「強制的な規範」や「法」を抜きに、安定した社会関係を結ぶことができる人間集団などの数として主張されている仮説。
提唱者のロビン・ダンバーは「霊長類大脳の新皮質の占める割合」と「それぞれの群れの構成数」には相関関係があると主張している。
ダンバーの論文。 http://www.liv.ac.uk/evolpsyc/Evol_Anthrop_6.pdf
そこから、人間における「ダンバー数」は「150」程度だとする主張が多く、ビジネス書などにも組織論のひとつとして引用されることがある。
※この記事は、授業で接している学生の皆さんを対象としたものです。予めご承知おきください。 自民党の政治資金問題が拡大し、派閥解散が報じられた際、自民党派閥のメンバー数と「ダンバー数(Dunbar‘s number)」との関連を興味深いと感じた方も多いでしょう。霊長類は、たまたま居合わせた個体たちが群れを作るのではなく、相互に認識し、自集団(の個体)と他集団(の個体)を区別する集団を構成し、その集団内で、資源を巡り様々に競合しつつ、社会的知性(「マキャベリ的知性」(Byrne and Whiten 1989)とも呼ばれる)を駆使して、複雑な社会的関係性を織りなし生活しています。人類学者であるDu…
夏の甲子園が始まり、連日熱戦が繰り広げられています。 コロナ禍で選手が感染してしまったチームが複数出てしまい、運営側は感染校の試合日程をずらすなど、異例の措置をとっての開催となりました。 高校生活のほぼすべてを、練習に費やしてきた球児たちへの、運営側の配慮の跡が見て取れます。 コロナウィルスとの闘いも足掛け3年となり、その間子供達は、貴重な体験を積む機会を奪われ続けてきました。 高校球児たちもその例外ではなく、今回甲子園出場の切符を手にした選手たちのプレーぶりを見ていると、喜びが体全体からあふれ出しているように感じます。 彼らにとって、チーム一丸となって勝利にまい進した時間は、今後の人生の中で…
日本人に共通してみられる行動の背後にあるものは何でしょうか。それによって日本人の行動を予測できる、シンプルな原理や仕組みがあるのではないでしょうか。 日本人の行動を説明する要素として、仮に、次の2つをあげてみます。 (a)ヒトには上下があるという本能 (b)貧弱な想像力(即物的に考える傾向) これとは反対に、近代人が備えていると思われる要素をあげるとこうなります。 (a´)ヒトは平等であるという信念 (b´)豊かな想像力(抽象的に考える傾向) 人間は、文字を発明することによって、高度に抽象的な概念を操作することが可能になりました。また文明が発達するのに伴い「個人」といった概念が現れ、「平等」が…
コンクリートジャングルに住む原始人 現代日本に住む日本人は、食料が豊富で、暴力を振るわれる可能性が低く、私有財産が確実に守られる環境に住んでいる。しかし、それはせいぜい直近50年程度に実現したことであり、現代人の身体や心は、石器を使い、最大でも150名程度の主に血縁関係によって成り立つ集団で暮らし(ダンバー数 - Wikipedia)、未来が不確かで安定しない生活をしていた頃の環境に適応しているらしい。 現代で肥満や糖尿病などの生活習慣病が問題になっているが、これは食料が不足しがちな世界で暮らしていた人類にとって、食べられるときに食べておき、脂質や糖分を好む個体のほうが適応的だったということだ…
私はSNSに向いてない。 旧Twitterを始めたのはまだ思春期の頃、2010年代前半でした。その頃はアングラ感が残る今よりも穏やかな空間でしたが、私はその頃からフォロワーが200人以上になるあたりで強烈な不快感を抱いていました(成長してからダンバー数という存在を知る)。 あれからまもなく15年。結局、SNSでの繋がりは増やせないままでアラサーになっています。 ソーシャルネットワーク全盛のいま、そして何かとフォロワーが多ければ良いに越したことがない価値観が猛威を振るっている中、私はしっかりと自分の価値観を落とし込める、長い文字ベースの媒体に生きやすさを求めようとしています。 多くの目に留まらな…
fujipon.hatenablog.com 「四十代最後の夏が終わろうとしている」というブログ記事を書くつもりでしたが、fujiponさんの上掲記事を読んで、何か鳴き声をあげたくなったのでクマーとさけぶことにしました。 fujiponさんが上掲記事でおっしゃっているように、SNSを介して色々なことが起こるようになりました。その「色々なこと」のなかには良いこともあれば悪いこともあり、ふさぎ込んでいる時など、悪いことのほうに心が引っ張られがちだと感じます。 しかし、現行のSNS、特にXについてはスケールメリット、それか、スケールデメリットとでもいうべきものが一番大きいのではないかと私は思います。…
道徳や規則が好きな人がいる。これらは一見、他人を差配するためのものと思われがちだが、本当は劣勢にある者が自分を防御するために作るあるいは誰かに作ってもらうフィクション(作り話)である。たとえば、職場で謎ルールにこだわる人をよく観察してみればわかるが、そのような人は果たして有能な人物であろうか。 レギュレーションが多い職場は不愉快でやりにくいものだが、人間の集団に系統的な規則が必要なのはその大きさがある閾値(ダンバー数 ≅ 150人程度)を超えたあたりからであることがわかっている。学校のクラス程度の小規模な集団では規則は少ないに越したことはない。日本人は何につけても細かい人が多く、規則を増やした…
宗教の起源 作者:ロビン・ダンバー,小田哲 白揚社 Amazon あーおもしろいなー。 ダンバー数ってのはさすがに聞いたことあったけれども、これって宗教を考えるときにコレだけ重要な数だったのか……これと前後して、「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」も読んでいて、メソポタミア辺りの集落を辿りながら都市やら宗教の起源が語られていたわけだけれども、これはアプローチが全然違って大変面白い。まあ、集団が大きくなるとストレスが生じるみたいなところは確かに通じるところもあるかもしれないけれども、そこに人間の脳の仕組みからアプローチしていくのはめちゃくちゃ面白い。メンタライジングとか、今まで全く考えたこ…
こんなに高くては仕方ない。まあ、過去十何年分の梅干しの瓶が家中にごろごろしてるから、今年はそれを消費することにする。 本式しば漬け(茄子・胡瓜・茗荷を塩と赤紫蘇だけで一気に乳酸発酵させる。梅酢は使わない)用に紫蘇だけ買っておきましょう。 ○エイモア・トールズ『リンカーン・ハイウェイ』(宇佐川晶子訳、早川書房)○相田洋『中国生活図譜』(集広舎)○相田洋『中国生業図譜』(集広舎)○相田洋『中国妖怪・鬼神図譜』(集広舎)○松平家編輯部『松平不昧傳』(原書房)……『吉兆』の湯木貞一さんは、自分が日本料理の素晴らしさに目覚めたのは松平不昧の茶会記、とりわけその季感を大切にした献立だと、繰り返し語っていた…
はてなにエンジニアリングマネージャとして入社して2ヶ月と少し経ちました。 マネージャとしての「最初の100日」もいよいよ終盤です。 note.com 入社して最初の取り組みとして、およそ100人のエンジニア全員との1on1を実施しました。 なぜ全員とやろうと思ったか イギリスの人類学者であるロビン・ダンバーによって提唱された「ダンバー数」というものがあります。 これは、人間が安定的な社会関係を維持することができる人数の認知的な上限について提案された数字です。大雑把に説明すると、人間が相互に認識しあって社会関係を築ける人数はおよそ150人程度、というものです。 要するに1つの組織でお互いに顔見知…
今日の雑記 土曜は武術稽古仲間と飯能窯に行って陶芸体験してきました。焼き魚用の皿を2枚こしらえました。出来上がりが楽しみです。 晩ごはんはピッコラ・ナポリさんに初めて行ってみました。どのピザも美味しかったです。写真を取りそびれたけど、クワトロフォルマッジも美味しかったですね。ブルーチーズとハチミツの組み合わせもまたマリアージュと言えるのではないでしょうか。 ピッコラ・ナポリさんのピザ (画像がなんにもないと記事のサムネイルがさみしいので、メシの写真を上げた) 最近は不動産会社住協の広告で美杉台が出てきますね。美麗な景色が出てきて見せ方が上手いなと思いました。 URL: https://www.…
・「宗教が社会現象なのではなく、むしろ社会が宗教現象であるのだ」T・パーソンズ (後期デュルケムに対しての評論) ・『シン・レッド・ライン』(1998) ガダルカナル戦 テレンス・マリック監督 ハーバード哲学科首席卒業 分析哲学 人間同士の戦争が動物の視点から馬鹿馬鹿しいものとして描かれる ・ブルーノ・ラトゥール、ダン・スペルベル アクターネットワーク理論、関連性理論 疫学的視座 シャーレの中の寒天培地を観察するようなやり方 主体性なんて屁の突っ張りにもならない。 ・フクヤマ ✕歴史の終わり → ◯社会の終わり すでにフーコー「人間の終焉」で言われている ・グローバル化 ✕多国籍企業 → ◯国…
昨日散々内職進めてましたが、依頼の内容も相手方ともう一回話をしてたり(当然通話)してたら、 結構ややこしい話になり、頭が混乱し、パニックになり、通話終えたあと クールダウンの時間を作らねばと思いました。 資料ももう一回良く観なければならないし、それはパソコン使いながらは出来ないじゃないですか。 まあ、パソコン画面から、更にページ開くとか言う作業より 案内テキストなどが紙媒体である方が私は助かります。 しかし、読めば読むほど 「これ、まだやらない方がいい作業かも」とか 「先にこっちを打つ方が効率が」とか 「いや待て、依頼主の話を先に訊くべきか?」とか 次から次に、疑問系が湧いてくるのですよ。 そ…
その2です。その1はこちら。 『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ロビン・ダンバー・著 小田哲・訳(白揚社, 2023)宗教の起源作者:ロビン・ダンバー,小田哲白揚社Amazonあまり本についての情報を知らないまま、タイトルとサブタイトルに興味を惹かれて買った本でした。なので内容がちょっと思っていたのと違ったけど、それでも最後まで面白く読めた。 著者は「無神論者」を自称する科学者で、主に人間(霊長類)の脳と自分が身内として把握できる集団の規模の研究で業績を残した人らしいです。それを「進化心理学」という。 ちなみにその「自分が身内として把握できる集団の規模」を「ダンバー数」とし…
おそらく台湾において21世紀の民主主義の 「ある理想の形(暴力をともなわない)」が実現一部 しているという話になってくるのだがそこに は かつてアーレントが述べた「人間の条件」が関わっているということ でもある 話である 台湾 オードリー・タン前デジタル担当相 単独インタビュー「誰ひとり取り残さない」 ・デジタル技術だけではなくもっと古典的なものであっても技術は公正 を可能にする助けになる(選挙開票における3つの角度からのビデオ映像) そこで可能になった透明性に反対するものは誰もいない(かくしたいなどと いう欲はあからさまに反対方向だと誰にでもわかるからである) 多元性Pluralityは 「…
善と悪の生物学(上) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon善と悪の生物学(下) 何がヒトを動かしているのか作者:ロバート・M・サポルスキーNHK出版Amazon 本書は,ストレスについての神経生理と行動の研究者で,アフリカで長年ヒヒの観察をしたことで知られるロバート・サポルスキーによるヒトの行動(特に暴力と攻撃と競争)についての一冊.進化生物学,脳神経科学,心理学の至近要因,究極要因の両方を含む広範な知見が簡潔に紹介され,著者自身の様々な考察が述べられている重厚な一般向け啓蒙書だ.サポルスキーは2001年に自伝的な回想録「A Primate's Me…
読書好きの一人として知人と話していると、よくおすすめの本を聞かれる。おすすめの本は好きな本とは異なる。どうせおすすめするなら、相手のことをよく知った上で本当の意味で本を薦めるのが私のモットーだ。相手がいかにも好きそうな本を薦めることもあれば、相手の長所に寄り添ってもっとそれを伸ばしてあげられそうな本をそれとなく伝えることもある。だから誰にでもおすすめの本、というのは軽率に言わないようにしているのだけれど、自由に「好きな本を薦めてください」と許可されたら筆頭に挙がる本がある。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』だ。 『サピエンス全史』は2011年にヘブライ語の原著が出版され、次々と多言語に…