美学

ロビンソンとプリンツ ジェニファー・ロビンソンのこの本を読んでいる(表紙がかっこいい)。 Robinson, J. (2005). Deeper than reason: Emotion and its role in literature, music, and art. Oxford University Press. academic.oup.com 四つの部からなる本で、第一部では情動理論を扱っている。 (第二部は文学と情動、第三部では芸術における情動表現、第四部では音楽と情動を扱っている) 美学の本だと思っていたが、結構分量を割いて自身の情動理論を提案・擁護していて驚いた。 ところで…

こんにちは。 今回もリミナルミュージックについてです。一人のアーティストに焦点を当てて書いていきたいと思います。いつもどおりごちゃごちゃ書いていきますが、文章は無視してもらって大丈夫です。でも曲は聴いていってください。彼の曲を聞かないのは非常に勿体ないです。 という訳でまずは一曲聴いてみましょう。彼の絶対的な代表曲です。是非素晴らしいアートワークにも注目してみてください。 www.youtube.com どうでしょうか。今まで紹介してきたリミナルミュージックとは全然違いますね。まずギター、ベース、ドラムのバンドサウンドが比較的動いているので、ロック要素が感じられますし、BPMも明確に早いです。…

こんにちは。 引き続きリミナルミュージックについてです。今回は音楽というよりは美学がメインになります。ですのでまあ、いつも通り興味ない方は音楽だけ聴いていってください。音楽を聴くのに必要な話ではありませんので。 とりあえず駆けつけの一曲でも。 www.youtube.com 全く激しくないのにも関わらず、とにかく情熱的です。非常にエモーショナルなメロディがリフレインし続け、いつの間にか感傷的な気分にさせられます。 さて、前回も書きましたが、リミナルミュージックは主にプレイリストで纏められいます。そのタイトルにおいて、よくliminalと並べられている美学や音楽ジャンルがいくつか存在します。今回…

＊ 美学とは何か 「美学」とは美や芸術について考える哲学です。「美学」という学問は18世紀のヨーロッパで誕生し、日本には明治時代に、そのほかの西洋文化とともに流入してきました。「美学」という言葉はその原義に立ち返ると「感性の学」を意味しています。すなわち、なにかの事物や出来事に出会うとき、我々の感性はどのように働いているのかを明らかにするのが美学の目的です。 美や芸術、あるいは感性についての学問などというとなんだか高尚な別世界の営みのように感じられるかもしれませんが、美学とはむしろこの世界の日常の中に雑多に溢れかえる様々な事物や出来事を考究する学問です。 例えば多くの日本人は桜に特別な美を感じ…

足元を見れば、だいたいの覚悟がわかる気がする。 白とブルーの、ナイキ風の安全靴。ソールは薄く、つま先がツンと反り返っている。あれは、足元に力を入れるというより、足を鉄骨に沿わせるような、地面に吸いつくような履き方をしていた。 とび職が履く足袋――あの、地面をつかむような柔らかさと軽さ。あの靴には、それに近い感覚があるように見えた。高い場所を任される若い職人たちは、足元まで柔軟で、登る動きの中に信頼が宿っているようだった。 イケメン君も、向かいの4階建てマンションの足場組の若手も、みんな同じような靴を履いていた。遠目にはナイキのようにも見えるが、おそらく本物ではないだろう。きっと、そういうスポー…

家の屋根と外壁の塗装に、職人が3人やってきた。そのうちの2人は特によく組んで動いていた。ひとりは、ピタッとした速乾性のTシャツを着た、マッチョな体格のイケメン君。もうひとりは、グレーや黒のゆるいパーカーに白や青のキャップをかぶった、メガネ君だ。いつもニコニコしていて、しゃべることはほとんどない。ベテランの職人さんもいるが、いない日はこの2人で現場を回していた。 グレーや黒の、ゆったりとしたパーカー。それが、メガネ君のいつもの服装だ。 どんな日でも、彼はそのパーカーを着て、白や青のキャップをかぶっている。その姿は、どこか中性的で、街にいても違和感のないストリートの装いに近い。だが、それを現場で見…

6月。まだ少し肌寒い朝が続いている。 家の塗装工事が始まって数日、私は窓辺で、つい目で追ってしまう若い職人がいる。彼は毎朝、ぴたっとした速乾シャツを着て現れる。黒っぽいものが多いが、最初の日はミリタリー柄の迷彩シャツだった。そのシャツは彼の体にぴたりと張りついていて、迷彩という柄の強さとは裏腹に、どこか頼りなさと沈黙をまとっていた。彼自身は終始、口をきつく結び、誰にも視線を投げず、ひとりで自分の作業にだけ集中していた。あの迷彩服は、“見られること”に向けられたものではなく、むしろ“人を寄せつけないため”の鎧のようにも見えた。 黒も似合う。迷彩も似合う。その佇まいは、なんだか“男の象徴”のように…