日活ロマンポルノの傑作を数多く残した映画監督。長野県出身。 明治大学卒業後の61年に日活入社。鈴木清順監督、今村昌平監督らの助監督を務め、72年「花弁のしずく」でデビュー。「実録阿部定」「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者」などの作品でロマンポルノの巨匠と呼ばれた。79年には「天使のはらわた・名美」などで日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。 フリーになった後も岡山県の山村で起きた連続殺人事件をもとに「丑三つの村」を監督し、話題になった。
2006年10月4日死去。69歳。
高校教師のなおみは、一人暮らしの寂しさから、教え子の啓二と同棲を始める。その生活は同棲というより性欲のはけ口のために啓二を養っているといって良かった。生まれついての淫乱の血が流れているなおみは、啓二の兄・啓介とも関係を持つが…。 (U-NEXTホームページより引用) 監督:田中登 出演:市川亜矢子/梢ひとみ/風間杜夫/鶴岡修/島村謙次 video-share.unext.jp 美人教師と男子高校生(しかもあどけない風間杜夫である!)が同棲! しかし美人教師は同僚のオッサン教師とも関係を持っていた。 性を楽しむ女、そして性を持て余しながらもどこか屈折してしまう少年。少年は同級生と寝てみたりするの…
花屋の少年が一途な想いを寄せた清楚系OLは高級コールガールという夜の顔をもっていた──。初期の田中登監督は自己の分身として風間杜夫を好んで起用。その翳りと屈折した表情が若い女性ファンに熱烈に支持された。 (ラピュタ阿佐ヶ谷ホームページより引用) 監督:田中登出演:青山美代子/風間杜夫/絵沢萠子/続圭子/相川圭子/高橋明/槙村正/浜口竜哉/三川裕之/織田俊彦 昼はOL、家族のために夜はスナック勤め、というのが彼女の素性のはずだった。 しかし、夜にしていたのはコールガールである。家族との貧乏生活に対する屈折した想い、そして、彼女自身の美貌と性のテクニック。彼女は恋人と平凡な結婚を望みながらも、金を…
YouTubeの「松竹シネマPLUSシアター」チャンネルで配信されていた映画『丑三つの村』(1983年、監督:田中登)を鑑賞。原作は西村望の同名ノンフィクション小説。1938年に実際に起きた津山事件を題材にしている。主演は古尾谷雅人。あの頃映画 「丑三つの村」 [DVD]古尾谷雅人Amazon犬丸継男(古尾谷雅人)は、岡山の寒村に祖母と二人暮らしをする青年で、村一番の秀才として通っていた。しかし徴兵検査で継男は、肺結核と診断され不合格となり“出征の夢”が叶わなくなる。このことが村に知れ渡ると、村人たちは継男を役立たず、穀潰しと見下すようになる。村のコミュニティから孤立するようなった継男から、恋…
★★☆☆☆ あらすじ 戦後まもなく進駐軍や華僑、朝鮮系のギャングを相手に神戸で一大勢力を築いた男は、抗争の中で一人の部下と対立するようになる。 感想 まず何と言ってもボスと対立する子分を演じる菅原文太のギラギラぶりがすごい。一人だけ明らかにヤバそうな空気を発している。しかもボスとの対立の仕方も、不服そうな顔をするとか陰口を叩くとかの生易しいものではなく、本人に向かってズバリと言いたいことを言い、何なら殴り合いも辞さない覚悟を見せている。 菅原文太―野良犬の怨念 (シネアルバム 95) 芳賀書店 Amazon 日本人的感覚だとそんな奴がいる時点で、もはや組織として駄目だろうと思ってしまうが、自分…
★★★☆☆ あらすじ 大好きな姉が結婚することになり、その結婚相手の男に敵対心を持って邪魔しようとする妹。71分。 感想 美しい姉妹に大学教授の父親、それに少し怪しげな若い女中が暮らす大きな屋敷が舞台だ。普通じゃないくらい仲の良い姉妹は女中を小馬鹿にし、その女中は姉妹の父親に手籠めにされている。そんな家庭に姉の婚約者や父親の教え子が絡んで、どことなく密室殺人でも起こりそうな、ミステリーものっぽい雰囲気が漂っている。 だがそこで描かれるのは姉妹の愛憎劇とそれに巻き込まれてしまう人々の人間模様だ。大好きな姉を結婚させたくな奔放な妹は婚約者を誘惑し、二人の仲を引き裂こうとする。ストーリー的にはいかに…
1978年 田中登監督作品。 冒頭「故 井原西鶴氏に捧ぐ」の文字。そして始まるピンクサロンのお盛んなさま。西鶴、教科書に出てくる元禄文化の代表者ということで何か挑戦的なおかしみを感じたりもしたが、文化デジタルライブラリーの元禄文化の解説*1を読むと西鶴は庶民の生活や遊女の暮らしをリアルに描いてきた人とのこと。それじゃあ確かにこの映画そのものだし冒頭の言葉はウケ狙いでもなんでもない、本気でこの時代にロマンポルノで西鶴を表現したんだなとなった。 雷蔵さんの演じた増村監督の「好色一代男」*2はとても陽気なものだった印象だけど、こちらの映画はまさに性と死は隣り合わせで、死を一時忘れる中での性、でもそれ…
★★★★☆ あらすじ 大阪のドヤ街で売春婦をする若い女は、仲介業者を外し、独力で商売することを決意する。82分。 www.youtube.com 感想 すごいタイトルだが、大阪の通天閣近くで売春婦をして暮らす女とその周辺の人物たちを描いた物語だ。何をするでもなく所在なさげに外でたむろする人びとが映し出されるドキュメンタリー風の映像は、まるで東南アジアのどこかの町のようだった。この地区は今でもこんな感じなのだろうか。 ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活 作者:國友 公司 彩図社 Amazon 光の当たらないアンダーグラウンドで暮らしていることを示すかのようなモノクロ映像で、主人公らの様子が映し出され…
★★★★☆ あらすじ 不倫相手の男と待合の狭い一室に籠もり、自堕落な日々を過ごす女。1936年に起きた阿部定事件を題材にした作品。 阿部定事件 - Wikipedia 感想 前半は待合の薄暗く狭い一室での、阿部定と男の情事が描かれ続ける。ほとんどがこの小部屋内のシーンで、やることは大体分かっているし、同じことの繰り返しなので、工夫はしているが段々と閉塞感を感じるようになってくる。 ただここで色々とその後を暗示するような伏線も張られている。とはいえ、当時の人々はこの後何が起きるのかは分かっていただろうから、だからあんなことをしたのだろうなと頷きながら見ている感じだろうか。大河ドラマを見ているよう…
★★★☆☆ あらすじ 下宿屋の屋根裏を歩き回り、隣人たちの生活を覗き見る男。 感想 主人公は、面白そうな状況でも途中で覗き見を止めることが出来てしまうくらい、すでにベテラン感が漂う状態で登場する。だがどうせなら、主人公が初めて屋根裏に上がった時から描いて欲しかった。その方が感情移入しやすいし、ドキドキ感が出て序盤の盛り上がりを作れたような気がする。 基本的には日活ロマンポルノなのでそういう場面が多いのだが、途中でなぜか寝苦しそうにしているおじさんの姿を延々と映し出す箇所がある。これは何の時間?誰得なの?と思ってしまったが、原作ではこれがメインと言ってもいい場面だったようだ。このおじさんがどのよ…
人妻集団暴行致死事件室田日出男Amazon大傑作。 昭和53年度作品。キネマ旬報ベストテン第8位。ロマンポルノのベストに挙げる方もいらっしゃるとのことだったが、よくわかる。 地元で再会した不良仲間三人。根はそんなに悪い奴らではなく、ごくごくどこにでもいそうな若者たちが、ただもう愚かしくまんも悪く「ファーゴ」のように重大事件をひきおこす。なにか文楽の題材になりそうな筋。 凄惨な感じは一切なく、青年たちの日常と、かかわりができてしまう室田日出男の姿、つきぬけたむなしさを描いた、大層心に残る作品。田中登監督の作品、今まで見た「(秘)色情めす市場」*1「(秘)女郎責め地獄」*2「蕾の眺め」*3そしてこ…
2024年も年末で終わりに近づいているんすが、2024年は、増村保造の生誕100年で、江戸川乱歩の生誕130年にあたるらしいっす。「好きなもの目録」で江戸川乱歩原作の1960年代末から1970年代の映画『黒蜥蜴 - 深作 欣二』『盲獣 - 増村 保造』『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 - 石井 輝男』『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者 - 田中 登』『江戸川乱歩の陰獣 - 加藤 泰』などを取り上げようかなと思い、『盲獣』『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』を久しぶりに観直したりしたんですが、他に観たい映画やドラマが沢山あって手付かずのまま……。 2010年代くらいから、昔の邦画(1960年代や1…
『晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ』 ~傘張り浪人人生決起する~ 亀井静香 メディア・パル 2014/11/29 <小学校3年生のときに迎えた敗戦のショック> ・吉田茂や岸信介は小さな抵抗はしたかもしれないが、大きな流れでいえば従米路線を進め、それが自民党、つまり日本の政治の主流となっていったんだ。 <交渉は相手の力を利用して制す合気道の極意で> ・ただ、集団的自衛権はまずかった。 世論の大方の反対を押し切って、閣議決定で変更することをやってしまったことも。開けてはならないパンドラの箱をいじってしまったんだな。 「実際問題、集団的自衛権が使えるか」って晋三に問い質したが、 彼はただ黙って聞いて…
<天狗になった男> ・享保年間(1716年から1736年)の話です。 信州松本(現在の長野県松本市)の藩中に知行二百石で物頭を勤める菅野五郎太夫という武士がいました。 ・その夜、夜半と思しき頃、何者か、三、四十人に及ぶ人がその部屋にやってきた気配がし、足音なども聞こえましたが、話し声は一切聞こえず、明け方頃にはひっそりとなりました。 そのうち、夜も白々と明けてきましたので、家の者が恐る恐る襖を開けて部屋の中を覗いてみますと、部屋の中にはだれもおらず、半切桶の中の赤飯は一粒残らずなくなっていました。 ・「旦那様がおみえになりません」と叫んだので、一同ははっと気づき、慌てて辺りを捜しましたが知れず…
昌平高校 1-0 大宮アルディージャU18 会場:昌平高校グラウンド 前半、4分、右サイドからの突破を止めきれず失点を許してしまったアルディージャU18。反撃、といきたいところでしたが、攻撃がかみ合わず前半を折り返します。 後半、徐々に攻撃が作れ始めるアルディージャU18。しかし、何度かあった決定機を決めきれず、結局、そのまま逃げ切られ負けてしまいました。 「このままエンドラインを割る...」そんなセルフジャッジを感じた失点。その後内容的には巻き返したものの、そこは結果がでていないチーム、焦りからか自分たちの間合いで打てていないシュートは決まらず、そんな試合だったと思います。 FW 磯﨑 MF…
『世界を見る目が変わる50の事実』 ジェシカ・ウィリアムズ 草思社 2005/4/28 <70カ国以上で同性愛は違法、9カ国で死刑になる> ・同性愛が死刑の対象になる国が9カ国ある。モーリタニア、スーダン、アフガニスタン、パキスタン、チェチェン共和国、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE),そしてイエメンである。 ・1979年のイランにおけるイスラム革命以来、4000人以上の同性愛者が処刑されたと推計されている。 ・世界で70カ国以上がレズビアン、ゲイ、同性愛者、あるいは性倒錯者を差別する法律を有している。 ・社会においては同性愛は「病気」として扱われ、ゲイやレズビアンは精神医療に…
監督:田中登 タイトル通りの内容。昭和33年(1958)、安藤組が襲撃事件を起こし、安藤昇が34日間逃亡して逮捕。これを本人が演じるという意味不明さ。安藤昇は元ヤクザの映画俳優という異色の経歴。なぜヤクザが俳優になれたのか正直経緯は謎すぎるが、昔こういう役者がいた。そして主役級まで上り詰めたわけだからある意味すごい。今じゃ作れない。つーかこんな奴いない。昭和だねえ。アナーキーだねえ。。。
『妖怪の理 妖怪の檻』 京極夏彦 角川書店 2007/9 <柳田國男の妖怪談義を巡って> ・現在、“妖怪”を語る時には必ずといっていい程引き合いに出されてしまう柳田國男も、最初から「妖怪」という言葉を使用していたわけではありません。 例えば、有名な『妖怪談義』(1956/修道社)に収録されている論文の中で一番古い「天狗の話」が書かれたのは明治42年(1909)のことなのですが(それは井上圓了が活躍していた時代です)、その中に「妖怪」の2文字を見出すことはできません。のみならず初期、中期の論文において柳田は、天狗は天狗と記し、大太法師は大太法師と記すだけです。柳田國男がそうしたモノの総称として「…
爆笑問題カーボーイの大学生新入生歓迎合宿を振り返る。を聴いてから、皆殺しの霊歌→ヌードの夜→フェイシズ→キッスで殺せ→サマーソルジャーとビデオテープをザッピングしていく事で、kissから始まるミステリー→ライツカメラアクション→c調気分に御用心→ソレナライイ→サマーヌード。みたいなくさい曲をローテーションしながら、まるで米軍基地脱走兵のようにノリノリで週末の掃除を終わらせる事が出来た事は太田さんに本当に感謝している。映画館と一緒でクラブDJみたいなプロの手が介入しない事で、自身のセンス全開の予定調和の居心地の良いマンネリ化したおじさんのロマンシズム、ダサさを涎を垂らしながら何度も反芻し、どっぷ…
だいぶ前にテレビ(『徹子の部屋』みたいな番組)で、年配の女優(有名な女優だったような、顔も名前も思い出せない)が、大映映画の大ファンでソフト(作品)を全部持っている。――みたいな話をしていて、当時の私はまだそれほど大映映画を観ていなかったので、大映映画(永田雅一時代)ってピンとこなかったんすが、色々な大映作品を観て、東宝、東映、松竹、大映、日活の大手映画会社の中で私も大映映画が好きになったっす。大映と日活のダイニチなんすが、大映に比べると日活の作品は若者向けというか荒唐無稽でハズレが多いイメージなんで、私は監督で観るか観ないか決めているんすが、『野良猫ロック』シリーズの長谷部安春監督作品だから…
リチャード・ブローティガン 作者:藤本 和子 新潮社 Amazon 『カフカ断片集』を鞄に入れて持ち歩いて、通勤電車の中で読んでいた。短いセンテンスと刺激的なフレーズの連続に想像を膨らませていると、辛い通勤時間もあっという間だった。他にもあんな風に読める本は無いかなと考えて思い出したのが、リチャード・ブローティガン。詩というか日記というか妄想というか奇妙な散文であったなと。という訳で、学生時代に読んで以来久しぶりにブローティガンの本を手に取ってみた。 『東京日記 リチャード・ブローティガン詩集』(1978年) 1976年、東京を訪れたブローティガンが記した、詩のような、日記のような言葉たち。全…
(2022/2/11) 『大江戸奇怪草子』 忘れられた神々 花房孝典 天夢人 2021/6/16 <文明開化> ・江戸時代というと、なにやら遠い昔のような気がしますが、実は、今からおよそ百五十年ほど前の、長い歴史の流れの中では、ほんの昨日のような時代です。また1868年の明治維新によって、一挙に江戸が消滅してしまった訳もありません。続く明治の時代にも、文明開化といえ、市井の生活には、確実に江戸文化の面影が色濃く残っていました。 ・志ん生師は明治23(1890)年の生まれですから、少なくとも明治の中頃までは、東京の夜は闇に覆い尽くされ、その中には、狐や狸に騙されたという、今考えれば、信じられない…
全5項目●代表作 ●「三つ数えろ」●「BIG SHOT」 ●「にっぽん脚本家クロニクル」 ●「VIVA COMIC 漫画家大集合」 「清作の妻(増村保造)」より 全5項目 ●代表作 「GONIN(ゴニン)」シリーズ、 漫画&映画脚本「天使のはらわた」シリーズ等 漫画家、映画監督、脚本家、ライター、カメラマン 等で活躍した石井隆(出木英杞)が影響を受けた・好きだった映画。 ●「三つ数えろ! 映画監督が選ぶ名画三本立てプログラム」より3本 越前竹人形 吉村公三郎…若尾文子。恋愛、夫婦、竹細工職人、狂気 雁の寺 川島雄三…若尾文子。ロマンス、住職、愛欲 清作の妻 増村保造/新藤兼人…若尾文子。結婚、…
(2019/12/16) 『男色の日本史』 なぜ世界有数の同性愛文化が栄えたのか ゲイリー・P・リューブ 作品社 2014/8/29 <このテーマについて世界で最も引用率の高い基本文献となっている> ・かつて日本には、古代ギリシャと並ぶ“男色文化"が栄えていた。平安の宮廷人たちが、密かにくり広げた夜伽。寺院での僧侶たちによる稚児との愛欲の生活。戦国武将たちに連れ添った、森蘭丸などの小姓たち。そして江戸時代に入ると、役者・若衆・女形たちによる売色が隆盛し、陰間茶屋では女性も交えた3人以上の男女が入り乱れて欲望のかぎりを尽くしていた。 本書は、初めて日本男色文化を“通史"としてまとめた「男色の日本…
阿部定をテーマにした大島渚の映画「愛のコリーダ」と田中登の日活ロマンポルノ「実録阿部定」では「実録」の方が抜群に面白かった。 「実録」は脚本のいどあきおの才能による所が大きい。「コリーダ」は修正されまくった公開版と修正が緩やかな「愛のコリーダ2000」を観たが、話題の割にはドラマが平板だった。 他にも大島渚は新選組と同性愛を扱った「御法度」やチンパンジーと人間の愛を描いた「マックス、モン・アムール」を撮った。 男と女、男と男、人間と動物。 大島渚作品は話題先行の面が否めない。 話は脱線するが、ロマンポルノは70年代で終わるべきだった。80年代に根岸吉太郎、池田敏春、相米慎二らとの契約を切った時…