私がこの文章を書こうと思ったのは、自分の状況をできるかぎり客観的に表現したかったからだ。そうすることで、事実と感情を少しでも切り離したかった。私は欠陥のある人間だし、その根は深い。そして、その根の底に過去の記憶が潜んでいる気がする。これはひとつの家族の物語であり、私の物語でもある。この話は決して心楽しいものではない、ということを最初に忠告しておく。おそらく、私の話を少しでも聞こうと思える人は、心に何らかの傷を抱えた人だ。そして、その傷は家族という形からできているだろう。一言で表現することのできない複雑な傷だ。それを出来得る限り正確に書いていきたいと思う。 母は私が二歳半の時に、出て行った。父は…