本書は、「旅に出ようと思った。遠隔地ではない。今まで生きてきた時間の中で通り過ぎてきた場所への旅だ」という書き出しの文から始まる葉室麟流の歴史紀行文を中軸としている。 出版は2018年11月。著者葉室麟は2017年12月に逝去。奥書によれば、歴史紀行文は朝日新聞(西部本社版)の2015年4月11日~2018年3月10日に連載された。 中軸という言い方にとどめたのは、本書の構成が持つ特徴による。 「第Ⅰ部 西国を歩く」と「第Ⅱ部 先人を訪ねて」が連載された紀行文に相当する部分だろう。第Ⅱ部には連載記事とは独立した形で同紙に掲載された「土筆摘む背中 追いかけて」と「対談 小説世界 九州の地から」が…