「院の御遺言をお守りくだすって、 陛下の御後見をしてくださいますことで、 今までどれほど感謝して参ったかしれませんが、 あなたにお報いする機会がいつかあることと、 のんきに思っておりましたことが、 今日になりましてはまことに残念でなりません」 お言葉を源氏へお取り次がせになる女房へ仰せられるお声が のかに聞こえてくるのである。 源氏はお言葉をいただいても お返辞ができずに泣くばかりである。 見ている女房たちにはそれもまた悲しいことであった。 どうしてこんなに泣かれるのか、 気の弱さを顕わに見せることではないかと 人目が思われるのであるが、 それにもかかわらず涙が流れる。 女院のお若かった日から…