「私たちは大聖不動明王《だいしょうふどうみょうおう》の御使の、 金伽羅《こんがら》、勢多伽《せいたか》という童子、 文覚無上の大願を起して勇猛な行《ぎょう》を企てているから、 行って力を借してやれとの仰せ、不動明王のご命令で現れたのです」 と童子の一人が答うれば、文覚はたちまち声を荒らげていった。 「不動明王はどこにおられるか?」 「都率天《とそつてん》に」 と優しい声で答えると、天童二人笑をたたえてゆるやかに空高く昇って消えた。 文覚は思わず正座すると合掌した。 さてはわが行《ぎょう》を不動明王がしろしめすところとはなったか、 これなら大願も成就するであろうと勇気百倍、晴れやかな顔で滝壺にも…