かわかみ・ひろみ 作家。1958年(昭和33年)東京都に生まれる。 お茶の水女子大学理学部卒。1980年、大学在学中に、山野浩一発行・山田和子編集のニュー・ウェーブSF雑誌「季刊NW-SF」15号に、「小川項」名義の短編「累累」でデビュー。次号16号で旧姓「山田弘美」名義の短編「双翅目」も発表、また、「女は自ら女を語る」という座談会にも参加。また同号から、編集者として参加。
日曜日の夕方は、なんとなく憂鬱な気分になる。 昨年転職してからは、ずいぶんとマシにはなったけれど、 昨夜のように、久々に知人たちと 他愛もない会話で深夜まで過ごした翌日は尚更だ。 ぼんやりとAmazonPrimeで映画を観て、 うたた寝をして目覚めると夕方になっていた。 憂鬱というより、漠然とした不安を感じる。 ぼくの死体をよろしくたのむ(新潮文庫) 作者:川上弘美 新潮社 Amazon 年末に実家へ帰った際に、バスの待ち時間に入った駅前の本屋さんで購入。 とりとめのない、緩やかな文体は少しずつ読むのにちょうど良い。 装丁のデザインも日常に溶け込んでいる。
川上弘美さんの「神様」は大好きな短編小説集で、もう何回も何回も読み返しているのですが、最近あらためて収録作品のひとつ「離さない」を読み返したら度肝を抜かれてしまいました。 くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである―四季おりおりに現れる、不思議な“生き物”たちとのふれあいと別れ。心がぽかぽかとあたたまり、なぜだか少し泣けてくる、うららでせつない九つの物語。デビュー作「神様」収録。ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞。内容(「BOOK」データベースより) 全体として、いわば「大人のためのおとぎ話」といった印象の作品が並ぶ本作品集なのですが、収録作品のなかで、この「離さない」だけ異色を放っているの…
百が生まれたばかりのころ、乳を吸われながら、近い、と思った。この子となんと近くにあるのだろう。腹の中に宿していたときよりも、なお近いように思った。可愛いだのいとおしいだの、そんなものではなかった。ただ、近かった。 関係は、近くない。遠い、というほどではないが。関係があっても、なくても、かならず少しだけ、へだっている。 川上弘美『真鶴』 人間の関係性へ感情は束ねられがちで、親子の関係なんて特に感情の積み重ねの連続で成り立っていると思うけど、親が子に対してただただ「近い」という即物的なスケッチの不思議。 感情をオミットすることでどこか冷たい印象が付与されがちだけど(ex: ミヒャエル・ハネケの被写…
某 (幻冬舎文庫) 作者:川上弘美 幻冬舎 Amazon 「某」 川上弘美(著) 幻冬舎 あらすじ 何者にも変われる生き物 まとめ こんな人にオススメ こんばんは、ちわぷ〜です! 何やら変わった設定の作品を知人に勧められ、興味が赴くままに読んでみました! とても面白く一気読みしてしまいましたので、ご紹介させていただきます! 「某」 川上弘美(著) 幻冬舎 あらすじ 突然病院に現れた謎の生き物。 一切の記憶が抜け落ちていて、まさに今、生まれたと言っても過言ではない。 限りなく人間に近いが、人間ではない。 性別はどちらにもなれて、姿形も変える事ができる。 病院に入院したその生物は、女子高生となり学…
Uターンラッシュで満員の新幹線の中で、ちらりと隣の席の人を見遣る。 この人にもこの人の人生があって、ただ新幹線の隣の席に座っただけの私も、もしかしたらこの人に何かしら影響を与えているのかもしれない。 その影響は、できればふわふわとした魔法のようなものであってほしい。 そんなことを思うのは、年始にあの小説を読んだからだろう。 川上弘美著『ぼくの死体をよろしくたのむ』。 タイトルの不穏な印象とは裏腹に、より身近で温かい、人と人の見えないつながりを描いた短編集だった。表題作の『ぼくの死体をよろしくたのむ』も、焦点は「ぼくの死」ではなく、その後の残された人同士のゆるい繋がりを描く。 この短編集を特徴づ…
どこから行っても遠い町 (新潮文庫) 作者:弘美, 川上 新潮社 Amazon 「どこから行っても遠い町」川上弘美(著) 新潮社 あらすじ 様々な愛の形を描いた短編集 まとめ こんな人にオススメ こんばんは、ちわぷ〜です! 今日はワールドカップ日本代表初戦ですね! しかも相手は強豪ドイツ! Jリーグ派なのであまり海外の選手には詳しくないのですが、そんな私でも知っている有名選手だらけのドイツにどんな戦いを挑むのか楽しみです☆ 特にサッカー関係無い話なんですけど、本日も小説をご紹介いたします笑 「どこから行っても遠い町」川上弘美(著) 新潮社 あらすじ ある商店街の魚屋さんとその周囲の人々を描いた…
今回は川上弘美さんの『ぼくの死体をよろしくたのむ』を紹介します。 めちゃくちゃパンチのあるタイトルじゃありません? どういうこと!? って気になりません? そして表紙の魚。 本当に、一体これはどんなお話なの? 好奇心が抑えられませんでした。これはもう、さっさと読むしかありません。 目次 あらすじ 感想 『鍵』 『大聖堂』 『ずっと雨が降っていたような気がしたけれど』 『二人でお茶を』 『銀座 午後二時 歌舞伎座あたり』 『なくしたものは』 『儀式』 『バタフライ・エフェクト』 『二百十日』 『お金は大切』 『ルル秋桜』 『憎い二人』 『ぼくの死体をよろしくたのむ』 『いいラクダを得る』 『土曜…
川上弘美さんの「センセイの鞄」(谷崎潤一郎賞受賞)作を読んだ感想を書きました。 この作品大好きなんです!! ※ネタバレになる可能性がありますのでご注意ください。 作品 タイトル : センセイの鞄 著 者 : 川上 弘美 発 行 : 新潮文庫 あらすじ ツキコが高校時代の国語教師”センセイ”と居酒屋で再会する。年齢の離れた2人が、想い合い、彩のある時を共に過ごす話。 感想 2人の再会から始まり、センセイとの静かな日々が丁寧にゆっくりと描かれていています。居酒屋で2人が並んで、食と酒を楽しんでいる情景が浮かびます。 けれど読んでいる最中、なぜか・・少しの不安が、ずっと付き纏っていました。 ツキコと…
豪華寝台列車「ななつ星」が老若男女の人生を運びます。短編7集。 七人の作家による5編の物語と2つの随想。 下記の記事をご覧ください。 お読みいただきありがとうございました。ランキング参加中読書
くそじじい。わたしは胸の中で言い、それから口に出して「くそじじい」と繰り返した。くそじじいはきっと元気に島を一周でもしているんだろう。センセイのことなんか忘れて宿の小さな露天風呂にでも入ろう。せっかく島に来たんだから。センセイがいようがいまいが、わたしは旅行を楽しむんだから。今までだってずっと一人だったんだから。一人で酒を飲み一人で酔っぱらい一人で愉しんできたんだから。(川上弘美『センセイの鞄』新潮文庫、2007) おはようございます。仕事のことなんか忘れて小さな物語にでも入り込もう。せっかくの休日なんだから。仕事が残っていようがいまいが、わたしは読書を愉しむんだから。今までだってずっとそうし…
「わたしの好きな季語」川上弘美著を、いつ手に入れたのか思い出せないのですが。本棚の隅に未読のモノとして積みあがっている中から引っ張り出して読んでいます。…というか眺めています。春の処の一番最後にこの「春愁」「しゅんしゅう・はるうれい」が出てきます。秋の物憂い思いは、より色っぽいカンジで「秋思」というのだそうで。春の場合はかなで「はるうれひ」がしっくりくる…と。花粉が飛ぶ季節ということで、たえず鼻水と闘う時期で。そして冬の間は忘れていた小さな虫が飛びかうのを思いしる時期で。自分としては「はるうれひ」は、愁う色つやとは正反対の、憂う季節です。 秋に球根で植えたチューリップが咲きました。桜と同じで、…
こんにちは。 川上弘美さん「晴れたり曇ったり」 晴れたり曇ったり (講談社文庫) 作者:川上弘美 講談社 Amazon エッセイ。 「晴れたり曇ったり」は気分というか浮き沈みの方の話だ。 私は、川上さんの短編小説が特に大好き。 いつもワクワクしたり、心をフワフワさせてくれる小説を読んで、なんてすごいんだろうかと思う。 だけど、川上さんにもスランプは定期的にくるようだ。 自分が普段交流がある人にもみんな晴れの時と曇りの時がある訳で、自分が曇りの時は特に人様の「晴れ」を眩しく思って落ち込んでしまう。 だけど、天気と一緒で晴れが良くて、曇りが悪い訳じゃない。 そのうち晴れるし、そのうち曇る。 年齢が…
TLで流行っていた企画。 100冊なんて絶対無理だろと思ってみたものの、やってみたら案外いけることが判明したのでやってみようと思いました。 ただ、収拾がつかなくなると困るので、いくつか私的レギュレーションを。 挙げるのはいわゆる「文字の本・文章」に限る(漫画・画集等は除外) 興味を持って読もうと思い立ってくれた人が困る可能性がある本(専門知識を要する本・Amazonで簡単には買えない本など)は避ける シリーズものを「〇〇シリーズ」として挙げることは極力避け、一冊あるいは一編の単位でピックアップする。 著者一人に対して挙げるのは、原則として一冊。ただし、選考基準が異なる場合などはその限りではない…
みなさまこんばんは 解氷されて目覚めるようなさわやかなまどろみはなく、主に花粉によって春の気配をひしひしと感じる今日この頃・・・ なアッシュちゃんです このブログの更新頻度からお察しの通り、 日記や読書記録も全然続かないのであらゆるメモなどの置き場が取っ散らかっているのですが、 突然気になってしまったので今回は古い日記帳アプリなどにぽつりぽつりと書いてあったすきな文の引用や感想文をまとめておくだけの回をします(本当に脈絡ないです) というのも実は、 エンタメ?追うようになってから情報の激流に流されっぱなしで、"じっくり何かに向き合う"という時間が全然取れなくて昨年は1年で3冊ほどしか本を読むこ…
レモン石鹼泡立てる (散文の時間) 作者:東 直子 共和国 Amazon 好きになった本は、ふと思い出しては読み返す。読み返すたびに、心に響く部分がまるで違うことがあり、驚いてしまう。共感ボタンを連打したくなるこの一節に続けて、なぜ読むたびに感じ方が変わるのか、答えは簡単、自分が変わったからだと東さんはいう。本の中身は変わらないのだからと。私は本に線を引いたり付箋をつけたりするのが苦手で、気に入った箇所はノートに書き写すことにしているのだけれど、この本に関しては読み始めてすぐ「これは無理だ」と悟った。ここもあそこもと書き出していたら、本をまるまる書き写すことになりかねない。これはもう、2冊買っ…
こんにちは。 年明けからの小説と漫画の読書記録です。話題のもの、本屋さんで偶然ビビっときたもの…総じてかなりヒットしました。充実している。それではさっそく語っていきましょう。 同士少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 お正月に帰省したときに実家にあった本を拝借。話題だったけど自分では買わないジャンルだと思っていたので、手に取れていい機会でした。 普通の女の子が家族、暮らしていた村を奪われ狙撃兵として訓練・実戦を重ねていく姿は逞しくて悲しい。あっけなく死んでいく敵と仲間たち、戦争中の女性の立場、正義…と凄まじい内容でも淡々とした文章ですらすら読めた。今現在の問題を考えるとソ連視点というのは感情移入できない…
コロナでマスク生活になった時に 「風の谷のナウシカ」を 思い浮かべた人は多いと思う。 腐海と共存するために マスクをつけないと 暮らしていけない生活。 まさか、こんな事になるとは……。 そして、 マスクは外してもよくなるけど、 その後どうなるかは不透明。 ちなみに 「風の谷のナウシカ」では 腐海の毒と共存してきた人間は 清浄な世界に耐えられなくなって しまっていた……。 風の谷のナウシカ 7 作者:宮崎 駿 徳間書店 Amazon 朝日新聞の夕刊で 「危機の時代に読み解く 風の谷のナウシカ」が掲載された。 俳優の杏さんと 軍事アナリストの小泉悠さんが 読み解く「風の谷のナウシカ」。 もともと朝…
夜 すごい春です このひと月でわたし、すきだなって気持ちを新しく四つもみつけたよ。わからない愛 これらをわからない愛と定義して、たよりなく遠い瞳で生きていこう なにかの観点で相性の良い人といるとき まるで世界がまるごと報われたようなおおきな気持ちに、毎回なる。でもバイバイした後は速やかにこころが冷えてまたおなじ 私たちは近いようで別の人、とか思うんだ。人は会うたび変わるし別れるたび変わる。望まない方へ進んでいったとしても、こんな人の性を責めずにいたい。自分のこともあんまり否定しないでいられるといいね 開けることのなかったコンドーム 効果の頼りない口臭スプレー すす汚れたリップクリーム、お揃いの…
『暮しの手帖 第83号』(2016年 8-9月号)122頁川上弘美さんの随筆より なになに? 「東京・目白にあった小さなおでん屋『たにし亭』は多くの人に親しまれ、惜しまれつつ閉店しました」 えっ、と驚いた。 これはもしかして、あの「たにし亭」のことなのだろうか? 文章は、こう続く。 「その女主人沢井ふささんの漬けるらっきょうのおいしさは定評があり、わざわざ分けてもらって帰るお客もいるほど。開店以来四十年している絶対失敗なしの方法をききました」 たぶん、まちがいない。 それでは、わたしは、わたしの幻の店のらっきょうを、山口瞳のエッセイを読んでから四十年以上たった今年、食べられるのだ!
一昨年、「そういや読み逃してる芥川賞受賞作っていっぱいあるな~」と思い、芥川賞受賞作を時代を遡って読んでみることとしました。一時、なぜかフィクションを読むハードルがやたらに高い時期があり、文学好きですとか言いながらぜんぜん読めてなかったんですが、いろいろ読むうちに「趣味は読書」だった頃を思い出しました。「一度読んだものももう一度読む」というルールを課したので(べつに誰に頼まれてるわけでもないが)、もう一度読み直したかった作品を読む機会にもなり、そうすると初読時には分からなんだ味わいを得られたり、話題になった当時のことを思い出したりするのもまた良しです。読んだ作品の感想をクローズドのSNSでダラ…
五時四十分起床。寒い朝。 九時、外出。中央線、山手線と乗り継いで浜松町へ。朝のラッシュアワーからは外れているので電車はさほど混雑していない。某イベント系案件のリハーサルに立ち会う。お弁当を出していただけたが、笠原さんの「賛否両論」のものだったのでびっくり。もちろん美味しかった。 View this post on Instagram A post shared by 五十畑裕詞 (@catkicker001) 戻ってからはあれこれと作業。少し余裕があったので眼科に行こうと思ったが、今日は手術の日で外来は断っている、と言われてしまった。 夕食は冷凍ピザで手軽に済ませた。 川上弘美「山羊は、いなか…
昨日に引き続き早めに起き、出掛ける事に。京王線の分倍河原駅で下車。予定より早く着いたので、最初の目的地、サントリー武蔵野工場まで歩く事にします。 ↑ 駅の前にある、新田義貞像 天気も景色も良く、散歩するにはかなりの好条件。途中、自動販売機でプチトマトを買ったり、のどかに歩いていたのですが、そこに大きな落とし穴が。 早めにサントリーの工場に着いたのはいいのですが、受付の入り口の真裏に着いてしまいます。「一般の方は正門にお回りください」と書いてあるのですが、正門がどこにあってどう回ったら着くのかが明記されていない上に、メールの案内もその辺については意外と不親切。 みんな駅からの送迎バスに乗る、とい…
3/01 川瀬七緒「四日間家族」KADOKAWA/ISBN: 9784041134504*1 3/01 古川真人「ギフトライフ」新潮社/ISBN: 9784103507437*2 3/01 小野寺S一貴「うしろのおしず 龍と姥神」扶桑社/ISBN: 9784594094133*3 3/01 阿川佐和子「母の味、だいたい伝授」新潮社/ISBN: 9784104655236*4 3/01 ベルンハルト・シュリンク「別れの色彩」新潮クレスト・ブックス/ISBN: 9784105901868*5 3/01 チョ・ナムジュ「私たちが記したもの」筑摩書房/ISBN: 9784480832191*6 3/0…
福岡伸一さんの対談集。 主に動的平衡をテーマにおはなしをします。 内田樹さん 川上弘美さん 朝吹真理子さん 養老孟司さん みなさんご自分の専門分野と動的平衡の関連を熟考します。 ことばにすることが大変なのでしょう。 なかなかイメージすることが困難な部分も多々ありました。 養老孟司さんと進化についてお話する部分があります。 進化って不思議ですよね。 例えば人間の爪。 固くもなく、柔らかくもなく。 お鍋の底にこびりついたご飯を取るにはこれ以上適切な物が無いくらいの物体です。 それから人間はなぜ今まで快適な温度領域を拡大できなかったのか。 -10℃くらいから40℃くらいまで快適に思えるように進化すれ…