『夜のピクニック』 恩田陸著(新潮文庫, 2006.9) 気持ちのよい季節となった。外を歩くと気持ちいい。今日紹介する本は、恩田陸の『夜のピクニック』。高校生の強歩大会を描いた青春小説だ。この本を読むと、16歳の僕自身の体験が蘇る。 高校1年生の僕達は歩いていた。固い蕾をつけた桜並木を下り、ダムの脇道から山の中へ入ってゆく。 「俺たち何処にいくと?」 「知らん。初めてやもん」 強歩大会は、冬の終わり、春の初めに行われる高校の伝統行事。朝早く学校を出て、日が沈む頃に学校に戻ってくるらしい。それくらいの情報量しか持っていない僕と友達2人だったが、先を急いでいた。 「決して、順番を競うものではありま…