読後、胸に重くのしかかるような余韻とともに、深く考えさせられた一冊。 それが、柚月裕子さんのデビュー作『臨床真理』です。 この物語は、ただの心理ミステリーではありません。 人間の奥底に潜む「善と悪の境界」、表の顔と裏の顔が交錯する「正義と罪」、そして福祉という名のもとに隠された「社会の光と闇」といった、現実社会に根ざしたテーマが鋭く描かれています。 柚月作品を読み慣れている方にとってはおなじみのモチーフですが、そのすべてが、すでにこのデビュー作に凝縮されていることに驚かされます。 物語の中心にいるのは、臨床心理士の佐久間美帆。 彼女は、自らの職務の中で、ある青年・藤木司(ふじき つかさ)と出会…