北陸新幹線と金沢

一条真也です。
24日の朝、東京で定宿にしているホテルの窓から見事な富士山が見えました。午前中の打ち合わせを終え、わたしは東京駅に向かいました。


朝、見事な富士山が見えました

東京駅に向かいました



そして、そこから今月14日に開通したばかりの北陸新幹線「かがやき」に乗りました。行先は、もちろん、わが心の金沢です!
東京から金沢まで、なんと2時間28分という速さです。
ホームでは、多くの人々が北陸新幹線の写真撮影を行っていました。
わたしは、売店で見つけた「北陸新幹線開業記念弁当」を求めました。


東京駅のホームのようす

東京駅のホームのようす

売店で開業記念弁当を求めました


Wikipedia「北陸新幹線」には、以下のように書かれています。
北陸新幹線は、上信越北陸地方を経由して東京都と大阪市とを結ぶ計画の整備新幹線である。2015年(平成27年)3月14日に長野駅上越妙高駅金沢駅間が延伸開業し、同日現在の開業区間は東京駅―高崎駅長野駅上越妙高駅金沢駅となっている。うち、東京駅―大宮駅間は東北新幹線と、大宮駅―高崎駅間は上越新幹線と共用する。なお、金沢駅敦賀駅間が2023年(平成35年)春に開業する予定である」


「かがやき」529号がホームに到着しました

高級感のある「かがやき」グランクラスの車内

「かがやき」の車内のようす

洗面台もスタイリッシュ

トイレも清潔で広い!



北陸新幹線は「かがやき」「はくたか」「つるぎ」「あさま」の4種類があります。いずれの名前も公募で決定しましたが、現在使用中か特急に使用された名称と同じで、沿線地域での親しみやすさが決め手になったそうです。「かがやき」は東京―金沢間の主要駅だけに止まる速達タイプ。「はくたか」は同区間で停車駅の多いタイプ。「つるぎ」は富山−金沢間を往復するシャトルタイプの列車。「あさま」は現行の長野新幹線と同じ東京―長野間の往復タイプ。わたしは、最も新しく一番人気の「かがやき」に乗車しました。
やはり高級感のあるデザインで、トイレも清潔で広いです。
ブログ「サンダーバード」で紹介した特急のトイレとは大違い!


グランクラス車内のようす

グランクラスの座席はゆったりでした

座席のコントロールパネル

さあ、開業記念弁当を食べよう!

中身はこんな感じでした

洋軽食と赤ワインが提供されました



座席は最高グレードの「グランクラス」が1席だけ残っていたので、迷わず購入しました。贅沢だと思われるかもしれませんが、最上の「おもてなし」に触れることも、わたしの大切な仕事です。車内で開業記念弁当を食べた後、エアラインのような軽食&ドリンクのサービスが提供されました。わたしは洋軽食と赤ワインを注文しました。飲み放題とのことで、中には日本酒を1人で5〜6本空けている強者もいました。そういう人たちは泥酔して騒がしかったのですが、みんな富山駅で降りていきました。


コーヒーとお菓子も出されました

車内で読書しました



軽食とアルコールのサービスの後は、コーヒーとパウンドケーキが出されました。至れり尽くせり、です。
「かがやき」の車中で、わたしは窓の外の景色を楽しみながら、エルンスト・カッシーラーの『人間――シンボルを操るもの――』宮城音弥訳(岩波文庫)を読みました。カッシーラーユダヤ系のドイツの哲学者で、新カント派に属し、“知識の現象学”を基礎にしながら、シンボル=象徴体系としての文化に関する壮大な哲学を展開した人です。彼のシンボル哲学は、現在執筆中の『唯葬論』へのヒントに溢れており、あえて北陸新幹線の中で読んだのです。というより、かなり前から「北陸新幹線に乗るときは、カッシーラーの『人間』を読んでやろう」と決めて、楽しみにしていました。最高の乗り物の中で素晴らしい本を読むのはまさに至福の時間であります。


車窓からのながめ

車窓からのながめ

車窓からのながめ

車窓からのながめ



しかし、その至福の時間も長くは続きません。2時間28分後、わたしの乗った「かがやき529号」は金沢駅に到着しました。金沢駅のホームにはカメラを持った大勢の人々が待っており、競い合うように「かがやき」を撮影していました。そういえば、東京駅のホームにも多くのカメラを持った人がいました。14日の開業以来、日本列島は北陸新幹線フィーバーの観があります。なんでも、金沢駅の入場券は2時間以内という制限付きだそうです。時間制限のある駅の入場券というのも凄いですね!


「かがやき」グランクラス車内のようす



「かがやき」の車内でも撮影している人たちだらけでしたが、グランクラスの車両には部外者は入れないようになっていました。ところが、わたしが東京駅から乗車して終点の金沢駅で降りるまで一度も切符の確認は行われませんでした。降りる前にアテンドの女性に「北陸新幹線って、切符をチェックしないんですか?」と尋ねたところ、「わたしどもはしませんが、車掌が切符を確認に参ります」との答えでした。しかし、実際は一度も車掌の姿など見かけませんでした。一体どうなってるの?


金沢駅に到着した「かがやき」529号



ともあれ、わたしは日本で最も好きな金沢の街に到着しました。製造業の街である北九州市は「文化の砂漠」などと言われますが、逆に加賀百万石の伝統が生きる金沢ほど文化的な街はないと思います。
もともと私は、金沢を代表する作家である泉鏡花の文学を愛読していました。鏡花ほど幻想的で美しい物語を書いた作家はいません。


「かがやき」529号をバックに



鏡花の他にも、マリエールオークパイン金沢の前庭に今も文学碑が立っている室生犀星は「抒情小曲集」の世界から「愛の詩集」の世界に向かって行った大詩人ですし、哲学の世界ではかの西田幾多郎鈴木大拙が金沢の地で思索し、世に出ました。西田はプラトンやカントにも比べられる日本最大の哲学者といわれ、大拙は日本人でもっとも世界によく知られた禅哲学者、宗教学者、宗教者です。彼によって欧米における禅(ZEN)ブームが起こり、今日の欧米人の日本理解や東洋への関心も大拙の功績だと言われています。


金沢駅のホームで



西田幾多郎鈴木大拙の2人は、日本が世界に誇りうる大思想家です。
しかし、じつは同年齢の2人は金沢の地で親交を深め、生涯の大親友となり、西田の臨終は大拙が看取りました。ちなみに鏡花の臨終は友人の柳田國男が看取っています。元来ロマン主義的傾向のあるわたしは、泉鏡花室生犀星西田幾多郎鈴木大拙らの著書を金沢出張の際に少しずつ読むのを何よりの楽しみにしています。


金沢駅のホームで



各地で冠婚葬祭事業を展開するサンレーですが、特に縁が深い土地はなんといっても、小倉・金沢・沖縄です。本社のある小倉が「小笠原流礼法」、沖縄が「守礼之邦」なら、金沢ひいては石川県のキーワードは「もてなし文化」と言えるでしょう。キリスト教の隣人愛に基づく「ホスピタリティ」は儒教の「礼」に通じ、いずれも人をもてなす心の基本です。


金沢駅のホームで



つまり、小倉・金沢・沖縄は「ホスピタリティ・トライアングル」なのです。
いずれの地でもサンレーがトップシェアを占めているのは誇りです。
昨年、京都駅で「もてなし文化の金沢に行こう」という大看板を見て、ちょっと驚きました。京都こそが日本を代表する観光文化都市だと思っていましたが、こと「もてなし文化」にかけては金沢のほうが上のようです。


金沢駅にて



金沢の「もてなし文化」の背景には、能とともに広く市民の間に浸透している茶道の存在があるように思います。数多い喫茶店や茶屋は言うに及ばず、定食屋や美術館などでもお茶のもてなしを受けます。煎茶ならともかく、これほど市民が抹茶を飲み慣れている街は全国でも珍しいでしょう。
わたしもは以前、父と兼六園大茶会に参加しましたが、その参加者の多さに金沢の茶道文化の底力を感じました。


決定版 おもてなし入門』(実業之日本社



茶道といえば、一期一会。人生ただ一度の出会いを想定した真剣勝負の接待。まさにジャパニーズ・ホスピタリティそのものです。わたしは、「ジャパニーズ・ホスピタリティの真髄」というサブタイトルを持つ『決定版 おもてなし入門』(実業之日本社)を上梓しましたが、北陸新幹線の開業によって、日本一の「おもてなし」都市である金沢がさらに輝くことを信じています。


金沢の街がさらに発展しますように!



最後に、北陸といえば、わたしは北陸大学の客員教授を7年間務めました。しかしながら、この3月いっぱいで任期満了となります。小倉から新幹線「のぞみ」と特急サンダーバードを乗り継いで金沢まで通った日々がなつかしいです。北陸大学のみなさまには本当にお世話になりました。同大学で教鞭を取ったことは、わが人生の良き思い出となりました。これからは、九州国際大学客員教授として頑張りたいと思います。最後に、わたしの大好きな金沢がより一層発展しますように!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年3月25日 一条真也