朝のある大学講師控室でのこと。 前日に雨が降っており、さわやかな空気が漂う中、国文学者のF先生が現われた。 F「お、のりも君、早いね」 私「あ、F先生。おはようございます」 F「おはよう。今日は気持ちのいい朝ですねぇ。 そこの道を歩いていると、萩の花が咲いててね、 ちょっと秋を感じさせますよねぇ・・・ まさに・・ 『今朝来つる 野原の露にわれ濡れぬ 移りやしぬる 萩が花ずり』 っていうところですねぇ・・・・」 私「・・・ぇぇ?・・・」 F「あぁ・・・急に言っても分からないか・・・ この歌はね、宇治拾遺物語にある歌でね。 『今朝やって来た野原の露に衣が濡れて、 野を進むにつれ萩の花に摺れて染まる…