穴 (新潮文庫)作者:浩子, 小山田新潮社Amazon 予備知識なしで読み始めたのがよかったのだと思う。テンポのいい文体に気持ちよく引き込まれながら、気がついたらまさに穴、作者の思うつぼ、いや、思う穴にはまり込んでいたのだった。おもしろがればいいのか、気味悪がればいいのか、どうやらどちらともつかないところに、穴はぽっかりとあいているようだ。もちろん、ぼくは小山田浩子の芥川賞受賞作『穴』のことを言っているのである。 夫の転勤を機に会社を辞め、夫の実家のある田舎に引っ越してきた「私」は、午前中に買い物を済ませると、夫が帰って来るまで、特に何もすることがない。家は姑のやっている借家で家賃はいらないと…