本はねころんで

2018-01-19 あわてて読む

 本日は野暮用で外出となりましたが、それにあわせて、いまだ現役で働いている知

人のところをたずねて、しばし最近読んでいる本などについての情報交換でした。

 一人からは、先日の毎日新聞池内紀さんが取り上げられていたので、みてちょう

だいということで、池内さんの「記憶の海辺」を刊行したことを紹介したコラム「論

の周辺」をわたされました。

 それに続いて、自分もこれを読みたいので、図書館に予約をいれましたとのこと。

これは期限内に読み上げて、彼のリクエストにこたえなくてはいけないことで。

 この「論の周辺」には、「池内さんが若き日に情熱を傾けたオーストリアの批評家、

カール・クラウスいついての記述が印象に残る。」とありました。

昨日にも記しましたが、当方にとっての池内さんは、ちょっとかわったドイツ系の文筆

家の翻訳をする方でありました。

 本日に読んだ「記憶の海辺」には、次のくだりがありです。

「あんなにナチスヒトラーを誉めたたえて、トーマス・マンなどの亡命作家たちを批

判していたのが、一夜明けるとコロッと変わって、反戦作家ケストナーや抵抗文学論で

すからね。失礼ながら、この先生方は信用しないで、自分の目で見つけて、それを『自

分のドイツ文学』にしようと思いました。さしあたりは、この方々が目もくれなかった

ユダヤ系の人たちを集中的に勉強することにして」

 池内さんの本で、最初に購入したものは何だろうかなと思っているのですが、どうや

ら、当時の日本ではほとんど紹介されていなかったユダヤ系作家の長篇小説であった

ようです。

 いまでも未読のまま当方の書架にあるエリアス・カネッティの「眩暈」でありますが、

刊行されてすぐに購入、すでに未読45年となりです。1981年にはノーベル文学賞を受け

たカネッティですが、池内さんは先見の明があったといえるでしょう。

 もう一人の知人と情報交換をしましたら、それでは今年はドイツ文学イヤーというこ

とにしたらよろしかろうとのアドバイス。ここまでのところ、ドイツ系のものを途切れ

ずに手にしていますが、これをいけるところまでいってやりましょう。そのなかで、

カネッティ「眩暈」が読めたら最高でありますね。

2018-01-18 本日も本を借りに

 本日は外出の折に、図書館分館に立ち寄りまして、ここに架蔵されることになった

新着資料を借りにいきました。この本など、図書館本館におかれたほうが借りる人に

はよろしかろうと思うのですが、どういうわけかこの著者の別な本も、別の分館にお

かれていました。

 さて本日借りたのは、次のものです。

記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―

記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―

 12月の新刊で、池内さんによる回想録で、副題には「一つの同時代史」とあります。

ユリイカ」に連載していたものだそうですが、当方はこのところまったく「ユリイ

カ」を手にすることがなくなったことから、池内さんが連載をしているのはしりま

せんでした。

 池内さんのものは読みやすく、はずれなしでありますが、とにかく出版数が多いの

で、まずは図書館から借りて読む事になりです。

 どんなもんかいなとページをぱらぱらとめくっています。すぐに眼がとまったのは、

次のところ。

TBSラジオ部門にかかわり、映像・音楽プロデューサーとして知られる河内紀と対

談したことがある。同じ年生まれで、この人の『紀』はカナメと読んだ。

 河内紀

 池内紀

 雑誌にはソックリさんのような二つの氏名が並んでいた。二人してラジオで聞いた

印象深い番組をあげていった。ともに歴史にのこるような名番組よりも、日常的な、

何でもない番組のことをよく覚えていた。」

 その昔、いまほど河内さんが有名でない時代には、河内さんと池内さんを混同され

る方がいまして、それを文章にし、発表されたりしていました。まあそんな時代も

あったのでありますね。

 その文章は山口昌男さんの「知の遠近法」(78年刊)に収録のものですが、これが

雑誌に連載されていた時に、池内さんはちょっとかわったドイツ文学翻訳者であり

まして、まだ著書は何冊もない時でしたから、しょうがないか。

(「知の遠近法」のその後文庫本などで、これが修正されたかどうかは未確認であり

ます。)

2018-01-17 本を借りる

 本日は野暮用で外出となりましたが、その流れで図書館に立ち寄りまして、ひさし

ぶりで本を借りてきました。図書館へといくことはありましても、これまで借りる

気分にならずでしたが、これはいけないと、本日はえいやっと二冊借りてきました。

もう一冊と思ったのですが、それは分館に架蔵とのことですから、次回は、そこに

足を運んで借りることにいたしましょう。

 本日借りた一冊目は、次のもの。

昭和の翻訳出版事件簿

昭和の翻訳出版事件簿

 こちらの図書館は、宮田昇さんの本を良く選書するようでありまして、宮田さん

の新刊は、ほとんど手にすることができます。

 この本は、創元社ホームページに連載していたものに加筆して一冊にしたものとの

ことですが、刊行したときには89歳でありますからして、立派なことであります。

本日は、このなかのいくつかのところを読んでいるのですが、興味深い話がたくさん

ありです。

 たとえば、次のようなくだり。

「この『大久保康雄』訳を除いて、戦後の翻訳を語ることはできない。昭和20年代か

30年代にかけての翻訳出版の主流は、彼を中心になされていたと言っても言い過ぎ

ではない。」

 その昔の翻訳ベストセラーには、かなりたくさん大久保康雄さんのものがありまし

て、たぶん今でも新潮文庫の翻訳物などでは大久保訳が残っているはずであります。

大久保さんを、とんでもない人とやっつけたのは、丸谷才一さんでありまして、丸谷

さんの文章(「梨のつぶて」に収録されている)を読みますと、大久保康雄さんの翻

訳には手をだすまいという気分になるのでありますね。

 大久保さんも時代のベストセラーとなった「ロリータ」さえ翻訳しなければ、この

ようなことにはならなかったのかもしれません。きっと、大久保さんの翻訳で、小説

を読んで楽しんだという方も多くいますでしょう。そういう読者さんたちは、丸谷

さんの文章などは読む事はないかな。

 もう一冊は、どこまで読めるかわからないが、次のもの。

古都の占領: 生活史からみる京都 1945‐1952

古都の占領: 生活史からみる京都 1945‐1952

 著者 西川祐子さんは1937年お生まれとのこと。著書を手にするのはこれが初めて。

著書一覧を見ましたら、手にしていても不思議でないものがいくつかありです。

検索をかけてみたら、西川長夫さんの奥様とのことでありました。

 この本では、まず織田作之助のところから読んでみてみましょう。

2018-01-16 本日、読了せり。

 ここのところ読んでいました「スウィングしなけりゃ意味がない」をやっとこさで

読了であります。もうすこしあっさりと読めると思ったのですが、すこし苦労したこ

とでして、豊崎社長は佐藤亜紀さんのことをワールドクラスの作家というのですが、

当方は佐藤さんと相性がよろしくないかもしれないな。

 そんなことを思いながら、この小説を読んで気になった言葉などを検索してみまし

た。なにせ1940年ころのお話でありまして、敵性音楽でドイツでは耳にすることが

難しくなったジャズを愛するちょっと裕福な青年たちが主人公であります。

 ヨーロッパジャズが盛んなところでありますが、それでも戦時下の様子はわから

ずであります。特にこれはどういうふうにやるのかなと思ったのは、ドイツ国内では

ご禁制となったジャズ海賊版レコードをつくることで商売をするくだりであります。

BBC放送(ということは英国の海外向けのものでしょうか)をラジオで受信して、そ

れをトンフォリエンで録音するとあったところです。

 トンフォリエンってなんだであります。そう思って検索をしてみましたら、なんと

作者による、この小説の裏話のページがありました。

 大蟻食の生活と意見   https://tamanoir.press/

 なんとこのページは参考になることです。この小説のわかりにくさは、一度読んで

筋をおさえてから、次にこの参考ページに眼をとおして、再度読むと解消しそうで

あります。

 それでトンフォリエンでありますね。この小説の裏話には、次のように解説が加え

られていました。

「トンフォリエンについて。玉音放送を録音する時、同種の装置を使ったことが知ら

れております。すさまじく高価だったと言われておりますが、ドイツの当時の広告を

見ると、フォルクスワーゲンを今日の軽自動車新車程度とした場合、今日の邦貨

換算で定価三十五万円ほど、と考えていいと思います。中古ならもっと安い。」

 なんとなく、具体的なイメージがわかないことであります。やたら高価で、玉音

放送を録音するときに、同じようなものが使われたということだけわかりました。

なんといってもテープレコーダーがなかった時代でありますからね。

 そういえば、先日まで手にしていた田中勝則さんによる「中村とうよう伝」に次の

ようなくだりがありました。

「絶対に忘れていけないとうようさんの当時の自慢話があった。いわゆる『海賊盤

作物語』。面白いブートレッグ盤をたくさん作ったという話だ。

 とうようさんのお友達のひとりがディスクカッターという機械をお持ちで、アセ

テート盤という手製のレコードを作ることができた。それを使って、ヴォーグ盤の

ニグロスピリチュアルズ』などのアセテートコピーを作って、それをマスターに

レコード会社のプレス工場を使わせてもらってこっそり10枚プレスする、なって

ことをはじめたのだそうだ。」

 60年代はじめのころのことでしょうか。やり方は違うのでしょうが、1940年代の

ドイツの青年たちと同じようなことを60年代にはいると、日本でもやっていたので

ありますね。(もちろん、この時代にはテープレコーダーが普及していたのですが、

それだけでは海賊盤レコードは作れませんですから。)

2018-01-15 誰が買うのかな

 ここのところの出版業界で話題というと「広辞苑」第七版がでたことでしょうか。

 当方のところにも何冊かの「広辞苑」があるのですが、そのうち当方が購入したの

は、ずいぶん昔に購入した「広辞苑」(たぶん、第二版のはず、親から「広辞苑」を

買いなさいと金をもらい、それで「広辞苑」の安価な古本を買い、差額で小説本など

を買ったことを思いだします。)でありますが、亡父が遺した「広辞苑」も何セット

かあります。

 亡父は辞書をひく習慣があったのですが、その息子といえば、さっぱりでありまし

て、亡父の遺した机上版「広辞苑」も豚に真珠であります。

こういうことではいかんと思うのですが、「広辞苑」七版がでても、さっぱり気持ち

が動きません。

 今回の「広辞苑」第七版の売り上げ目標は、「本の雑誌」1月号によりますと20万部

だそうですが、これまで一番売れたのは第三版で260万部とのこと。それにしても、

ずいぶんと市場は縮小していることです。(先日に、岩波テナントビル小学館

売却したとニュースで報じられていましたが、第七版が200万部も売れるのであれば、

テナントビルを売らずに済んだものをです。)

 最近にみた本の広告で、これはどのような人が買うのであるのかと思ったのは、次

のものとなりです。

 

向坂逸郎評伝(上巻)1897~1950

向坂逸郎評伝(上巻)1897~1950

 いまでは向坂逸郎の名前を見ることもなくなりましたので、ほとんど忘れられてい

ると思っていましたら、この方を中心にすえて、歴史を書く人がいたのですね。

どのような方であるのかと思って、社会思想社のページをみましたら、学者ではなく

て、向坂さんの影響下にあった社会主義協会などで活動をされていた方のようです。

 その昔の労働組合には社会党左派というか社会主義協会の学習会がありまして、そ

の学習誌を購読している人がいたものです。

 社会思想社のページにある広告には、この本の紹介として次のようにありです。

「大正〜昭和にかけマルクスに人生をかけた人々の姿を浮かび上がらせ、近代日本の

政治・思想史を照射する。

東京帝大助手から社会主義諸派の論戦華やかなドイツに留学しマルクシズムを研鑽

九州帝大に職を得て間もなく「赤化教授」として追われ、世界初の『マルクス

エンゲルス全集』を編纂。論壇では労農派の雄として活躍。人民戦線事件で獄に

繋がれ戦時下を馬鈴薯で生き抜いた。

櫛田民蔵、山川均、猪俣津南雄、大森義太郎、山田盛太郎、宇野弘蔵との切磋琢磨は

活気に満ちたマルクス派の群像を活写し、自由主義論争は暗い時代のインテリの空気

をうかがわせる。戦後は『資本論』翻訳とマルクス経済学の彫琢に傾注しつつ、山川、

鈴木茂三郎荒畑寒村らの激動期の模索に関与。社会党揺籃期の秘史でもある。」

 こうした時代に関心を持つという人は、学者さんを別にすれば、すくなくとも70歳

くらいになっているでしょうか。