古本屋の投げ売りの棚で見つけた司馬遼太郎という作家の『歴史を紀行する』(文春文庫・1976)という本を読んだのは10年以上前です。簡単に云ってしまえば会津や土佐や佐賀などのその土地の出身者を紹介しつつ特有の歴史を踏まえた紀行文で、平易に書かれてあるので読みやすい本です。ただ歴史を踏まえたとはいえ、司馬さんは歴史家ではなく作家で、なので文章の途中でフィクションのようなものが出てくることがあります。 たとえば近江の項では石田三成が現代の簿記のような知識を持ちそれで財政運営を行っていたことを紹介しつつ(P58)近江商人にも触れ、次いで「商才や商業に関する能力が帰化人に由来するのではあるまいか」という…