自伝自分史の代筆を生業の一つにしているよ、といったことを、自己紹介のすみっこに挿むことがあります。 目新しい人なら「さようですか」と目を細めますが、旧知の人は親しさにかこつけておよそこんなことを聞いてきます。 「自伝をつくる人って金持ちでしょ」「自分史をつくる人って、自分好きな人でしょ」 総じて「自分には意味が分からん」という感情移入の拒否宣言があるわけです。まあ、その気持ちが分からないではないですよ。私だってそうでしたから。 けれども、何人ものお客さんにじかに接して、いろいろ話を伺っていくと、自伝・自分史をつくることへの意義は、欲求というより渇望、あるいは焦燥のようなものが感じられます。ある…