お作を通して、ずいぶんいろいろ教えていただいた気がする。それでも私は、この作家にとって好ましい読者には、一度たりともなれなかった気がしている。 島田雅彦さんが『優しいサヨクのための嬉遊曲』で登場したとき、読みもせぬうちからその題名に圧倒されてしまった。アッ、新しい奴が出てきた、という感じがした。 国も時代もこのままでいいわけがない。ならばいかにすれば? 残念ながら勉強不足につき判らない。かといって日本社会党にも日本共産党にも同調できないとなれば、とりあえずは大学内を席捲していた新左翼だ。志は文学にあるから、政治運動にのめり込むわけにもゆかず、心情的には新左翼に共感しながらも行動をともにはせず、…