今年の春頃に種からプランターに植えたバジルが大きく育っている。朝日に向かって青々と葉を広げているバジルたちは、私にとって最高の自慢であり、朝のひそかな楽しみになっている。 「よしよし、今日も元気に育ってるな」 私はプランターの前にしゃがみ込む。若い頃はガーデニングなんて一ミリも興味がなかったのに、五十代も半ばを過ぎると、こういう小さな命を育てる時間が無性に愛おしくなるから不思議なものだ。 指先で先端の柔らかい葉を摘み取ると、途端に弾けるような爽やかで濃厚なハーブの香りが立ち上り、まだ眠気の残る頭を心地よく刺激する。摘みたてならではの力強い香りだ。私は両手から溢れんばかりの葉を収穫し、キッ…