新たな世界へ踏み出す春に『あぶくま抄(250325)』は思う▼旅先で名所や目当ての店に行くのに地図は欠かせない▼探検家の角幡唯介さんは地図を持たず、「地図なき山」、北海道の日高山脈に分け入った。位置を把握できるのはコンパスだけ。効率化優先の現代社会にあらがい、システム化された世界の外側に身を置いた▼先々を見通せない困難な道程は、まるで人生そのもの。〈未来を予期できない状況は生物学的につらすぎる〉と角幡さんはつづっている▼新たな世界へ踏み出す春が巡ってきた。思わぬクレバスに陥っても、はい上がる覚悟はあるだろうか。誰もが強いわけではない。視界不良になったら、立ち止まればいい。家族や友人という名の心…