内容 郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまいーー。 1990年代の東京。「中産階級」の変わることのない日常。2023年にポリー・バートンによって英訳され、ニューヨークタイムズやアトランティック誌で書評されるなど話題となった。 感想 初期の町田康の作品(『くっすん大黒』や『夫婦茶碗』)に似ていると思った。句点が極端に少なく、文章のワンセンテンスが異様に長い。冒頭「南と東に大きなヴェランダがあって~」という文章…