1952年京都市生まれ。英米文学者、翻訳家、アンソロジスト。 現在、京都大学大学院文学研究科教授。2004年に『乱視読者の英米短篇講義』で第55回読売文学賞随筆・紀行賞を受賞。
指将棋、詰将棋やチェスプロブレムでも有名で、指将棋では赤旗名人戦優勝、詰将棋では看寿賞7回受賞、チェスプロブレムでは国際チェス連盟(FIDE)から解答競技インターナショナル・マスターなどの実績がある。
たまには誰もわからない話でもするか(え?大概いつも話題の範囲は狭いんじゃないかって?まあそうですな)。 当ブログ主は一浪して大学に入学した。 浪人の時の話をしたい。 浪人した理由もみっともないもので、志望学部を変えてやり直したいと親にねだったというわけ。 中高一貫の私立に通わせてもらって十分準備もしてきたのに、高3で志望が最後までちゃんと定まらなかったという。ろくでもないもんだね。 一番興味が持てたのがSFで、高校生のうちにプロやのちにプロになる方々とも知り合うことができたにも関わらず、そちらの道を早々に断念したというのも少しは影響した。断念した理由は、読書スピードが圧倒的に遅いことと英語力を…
なんとなく数年来(苦笑)たまっていた雑誌などを消化することが多いです。雑誌は全部読むのは大変なので、創作などそこそこ読んだものという感じ(それから、感想も随分前に読んだものが結構含まれてる)。 ◇群像 2019年1月号 ○フィクション 「命日」瀬戸内寂聴 無論著名な作家だが、小説を読むのは初めて。明らかに自伝的な内容で、それを別な人物の視点で書かれている形式。短いこともあるが、意外とすんなり読ませる。とても100歳近い人の作品とは思えないね。ちょっと羨ましい。 「返信を、待っていた」笙野頼子 身近な日常をベースに、現代をリアルタイムで描写していく形式。社会の背景に潜む欺瞞を余さずとらえる眼差し…
『危険なヴィジョン〔完全版〕2』ハーラン・エリスン編/浅倉久志他訳(ハヤカワ文庫SF) 解説で若島正が、本書を比類のないものにしているのはエリスンの序文だと話していますが、エリスンにもSFにも過度な思い入れのない身からすると、そんな楽屋ネタみたいなエリスンのノリがただただ薄ら寒いだけなのですが……。 「月へ二度行った男」ハワード・ロドマン/中村融訳(The Man Who Went to the Moon --Twice,Howard Rodman)★★★★☆ ――はじめて月へ行ったとき、マーシャル・キッスは九歳だった。繫留気球の索がはずれ、マーシャルを乗せたまま飛び去ったのである。降りてきた…
詰将棋パラダイス誌の読者である。 近頃、当誌では合作の作品がよく散見される。 個人的には大変憂うべきことだと思います。 火付け役は若島正氏の一連の合作が影響しているのであろうか。 しかし、彼の場合は特別の事情が存在する。 詰パラ8月号をみて、ここまで来たかの思いだ。 合作特集のコーナーまで出現した。 小学校の結果稿では3人の合作経緯には思わずのけぞりそうになった。 ある詰将棋の会合があったとする。 Aさんは課題作を作って参加する。 Bさんがここはこうすればもっとよくなると提言する。 それには余詰があったのでCさんがうまく修正する。 かくしてABC3人の合作として投稿する。 実はこれと似通ったこ…
乱世の度合いが強まる7月でしたが皆様いかがお過ごしでしょうか。SNSは感情が強ければ強いほど言葉が流通する装置ですので、たまにはそこを離れて本を読むと時間の流れが変わってよいかと思います。今月はなんとなく小説が多くなりましたね。 ガルシア=マルケス中短篇傑作選 (河出文庫 マ 11-1) 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 河出書房新社 Amazon ガルシア=マルケスの短めの小説を集めた文庫。読んだことない方はこれをとりあえず買えばいいんじゃないでしょうか。2019年の単行本『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』の改題文庫化。 田舎医者/断食芸人/流刑地で (光文社古…
外出するにあたり、途中まで読み進めていたアイリス=オーウェンス著、渡辺佐智江 訳『アフター・クロード』を持ち出し、改めて冒頭から読んだ。本書は国書刊行会の「ドーキー・アーカイヴ」シリーズの第7回配本作品となり、本の惹句は以下の通り最高だ。 「捨ててやった、クロードを。あのフランス人のドブネズミ」 あらゆるものに牙を剥き、すべての人間を敵に回す わきまえない女ハリエットの地獄めぐりが今始まる…… 40年のときを超えて現代を撃つ、孤高の問題作! 電車の中で『アフター・クロード』を読み始めたところ、キレの良い文章に興が乗った上、遠出だったこともあり、行きの電車の中で半分以上を読み終えた。帰りの電車は…
野暮用からの帰りに寄り道して行きつけの本屋をのぞくことになりです。 ずいぶんと久しぶりなのかな、前回はいつにいったのかと思いますが、たぶん ひと月くらい前でありましょう。 新聞に掲載されている広告などは、ちゃんとチェックしているつもりですが、 見逃しがあったりで、こんな本がでていたのかと思ったりです。単行本はこれ がここに入っていたら買うのにと思うものは、間違いなく入荷せずです。 もうすこし、この店で買ってあげたいと、自分の懐具合のことも考えずに思う のでありますが、良い具合に入らないのでありますね。それはそれで家庭の平和 のためによろしです。 本日は単行本は一冊も手にすることはなしで、文庫本…
ナボコフ(若島正 訳) 舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩目にそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。 この呪文のような言葉で、想像の世界が切り拓かれる。ハンバートにとっては、牢獄のような妄想だが、作者と何人かの幸福な読者にとっては、現実からの解放にもなりうる世界である。
今日は朝からなんとなくやれる気がしている。様々なことができる気がしている。そういう気持ちが消えないうちになにかをしなければならないのだけれど、なぜかシーシャをつくる。AFグレープが5分蒸らしでもそこそこの味が出たことに納得がいかず、AFレモンを同じ作り方で試してみるが、前回の10分蒸らしのほうがハイレモンのような酸味と甘みを楽しめた。失敗。 ダイアン・クック『人類対自然』を読みかけているのだけれど、なんとなく手が進まない。筒井康隆『文学部唯野教授』も途中で読むのをやめてしまった。 そこでナボコフ『ディフェンス』若島正訳を読む。昼頃には半分ほど読み進めてしまった。一気に読み進めてしまうのがもった…
曇。大垣。 ミスタードーナツ大垣ショップ。ホット・セイボリーパイ BBQフランクフルト+ブレンドコーヒー404円。『コレクション瀧口修造2』の続き。現在は明らかに(精神的に)貧しいことを再認識させられざるを得ないが、それ(現在の貧しさ)はなぜなのだろう。リアルが酸素のようなものだとすれば、酸素が少ない。息苦しい。現在だってリアルはある筈だが、なぜそのリアルが貧しいのか。現在における我々の幼稚。といつも同じところに還ってくる。そしてそこから出ることができない。ほんと、幼稚、とは? 精神の全領域の「専門化」と、幼稚。といったことが、瀧口修造を読んでいると浮かび上がってきたりする。例えば、現在の専門…
『S-Fマガジン』2022年8月号No.752【短篇SFの夏】「魔法の水」小川哲 「『地図と拳』とあわせて読めばより深く味わえる」そうなので、それまで読むのは保留しておきます。 「戦争を書く、世界を書く」逢坂冬馬×小川哲 「自分と同じような価値観や立場の人間の考えることであれば、わざわざフィクションにせずとも想像がつくからです」という小川氏の創作姿勢は明確です。それにしても、小説の世界にまで文化盗用が忍び寄っているとは。 「奈辺」斜線堂有紀 「怪物」ナオミ・クリッツァー/桐谷知未訳(Monster,Naomi Kritzer,2020)★★★★☆ ――貴州省に来たのは、アンドルーを捜すためだ。…
2022年の上半期に読んだ本から10冊選んでみます。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊。読み終えた本は70冊ほどでいつも通りですが、面白そうな本が次々とあらわれるので、買うペースだけが早まっています。 真ん中の本が分厚いなー フィクション リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』(訳・森慎一郎、若島正、みすず書房) リチャード・パワーズの第3長編が邦訳されたとなれば、読まずにいられない。今年のゴールデンウイークはこの本のことばかり考えていた。音楽、分子遺伝学、図書館学の語彙を駆使した文章が素晴らしい。一文一文を味わいながら、気長に読むのがいい。 kinob5.hatenablog.co…
イギリスの作家、リチャード・ミドルトン(Richard Middleton 1882-1911)に よる短編。原題は"On The Brighton Road"で、題訳は『幽霊船(魔法の本棚)』(訳:南條 竹則 国書刊行会)に拠る。ミドルトンの作品をまとめて読めるのは日本語では多分この短編集だけだ。 ブライトンからロンドンへ向かう道にて、男が雪の中からガバッと現れる。その男が道中で出会った少年とやりとりを交わすだけだが、独特な印象を残す作品だ。 とりあえず書き出しが素晴らしいので、少し長いが引用する。 ゆっくりと太陽は凍てついた白い丘の上にのぼり、暁の神秘な儀式もそこそこに夜明けが来れば、あた…
(咳払い) (咳払い) 皆様~ W・X・Y・Z世代の代表! RYANAでございますわ~ 今日はサロメ嬢にあやかって、『サロメ』とルー・アンドレアス・ザロメを紹介させていただきますわ~ www.nijisanji.jp (めっちゃトークがうまい。テンポがいい。ボケも冴えてる。素晴らしい配信者ですね。) はい。 本文に行きます。 今回はオスカー・ワイルドの『サロメ』とファム・ファタル(宿命の女)についてだ。 内容としては全二回。 一回目は『サロメ』を中心としたファム・ファタル作品について。 二回目はザロメを中心にした実際にいたファム・ファタルについて話そうと思う。 ・・・ というかそもそも、みなさ…
本の買取強化中です。JR小倉駅北口「小倉の古本屋」古書城田(旧ブログです) JR小倉駅北口(新幹線口)の古本屋、古書城田です。北九州市内をはじめ福岡県内&近県、本の出張買取、本の遺品整理を行なっています。大量歓迎です。査定無料、出張費無料です。どうぞご相談くださいませ。 (買取専門)093-551-3009 メール:shirota@mx71.tiki.ne.jp 古物商許可証 [第32483号/福岡県公安委員会] 全国古書籍商連盟北九州古書組合所属 店舗はJR小倉駅北口、徒歩1分の場所にございます。ファミリーマート小倉駅北口店さんのすぐ裏手となります。ご来倉の折は、どうぞお気軽にお立ち寄りくだ…
・大学時代に感銘を受けた〈ケンイチくんシリーズ〉を読み直したい。 ・得るものがあるかはわからない。 ・ほんとうはネット上に作者が公開していた『デカルトの密室』参考文献リストをチェックしたいが、消えてしまっているのでわからない。 ・自分の知識は当時より増えていないので、的確な読みにはならないはず。 ・作中時間順に読みたい。 ・「メンツェル」(『第九の日』収録)→『デカルトの密室』→『第九の日』の残り→「ロボ」→「キャラメル」→『魔法を召し上がれ』(未読)? ・このメモは自分が納得したいだけなので有益ではないです。 ・【注意】ネタバレがあります。 ・作品じたいがネタバレしている他作品の内容にも触れ…
「だめ。全く問題外。[中略]つまり──」 彼女は言葉を探した。私は頭の中でその言葉を見つけてやった(「あたしの心をめちゃめちゃにしたのはあの人(﹅﹅﹅)なの。あなた(﹅﹅﹅)はあたしの人生をめちゃめちゃにしただけ」)。*1 "No," she said, "it is quite out of the question. [...] I mean─" She groped for words. I supplied them mentally ("He broke my heart. You merely broke my life").*2 ウラジーミル・ナボコフによる長篇小説『ロリータ』終…