午前中に「無常の使い」(石牟礼道子、藤原書店)を読み終えた。 最初の引用は、新聞に掲載されて私の印象に強く残っていた文章である。 「川本輝夫さんは戦死した、とわたしは思う。・・・東京で座り込みをはじめた1972年初頭、この人は綿入れ半纏姿だった。それは水俣月浦あたりの民俗をよくあらわしていた・・・。綿入れ半纏やチャンチャンコはもっとも安上がりな防寒着でもあった。風呂には入れず垢まみれだったこの風俗は、その中身に、21世紀への哲学や人間への希望や、いまだに読み解かれぬこの国の前近代の遺民の心性を包み込んでいた。今世紀を総括せずぱやまないほどの絶望と、それは抱き合わせにもなっていたのだった。」(「…