本書は2021年に、「複雑な物理システムの理解への貢献」(本書、p272)に対してノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏が、共著者のブロッコリー氏とともに、これまでの仕事についてまとめて書いたものだ。 今から70年近く前の1958年、真鍋氏は、米国で新しい研究所(地球流体力学研究所)を立ち上げていたスマゴリンスキーから誘われて研究所のチームに加わった。その頃までに米国では、地球の大気循環をモデルによる計算で表現(シミュレーション)する試みがはじまっており、真鍋氏はこれに水循環を加える仕事に携わった。こうして1960年代には最初の大気大循環シミュレーションモデルが完成し、やがて海洋大循環モデルと結…