訓読 >>> 2383世の中は常(つね)かくのみと思へどもはたた忘れずなほ恋ひにけり 2384我(わ)が背子(せこ)は幸(さき)くいますと帰り来(く)と我(あ)れに告(つ)げ来(こ)む人も来(こ)ぬかも 要旨 >>> 〈2383〉世の中は思うようにいかないのが常だと思ってみるけれど、一方では忘れられずに、やはり恋していることだ。 〈2384〉あの方はご無事でいらっしゃると、まもなく帰って来られると、告げてくれるだけの人でいいから、来てくれないものか。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」2首。2383の「はたた忘れず」の「はた」は、その反面、一方では、…