!詳しくはこちらのサイトをご覧下さい。https://t.co/yazwm5UIfK https://t.co/0HJqy0WKV1 pic.twitter.co…
「二階=上」に昇る「階段」に意味が生じるのは、このように『暗夜行路』において、である。それは、「不義」という性的な問題と明確に結びついている。そして小津は、その「主題」や作品「原理」を含めて、志賀の「二階」や「階段」を「忠実」に反復しているのである。述べてきたように、両者の関係への視線を遠ざけようとした蓮實のテクスト自体が、皮肉にも両者の近さをさし示しているのだ。 例えば、蓮實は、『晩春』以降の後期小津作品の「二階」を、「女たちの聖域」と見なしている。注目すべきは、その「女たち」が、「たえず二十五歳でとどまりつづける未婚の女たち」だということである。 そこで娘たちは、いささかも変容することはな…
映画『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督の卒論は「ジョン・カサヴェテスの時間と空間」であり、学生時代にレイ・カーニー編『ジョン・カサヴェテスは語る』を読みこんだと述懐している。『ジョン・カサヴェテスは語る』はカサヴェテスが自作について、さまざまな媒体で語った発言の引用から構成されている。 それにならって、シナリオ、チェーホフ『ワーニャ伯父さん』の経糸に、インタビュー、濱口による映画評論や対談・鼎談、『ドライブ・マイ・カー』に対する批評の横糸を織り込み、『ドライブ・マイ・カー』について知っておくべき事柄の引用の織物(テクスチャ―)を織りあげる(引用文献名は、最後尾の「引用または参考文献」リスト…
ボクはこの原作があまり好きではない、ボクが好きでないと思ったところを山田洋次監督は全部省いて映画にしてくれたのは良いのだが、結局オールドクラシック日本映画の撮影現場ものになってしまっている、山田監督は何度同じことをすれば気が済むのだろう、その時代を懐かしみ愛しい気持ちは十分理解できるのだが、残念ながら観客はあまりそれを求めていないような気もする(ボクは好きだが)、、、出水監督は清水宏、小田監督は小津安二郎、北川景子は原節子、、、 沢田研二が志村けんを意識しすぎていてモノマネになってしまっている、志村けんならどうアクションするかをよく知っている人だからこそ巧いこと似せているが、でもそれは必要なこ…
山の手コートが強風なので、うちの方のコートに移動してテニス。 その前に学会の提出物を出す。学会誌で書評をする本を事務局が作ったリストの中から選定するのです。評価とコメントを書くのに2週間ほどかかる。また図書館にもないものは自分で買いました。1冊4000円。その後は5月末にZoomで編集委員会があるのですが、全員僕より若く、研究業績もある人たちで、少しビビッています。Zoomの操作で発言をするときの挙手なども、支部では「どうやるんでしたっけ?」と気軽に聞けるけれど、本部レベルでは耄碌した年寄りとか思われたくないし。 『ドライブ・マイ・カー』で受賞した濱口竜介監督の文才にびっくりしています。また小…
<黎明期> 日本カーリング協会や東京都カーリング協会などのウェブサイト上の資料を参考に、日本選手権が始まる頃までの歴史について簡単にまとめてみた。 ・カーリングは、15世紀~16世紀にスコットランドもしくは北欧の国で始まったと言われている。・特にカナダに移り住んだ人たちが盛んにプレーするようになり、カナダでは国民的スポーツとなっていて、現在の公式ルールは主にカナダで確立したものとされている。・1936年冬季オリンピック(ドイツ:ガルミッシュ・パルテンキルヘン大会)に参加した選手団が、日本にストーンを持ち帰り、長野県の諏訪湖でデモンストレーションを行った。・1970年代後半に、再び北海道で新たに…
今さっき読み終えた『夕焼雲の彼方に 木下恵介とクィアな感性』(久保豊 ナカニシヤ出版)という本は、自分の過去について考えさせられた本だった。 木下恵介は、「二十四の瞳」、「野菊の如き君なりき」などを撮っている映画監督でその1940~1950年代の作品をクィア批評する本だ。 クィア批評は、簡単に言えば異性愛者の世界観で展開する小説や映画を同性愛者の視点で見ていく批評だ。ポイントは人間の欲望の可能性を常に意識して書かれているところだろう。 こう書くと、マニアックな本と思われるけど、ぜひ読むことをお勧めしたい。例えば、僕の様に、事実婚の人に。あるいは、シングルマザーに。 自分は20代の若いうちに女性…
今がいちばん良い季節なのに、超身体が疲れてる。1日の大半休んでるわ。まぁ仕方ない。 ☝️原節子もアベノマスクをしていた
よく、アイドルが公園の噴水タイプの水飲み場で写真を撮らされるが、幼い私は気付いてしまった。 際どい話、その水道の形が男性の性器に見えるから、男性はそれを見て、想像するのだろう。 河合奈保子さんは知っていても、知らない振りで、蛇口の前で髪を手に掛けて笑顔だったが、山口百恵ちゃんは覚悟が出来てるなと感じた。 何故なら目を瞑って水を顔中に浴びたからだ。 宮沢りえちゃんのヌードより、余程この方の方がエロチックで、色気があるなと、感じていた。 後、大人だ。 人類は幼稚化していると前にも言ったが、昔のアイドルの方が同じ年でも、10歳くらい年上に見える。 老けてるのではなく、大人なのだ。 今のアイドルは30…
今回は2枚組の音楽アルバムについて取り上げたいと思います。今回は25枚紹介する記事の前編、ということで、分かる人には何の記事の前振りか判るかと思いますが。 世の中、様々な2枚組の音楽アルバムが存在してきました。筆者はCD文化を長らく送ってきた者なので、特にCDの2枚組というものに多く遭遇してきたんですが、通常のCDケースよりもずっと分厚いケースに収められた2枚組アルバムというのは嵩張って取り回しがやりづらい反面、その分厚さによって「普通のアルバムと違う、なんか特別な存在」みたいなものを感じたりもしていました。時代が進んで、1枚組のアルバムとさして変わらないケースに2枚を収める形式も多く出てきま…
娘の結婚や、死(未亡人、法事や葬式)というテーマは 晩年の小津作品に共通していますが その中でも本作のラストでの火葬場のシーンは 死ぬということ、この世からいなくなるということを強く感じます 小津特有の、同じ繰り返しを多用する演出やセリフ回し 「暑い暑い」と言いながら、汗一つかかない能面のような表情 ロボットのような仕草にも不自然さは一切ありません カメラは中井朝一 宮川一夫もですが、天才を超えてもう神の域ですね(笑) 冒頭京都のバー、北川(加東大介)という男が 鉄工所を経営しているやもめ、磯村(森繁久彌)に 兄の造り酒屋で小早川家の(長男の未亡人) 秋子(原節子)を紹介します 秋子はそれが縁…
『青い山脈』が前編で、『続・青い山脈』が後編です。 全部で3時間くらいの作品ですね。 良い映画でした。 青い山脈 原節子 Amazon 脇役陣が光ってますね。 主役級4名がややシリアスめな役回りなので、脇役がコメディ要素を引き受けることで全体が明るくなってます。 個人的に好きな脇役は笹井姉妹で、姉(芸者)役の故・木暮実千代さんも良かったし、妹(メガネ女学生)の故・若山セツ子さんも良かったです。 特に若山セツ子さんの演技は当時20歳ということを考えると驚異的に上手いです。 役者としての晩年は精神的な問題もあり不遇だったようですが、役者としての才能ゆえに繊細だったのかなと思いました。
Amazonの通販のほうはめっきり利用しなくなってますが(サービス低下した気がする…とか書くと怒られるのかもしれませんが)、プライムビデオはたまに安いのをレンタル(期間限定で見られる)して見てます。 さて、1949年(昭和24年)の青春映画、『青い山脈』。 曲のほうは有名ですけどね、映画は見たことなかったので試しに見てみました。 青い山脈 原節子 Amazon 意外と面白い、というか、予想してたよりも全然重苦しくなくて良い。 戦後、憲法には両性の平等が記載されたけど、まだまだ言葉だけだった(実際には封建的な価値観が支配していた)時代に奮闘する若き女性教師を中心に物語が描かれます。 字面だけでは…