「昔 中宮がお庭に雪の山をお作らせになったことがある。 だれもすることだけれど、 その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。 どんな時にもあの方がおいでになったらと、 残念に思われることが多い。 私などに対して法《のり》を越えた御待遇はなさらなかったから、 細かなことは拝見する機会もなかったが、 さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。 私は何かのことがあると歌などを差し上げたが、 文学的に見て優秀なお返事でないが、 見識があるというよさはおありになって、 お言いになることが皆深みのあるものだった。 あれほど完全な貴女《きじょ》がほかにもあるとは思われない。 柔らかに弱々…