うたかたの日々@はてな このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-08-19 航海それとも後悔 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

週末は、留守居役。

洗濯物を干しに二階に行くと、

空が透き通ったような青。

飛行機がくっきりと見えた。

どこへ行くのだろう。

筋状の雲。

「磐城平の方までゆくんか」。


『ビリー・バッド』メルヴィル著 飯野友幸訳を読む。

主人公は「英国軍艦」のイケメンセーラー、ビリー・バッド。

アイドルのようだったが、上の者になぜか疎んじられる。

無垢なビリーは思い当たる理由がない。

今で言うところの「ビリー、死ね」ってなもんで

策謀により船上公開死刑(私刑)となる。


あらすじを簡単に紹介したが、

カフカの『審判』とか不条理な小説を思いうかべる人もいるだろう。

作者は実際に捕鯨船軍艦に乗っていた。

それが『白鯨』などの作品になった。本作も。

不幸な水兵。

昔の日本の作家が翻案するなら

ビリー・バッドを薄井幸男と名づけるかも。


新訳ということもあるが、なーんか新しいのだ。

なーんか自由なのだ。

聖書の引用、作者自身の韜晦など

本筋に関係ない、なくはないけど、

その部分が独特の雰囲気を演出している。

羽根つきギョーザの羽根の部分。

わかりにくい例えか。

最後に「ビリーは手錠をかまされて」という詩が出てくる。

存命だったら高田渡に作曲、歌をお願いしたいもんだ。


遺作となった短篇。

その頃、メルヴィルは忘れられた作家の一人で

出版されるまでの経緯を解説で知って

ここの部分も小説になるなあと思った。



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2018-08-16 短篇小説は盆栽である このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


『戦時の音楽』レベッカマカーイ著 藤井光訳を読む。

テーマは戦争と音楽。

つーと『戦場のピアニスト』のような感動ものを思うが、違う。

端正に育てられた盆栽のような短編がキラキラしている。

盆栽いじりの趣味はないが、

優れた盆栽ミクロコスモスだが、

見るものをマクロコスモスに誘う。

短篇小説も余分な枝葉を限界まで刈り取る。刈り取る。

最初はすぐに読めてしまう。でも、何回か読むと

完成された世界に魅了される。


盆栽の比喩がピンとこない人には

料理の素材に例えるのはどうだろう。

フルコースに出せるくらいの素材で

スープを提供するとか。

以下作品の短い感想をば。


『青を背景とした恋人たち』では、

なぜか現代に復活した大音楽家

当然クラシックかと思ったら、ブルーズジャズが気に入る。

モーツァルトならヒップホップだったりして。

その立ち姿が村上春樹の騎士団長に似ている。


ブリーフケース』は、横暴なロシア兵に怒る老女性作家の

気概と機知を称賛したい。


『爆破犯について私たちの知るすべて』

爆破犯が読んでいた本が気になった。

ランボードストエフスキー、アップダイク、

コンラッドナボコフ、ムラカミ、ディケンズ

プルースト、マン」

かぶる。爆破犯の素質があるのか。


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2018-08-14 『グッドワークス!』って このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


仕事関連本から読書メモ。

『グッドワークス!』フィリップ・コトラー デビッド・ ヘッセキエル ナンシー・ リー 共著を読む。

肝となる言葉は「コーズ」。

「社会的な貢献を目的とする企業の主義主張

のこと。

今まで企業は売上を挙げて企業を存続させるために、広告やセールス・プロモーション、SPに

お金を注ぎこんできた。

ところがある程度、物質的に充足、飽和状態になると消費者は、

かつてのようにやたら新商品を購買しようとはしなくなった。

まあいろんな新商品に画期的とうたってはいるが、毎年そんな商品は出るわけないと思うし。

広告やSPが有効でなくなった。どうする。

「コーズ・プロモーション」や「コーズ・リレイテッド・マーケティング」で行きなさいと。

アメリカでの事例が山のように紹介されている。

引用。

「最近の消費者は、社会的取組みとは関係なく単にブランド選好を高めようとする

マーケティング手法(人気稼ぎのコマーシャル提供)よりも、自分が好感や親近感を

抱いている社会的課題を支援しているマーケティング手法好意的にとらえる」


企業ではメセナや収益の一部を寄付する社会貢献活動、CSRに取り組んでいる。

そこを下品に言うと売り物にすると。

たとえば企業とNPOアライアンスなどにより

黒子的存在だったCSRに光を当てる。

つまり、ええ仕事、してまっせと。

そのメリットは。引用。

「●売上げおよび市場シェアの増加

●ブランド地位の強化

●企業のイメージや影響力の向上

●従業員にとっての魅力や意欲の向上、定職率の確保

●営業コストの削減

投資家財務分析アナリストに対するアピール力の向上」

社内的にメリットがあるのがほおと思った。

社会還元などというと経営者は眉をしかめるが、

「善いこと」をしている企業が存続していける条件のようだ。

あとはNPOというとボランティア手弁当の印象が強いが、

NPOでそこそこ食っていけることを示唆している。


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2018-08-11 暑気払い このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント



暑気払い-1

噂のローソンPB缶チューハイアルコール度数12パー、ウォッカだぜ、ベイビー。

正しくはウォッカレモンソーダかな。

大きめのグラスに氷をザクザク入れて

プシュッ!ドクドク!ゴクゴク!

喉に走る氷河特急ロシアからアイスをこめて。


暑気払い-2

ミレニアム 5 上復讐の炎を吐く女』(上)(下) 

ダヴィド・ラーゲルクランツ著ヘレンハルメ美穂 久山葉子訳を読む。

女囚となったリスペット。冒頭の刑務所のシーンから

はらはら、わくわく、どきどきの無限ループ

牢名主の女性からいたいけな美少女を助けるために立ち向かう。

不幸なDVに加えイスラム圏の男尊女卑、ロマ、人種問題も加味。

このストーリーの巧みさなどをネタバレせずに書くのはナンギなことだ。


科学の実験材料となって人生を狂わされた子どもたち。

暴力で抑圧された幼年時代

ドラゴンタトゥーの女・リスペットは、本作では活躍は控えめ。

相棒のモテ中年男、ジャーナリスト・ミカエルも控えめ。

とはいえ、要所要所では活躍するが。

一言でいうなら今様とりかえばや物語」。

浦沢直樹の『MONSTER』にもつながるかな。

リスペットを支えていた人の葬儀のラストシーンが感動的。


ジャンゴ・ラインハルトも結構なキーポイントになっている。


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リフキリフキ 2018/08/13 16:29 私はここに来ることができてとても幸せです

2018-08-09 コリずに今日の五首  このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


武蔵野の臓器林とPCが誤変換  八宝菜を発砲妻 これは愚変換


塀の節穴から 後家の行水でも 覗いていたのか よく見ると 男 首がなかった


福島の桃 贈る人がいなくなり 自分で買って 遺影に供える


明け方の ラジオ 突然流れる  安田成美 風の谷のナウシカ  金色の


会いたかった 愛騙った あ痛!カッター 蟻たかった 家〜ィ!


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2018-08-07 村上RADIOと『お下げ髪の詩人』 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

お下げ髪の詩人

お下げ髪の詩人

村上春樹のくぐもった声、

誰かに似ていると思ってしばし考える。

そうだ、かせきさいだぁだ #村上RADIO」

というツィートにいいねが2つ、ついた。


『お下げ髪の詩人小沼丹著を読む。

扉挿画がなんとなく『文学ムックたべるのがおそい』をイメージさせる。

いまでいうところのYA小説。

どんなものかと期待しながら読む。


『青の季節』は、母の入院で東京から地方のおじの家に

預けられる中学生が主人公。

マイ自転車を持っているのだから、恵まれているのだろう。

彼と同じ学校の友人とその姉らが

くりひろげる青春行状記。

小沼丹の小説だから友人の姉に好意を持っても

行為には及ばない。

おおらかで健康、牧歌的。

子どもの頃見ていたNHK少年ドラマシリーズのよう。


『白い少女』は絵のタイトル。

モデルになった少女の話。

湖畔の別荘、島などハイカラ風味。

寸止めの奇想小説。

切なく、はかない。


『お下げ髪の詩人』は「信州N湖のほとりにある別荘」に

住んでいるアメリカ人の少女のこと。

「初出『ジュニアそれいゆ』」。

中原淳一か。ぴったりの世界。

これも青春時代の思い出。

安岡章太郎の『ガラスの靴』を思い出した。

甘い思い出、苦い思い出は

記憶の標本箱から取り出す必要はない。


片岡義男村上春樹という流れはあるなと勝手に思っているが、

小沼丹片岡義男村上春樹というのもあるのでは。


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2018-08-04 ツクツクボウシが鳴いていた このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

一昨日の朝、ツクツクボウシが鳴いていた。

西川のりお師匠じゃおまへんで。

確か、夏の終わり頃に鳴くはず。

狂い鳴きサンダーロードか。


『競争社会の歩き方』大竹文雄著を読んだ。

「競争社会」と聞くと、どうも強者生存

良いものだけが残るといったエセダーウィニズム的に考えられがち。

作者は言う。

「競争のおかげで私たちは自分の長所を見つけることができる。

私たちは、下手に自分探しをするよりは、競争にさらされたほうが、

自分の長所を知って創意工夫ができるようになるはずだ」

独占やカルテルなどで既得権益を手の中におさめていると

不利益しかもたらされない。

もちろん、競争がフェアってことだけど。


平等主義誤用・誤解の代表的なものが

学芸会で全員主役や運動会の徒競走で着順を決めないことだ。

それに対して作者は言う。

「反競争主義的教育で協力する心をもたらそうと考えた教育が、

能力が同じという思想となって子どもたちに伝わると、

能力が同じなのだから、所得が低い人は怠けているからだという

発想を植えつけることにつながった可能性がある。―一部略―

競争と助け合いの両方が大切だという価値観をうまく伝えていく必要がある」


なんだか真面目な本と思われるかもしれないので

やわらかいところも紹介。

ご存じくまモンがなぜ人気ゆるキャラになったかを説明している。

「使用料を無料にした」

ただし「熊本県の関連商品や宣伝にしか使えない」。

そこには「現状維持バイアス」が働いて

「一度利用すると継続して利用するようになる」。

多岐に及ぶ具体例が最後まで読むことを飽きさせない。


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2018-08-02 「される」と「する」の間 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


『中動態の世界』國分功一郎著を読んだ。

前から読もうと思っていたが、決め手は

ギリシャ語の時間』ハン・ガン著 斎藤真理子訳。

そこで訳者がこの本を紹介していたから。

ギリシャ語には受動態「される」と能動態「する」の間に中動態という態があった。

今は埋没してしまったが、温故知新。

中動態的視点を有することが、これからのブレイクスルーの端緒となる。


アリストテレススピノザハイデッガーアレントアガンベン

デリダフーコーなど中動態そのものに論考した人と

中動態という言葉は使わないが、偶然か必然か、

中動態の概念とリンクする論考した人のテキストにあたる。

このアルケオロジーが読んでいて愉しい。


個人的にはフーコー著作をいちばん多く読んでいるので

フーコーの権力論」を引用する。


マルクス主義的な権力観においては、―一部略―

暴力を独占している階級や機構が大衆を抑えつけている」

「それに対しフーコーは、権力を押さえつけるのではなくて、

行為させると考えた」

「権力は人がもつ行為する力を利用する」


「生権力」。

ふだんは隠れ蓑をまとって不可視なのだが、

最近は油断なのか、荒っぽいのか、

可視化する、しばしば。


権力と暴力は違うと。

ただし権力は「しばしば暴力を利用する」

決してやさしくはないが、重要と思われるテキストが続く。


作者の言いたいところを引用。


「完全に自由になれないということは、完全に強制された状態にも

陥らないということである。中動態の世界を生きるとはおそらく

そういうことだ。われわれは中動態を生きており、ときおり、

自由に近づき、ときおり、強制に近づく。

―一部略―(中動態を理解して、取り入れることで)少しづつだが

自由に近づいていくことができる」


二者択一、二項選択一種踏み絵である。

行動経済学でいうところの

選択が多いと人は選べない」。

だから、あれか、これか、にする。

踏むか、踏まないか。

踏まないようで踏む、

踏むようで踏まない。

さて、中動態はどっちだ。

メルヴィルの遺作『ビリー・バッド』が取りあげられている。

読みたくなった。


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2018-07-31 麦に頼る夏 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

涼しかったのが夢のよう。

また東京砂漠オアシスを探す旅が始まる。

夏休みは涼しい午前中に勉強しましょう。

って言われたけど、いまは朝から暑い。


夏は省エネとか電力会社が口をすっぱくして

PRしていたが、

それを律義に守って高齢者熱中症

最悪命を落とすからなのか、

なりを潜めている。

原発が稼働しなくても省エネしなくとも

なんとか電力は供給されている。なぜ。


音声データ起こし、完了。


昼は麦茶。夜は第三の麦酒

麦に頼る夏。


『競争社会の歩き方』大竹文雄著を読んだ。

行動経済学濃度の高い内容。


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2018-07-29 あおられる このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント


台風12号、昨日の夕方。渋谷の歩道橋。

シャワーのような雨が、強い風にあおられる。

映画のワンシーンのようで

そのサマをしばし眺める。

仕事を早めに切り上げて電車に乗る。

さすがに、ガラ空き。


殺人者の記憶法』キム・ヨンハ著 吉川凪訳を読む。

アルツハイマーになった70歳のサイコキラーが主人公。

モノローグで過去と現在が重なり合う。

何せ認知症なんで最近のどころか

さっきの記憶がおぼろげ。

でも、昔のことは覚えているらしく。


なかなかにハードボイルド

主人公は物忘れ対策でTODOTHINGを

テープレコーダーに吹き込む。

ツイン・ピークス 』のクーパー捜査官を

彷彿とさせる。


最後の殺人から20年経つ。

主人公には養女がいる。

溺愛している娘に最近、恋人ができた。

気に喰わない。

20年ぶりで殺意が芽生える。

クリント・イーストウッドの映画みたいだ。

違ったけど。


ところが、真相が明らかになると

めまぐるしく話が展開する。

同じ事件でも加害者側と被害者側では

かなり印象が違うが。

その差異をいかに魅了させるかが作者の力量。


アイデンティティー

自分じゃなくて周囲からの見方で創成される。

ゆえに人はいろんなペルソナ(仮面)を持つ。

心理学ですぐに学ぶことだが。


映画化されているのか。だろうね。

舞台化するのもいいだろう。


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