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電撃戦

(読書)
でんげきせん

[独] Erinnerungen eines Soldate
[英] Panzer Leader
電撃戦とは、ドイツの軍人ハインツ・グデーリアンによる第二次世界大戦の回顧録である。
本書の大部分は第二次世界大戦での作戦行動の回顧録であり、その構成は第1章家族と生い立ち、第2章わが装甲部隊の創設、第3章ヒトラー、権勢の頂点にたつ、第4章破局の端緒、第5章西方戦役、第6章1941年ソ連侵攻、第7章非役時代、第8章装甲兵器の発達、第9章装甲兵総監、第10章7月20日事件、第11章参謀総長、第12章破滅の終局、第13章第三帝国の指導者たち、第14章ドイツ帝国参謀本部の14章から成り立っている。
グデーリアンが装甲部隊の研究と開発、訓練に携わった経過が述べられており、その中で電撃戦の理論が説明されている。
グデーリアンは電撃戦の中心的な主体である戦車に注目し、ドイツが第一次世界大戦で行われたような戦闘陣地による戦闘を行うことは難しく、兵力の不足や装備の不備を補うために機動力で戦うことが不可欠であり、そして機動力を発揮できるのは装甲車両、戦車によってのみ可能であると論じる。
そしてグデーリアンはフラー、リデル=ハート、マーテルによる研究を参考にしながら戦車を従来の歩兵の補助とする兵器ではなく、新しい形態の戦術の先駆的役割を与えることを構想した。

和訳
電撃戦〈上〉グデーリアン回想録

電撃戦〈上〉グデーリアン回想録

電撃戦―グデーリアン回想録〈下〉

電撃戦―グデーリアン回想録〈下〉

電撃戦

(一般)
でんげきせん

Blitzkrieg(独)

軍事理論(ドクトリン)の一。攻勢作戦において、奇襲と速力を結合して敵を打破しようとするもの。
端的に言うと、高い機動力を持つ部隊でもって敵戦線を迅速に突破し、爾後後方連絡線や指揮系統を破壊することで敵を打倒することを目指す。
たぶん旧約聖書の時代から騎馬遊牧民は同じような戦い方を実践していたと思われるが、狭義には第一次世界大戦後に出現した、装甲部隊を主力とする作戦思想を指す。

はじまり

火力の増大と塹壕の発明と動員兵力の増大によって、第一次世界大戦は不毛な消耗戦となった。数百キロに及ぶ戦線は大量の鉄とコンクリートによって固められ、攻勢に出た側は機関銃によって例外なく大損害を受けた。
列強はこの状況を打破するために様々な兵器と戦術の研究を行った。戦争後期に投入された戦車や浸透戦術はそれへの回答の試みだった。
戦後、さらに研究が進められた。当初は機関銃弾を防ぐ移動トーチカに過ぎなかった戦車は、高い機動力を得て何か違うものに化けそうであった。ここでリデル・ハート、フラー、ドゴール、パットン、トハチェフスキー、グデーリアンといった先達が各国に現れ、それぞれに、あるいは互いに影響を与えながら機甲戦術を発展させていった。特に熱心だったのは当然というか、敗戦国となったドイツだった。

「エンジンは兵器である」

機動力を重視する場合の部隊運用の原則はたったひとつ、
「敵の弱点を突破する」
以外に存在しない。だが、これを実施するのは容易なことではない。

そもそも、事前に敵の弱点が判明することはない。いや、「敵の布陣の弱点」であればある程度掴むことは可能である。が、戦闘が始まってからの動き、例えば敵の予備隊が投入されたり、撤退が始まったり、たまたま無傷で橋を奪取できたり、砲撃が敵司令部を直撃して全戦線崩壊の危機が生じていたり、といったことを後方の司令部で察知するのは容易なことではない*1

そこでドイツ人たちは大量に無線機を配備して情報の流れを密にするとともに、前線指揮官の能力(と権限)を向上させて「弱点」を攻撃する力を飛躍的に引き上げることでこれに対応した。従来型の砲兵による火力支援は機動戦下では期待できないが、急降下爆撃機を直協機として配備し、「空飛ぶ砲兵」として用いることでこの点の解決も図った。さらに諸兵連合効果を維持するために戦車だけでなく歩兵も機械化・自動車化して、戦車に随伴できるように意が払われた。

当然ながら「戦線が突破された」という事実そのものも巨大な兵器であり、敵の指揮系統がその衝撃によって麻痺している間は、まさに装甲部隊の独壇場である。突破部隊は前進して戦線後方の作戦目標(普通は交通結節点)を抑えて予備部隊の投入を封じ込めるなり、そこらに転がる司令部や補給部隊やその他の後方部隊を蹂躙するなり、何でもできるといってよい。
あとは退路と指揮系統と補給と士気*2を失って「残敵」と化した敵の第一線部隊を、(機械化されていない)歩兵と砲兵によって刈り取れば作戦終了となる。

かくして電撃戦はポーランドで、オランダで、フランスで、ドイツ軍が勝利を収めるための鍵となった。

問題点と限界

電撃戦の本質は奇襲であり、敵がそれへの対処法を知らない時に最大の威力を発揮する。
極言すれば「敵は電撃戦で攻撃してくるから、戦線に穴が開いたらそこから装甲部隊が突破してくる」という事実を知られているだけでも威力は下がる*3。定石としては、防御側は装甲部隊を前線に張り付けずに予備として後方に待機させて、突破口に差し向けるといった手が考えられる。
また、機動力に極度に依存している以上、道路網が未整備であるとか、補給が不足しているとか、戦場が物理的に広大すぎる*4とかも苦手である。
また、堅固な拠点は迂回して後回しにするのが原則なので、包囲されても降伏しない敵抵抗点が交通線上に存在していると、かなり困ることになる。そもそもの目標が「堅固な拠点」で、かつ機動戦を展開する余裕がなかった場合は処置無しである*5

独ソ戦においてはドイツ軍は国境付近の赤軍主力の撃滅には成功したものの、戦場の広大さから赤軍に立ち直りの時間を与えることになった。

*1:いや、たまに師団長自ら全軍の先頭に立って状況を確認してるロンメルもいたりはしますが

*2:いや、たまに包囲されても「NUTS!」とか言ってくるマコーリフもいたりはしますが

*3:「突破された! どうすればいいの?」→士気低下、という流れが機能していることが前提なので、手品の種が割れれば敵の立ち直りは早くなる

*4:一段階の跳躍で敵中枢を押さえられない場合、仕切り直さざるを得ない

*5:結局モスクワもレニングラードもスターリングラードも陥落していない。セヴァストポリは砲兵の火力集中なくしては落とせなかった

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